
ライフガード・ステーションをモチーフにした四角いボディに、傷を気にせずタフに使える無塗装樹脂パーツを大胆に配置。さらに、広大な開口部を生むピラーレス観音開きドアや、上下分割式のテールゲート、水や泥汚れに強い防水インテリアなど、遊び心と実用性を高次元で融合させた、あらゆるアクティビティで使い倒せるタフなSUVだった。
●文:月刊自家用車編集部
エレメント最大の特長が、両側観音開きのサイドアクセスドア。すべてのドアとゲートをフルオープンすると、遠くまで見通せる圧倒的な開放感が得られた。
「ライフガード・ステーション」というコンセプトで、タフで機能的な「動く箱」を目指したクルマ
ホンダ・エレメントは、アメリカの若者を中心としたアクティブなライフスタイル層に向けて開発され、2002年に北米で、翌年の2003年に日本国内でも販売が開始されたクロスオーバーSUVだ。
開発から生産まですべてをアメリカのホンダ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・アメリカズとオハイオ州の工場が主導しており、まさにアメリカ生まれのホンダ車と言える。
このクルマのコンセプトは、「ライフガード・ステーション」であり、海や山でアクティブに活動する若者が、サーフボードやマウンテンバイクなどの遊び道具を無造作に放り込んで出かけられる、タフで機能的な「動く箱」を目指して設計されたアクティビティビークルだったのだ。
通常はFF状態で走行し、状況に応じて後輪にも適切な駆動力を配分。雪道などで高い走破性を発揮し、突然の路面変化にも対応するリアルタイム4WDを採用した。
圧倒的な開放感のセンターピラーレスの観音開きドアを採用
独創的なエクステリアデザインは、四角い箱のようなスクエアなボディに、あえて無塗装の樹脂製クラッディングパネルをフェンダーやバンパー周りに大胆に配置することで、傷や汚れを気にせず使えるギア感を強調している。
そして、エレメントを語る上で欠かせないのが「センターピラーレスの観音開きドア(サイドアクセスドア)」だ。前後のドアを両方開けると、側面には巨大な開口部が出現します。安全性を確保するためにリアドアの内部に頑丈なピラーが組み込まれているが、この大開口のおかげで、かさばるアウトドア用品の出し入れや、泥だらけのままの着替えなどが驚くほどスムーズに行えるように設計されている。
全体的にスクエアなシルエットで、室内空間の広さを外観からも連想させる無駄のない合理的なデザインとなっている。
ボクシーなボディの四隅を強調するように配置された、シンプルな縦型のテールランプユニットを採用。
前後のバンパーからフェンダー、さらにはルーフラインにかけて、無塗装の樹脂素材がぐるりと囲むように覆われており、飛び石やちょっとした小枝の擦れなどを気にせずガンガン走れるSUVらしさを強調している。
汚れたままの道具を気にせず積める、ワイパブルフロア&ルーフライニング
インテリアも徹底して実用性を追求。フロア全体に防水性と防汚性に優れが採用されており、泥のついた汚れた靴で乗り込んだり、濡れた機材から水が垂れたりしても、サッと水拭きするだけで簡単に掃除ができるのだ。もちろん、シートにも撥水加工が施されており、マリンスポーツやウィンタースポーツの相棒として一切の妥協がない室内となっている。さらに、後席は左右に跳ね上げて格納したり、シートをフルフラットにすれば車中泊のベッドにも早変わりする。
走行性能に関しては、北米仕様の2代目CR-Vのプラットフォームをベースにしながら、専用のチューニングが施されている。
パワーユニットは、2.4L直列4気筒のi-VTECエンジン(K24A型)を搭載し、低中速域からの力強いトルクを発揮する。また、駆動方式は路面状況に応じて後輪にも適切な駆動力を配分するリアルタイム4WDを採用しており、高速道路でのロングクルージングから、キャンプ場へと向かう未舗装路まで、シーンを選ばず安定した走りを実現する。また、四角いボディ形状と高めのアイポイントのおかげで運転席からの視界が非常に広く、大柄なボディサイズでありながらも車両感覚が掴みやすいという隠れた長所を持っている。
水平ラインを基調としたインパネデザイン。3つのメーターをそれぞれ独立させ、コーンシェイプの3次元レンズで構成されていた。
ミニバンブームの真っ只中、ニッチ過ぎたSUVは日本人には受け入れられなかった
しかし、日本市場では、全幅が1.8メートルを超える堂々としたサイズ感は、当時の日本の狭い道路事情ではやや持て余し気味とされ、2.4リッターという排気量も自動車税の観点から敬遠される要因となっていた。また、最大の魅力である観音開きドアも、日本の狭い駐車場では「フロントドアを開けないとリアドアが開けられない」という構造が不便だと受け取られていた。
当時の日本では多人数乗車ができるミニバンが全盛期であったため、ニッチなSUVは理解されづらく、結果として日本国内では2003年の発売からわずか2年半ほどで販売終了という短命に終わってしまったのだ。
DOHC i-VTECは「VTEC(可変バルブタイミング・リフト機構)」と「VTC(連続可変バルブタイミング・コントロール機構)」を融合した知能化ユニットであった。
全席を倒せばフルフラットとなる。また、カーゴルームは、リアシートを両サイドに跳ね上げれば、前輪を外すことなく2台のマウンテンバイクを収納できるほどの広さを生み出してくれる。
サイドアクセスドア、クラムシェル・テールゲートと、多彩なアクセスポイントがあるのも大きな魅力。センターピラーレス構造で高剛性を実現するために、部材の大断面化と各ジョイントの大型化を図っていた。
主要諸元:ホンダ エレメント(2003年)
| 全長×全幅×全高 | 4,300×1,815×1,790(㎜) |
| トレッド 前/後 | 1,575/1,580(㎜) |
| 最低地上高 | 175(㎜) |
| 車両重量 | 1,560kg |
| 乗車定員 | 5名 |
| エンジン型式 | ホンダ オブ アメリカK24A |
| エンジン種類 | 水冷直列4気筒DOHC |
| 総排気量 | 2,354(cc) |
| 使用燃料・タンク容量 | 無鉛レギュラーガソリン・60L |
| 最高出力 | 160ps/5,500rpm |
| 最大トルク | 22.2kg-m/4,500rpm |
| 燃料消費率 | 10.6km/L (10・15モード走行) |
| 最小回転半径 | 5.2m |
| サスペンション 前/後 | ストラット/ダブルウイッシュボーン |
| ブレーキ 前/後 | Vディスク/ドラム |
| タイヤ | 215/70R16 |
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(旧車FAN)
“産みの苦しみ”を乗り越え、大ヒット作となったパジェロ まったく新しいコンセプトの新型車が世に出るまでには、多くの関門がある。ときにはどれほど出来ばえがよくても、経営陣の理解が得られずに世に出ることな[…]
国産車出力の天井を定めた「ハイパワー主義」の金字塔 1989年の市場投入を果たした4代目フェアレディZ(Z32型)は、当時の日産自動車が全社を挙げて推進していた「901運動」の思想を如実に体現した1台[…]
マツダ初の本格的な乗用車「R360クーペ」 戦後の日本において、三輪トラックの分野で確固たる地位を築き、日本の復興を力強く支えていた東洋工業(現在のマツダ)が、自動車メーカーとしての本格的な地歩を固め[…]
2代目クラウンは、高級車たる不動の地位の礎を築き上げた記念碑的なモデルであった 日本の自動車史において、高級車というカテゴリーを確固たるものにし、現代に至るまで脈々と受け継がれる「クラウンならではの風[…]
元々、三菱重工業の一部門としてスタートした自動車製造 三菱自動車工業はホンダより若いというと、信じられない人もいるかもしれない。けれど事実だ。三菱といえば江戸時代末期に創業した海運業の九十九商会にルー[…]
人気記事ランキング(全体)
国産車出力の天井を定めた「ハイパワー主義」の金字塔 1989年の市場投入を果たした4代目フェアレディZ(Z32型)は、当時の日産自動車が全社を挙げて推進していた「901運動」の思想を如実に体現した1台[…]
モデル概要:16年ぶりのフルモデルチェンジでイメージ一新 4代目として16年ぶりにフルモデルチェンジを果たした新型「エルグランド」は、「走るファーストクラス」を標榜し、日産のフラッグシップミニバンとし[…]
「ライフガード・ステーション」というコンセプトで、タフで機能的な「動く箱」を目指したクルマ ホンダ・エレメントは、アメリカの若者を中心としたアクティブなライフスタイル層に向けて開発され、2002年に北[…]
マツダ初の本格的な乗用車「R360クーペ」 戦後の日本において、三輪トラックの分野で確固たる地位を築き、日本の復興を力強く支えていた東洋工業(現在のマツダ)が、自動車メーカーとしての本格的な地歩を固め[…]
お出かけが多くなる夏場こそ活用したい革新的なフロアマット 家族や友人と、山へキャンプ、海へバーベキューなど、楽しみなイベントが控えている夏。愛車のミニバンでみんなでワイワイガヤガヤと目的地へ向かう計画[…]
最新の投稿記事(全体)
日本バス協会への加盟と名古屋営業所の開設 電気自動車(EV)世界大手の日本法人で、商用車事業を手掛けるBYD JAPAN株式会社(本社:神奈川県横浜市、代表取締役社長:劉学亮)は2026年7月17日、[…]
モデル概要:最新電動技術を注入した、新世代のコンパクトSUV フルモデルチェンジを果たした新型キックスは、日産のコンパクトSUVとして大幅なブラッシュアップを遂げて登場。 力強く躍動的なエクステリアと[…]
“産みの苦しみ”を乗り越え、大ヒット作となったパジェロ まったく新しいコンセプトの新型車が世に出るまでには、多くの関門がある。ときにはどれほど出来ばえがよくても、経営陣の理解が得られずに世に出ることな[…]
国産車出力の天井を定めた「ハイパワー主義」の金字塔 1989年の市場投入を果たした4代目フェアレディZ(Z32型)は、当時の日産自動車が全社を挙げて推進していた「901運動」の思想を如実に体現した1台[…]
モデル概要:16年ぶりのフルモデルチェンジでイメージ一新 4代目として16年ぶりにフルモデルチェンジを果たした新型「エルグランド」は、「走るファーストクラス」を標榜し、日産のフラッグシップミニバンとし[…]
- 1
- 2



























