
開幕戦もてぎから2026シーズンのスーパー耐久を戦うスバルのニューマシン「SUBARU HIGH PERFORMANCE X Version II」が登場したが、富士24時間では更なる改良が加えられていた。その進化したマシンの活躍と、このレースで披露された、スバルの未来についての話を掘り下げてみよう。
●文/写真:松永和浩(月刊自家用車編集部)
インタークーラーなどを改良してパワーアップ!オイルは植物由来でCO2削減へ
6月6~7日に富士スピードウェイで開催された「ENEOS スーパー耐久シリーズ2026Empowered by BRIDGESTONE 第3戦 富士24時間レース」(富士24時間レース)において、スバルはラウンドテーブルと称した技術説明などを行う場で、2026年の参戦マシン「SUBARU HIGH PERFORMANCE X Version II」についての更なる改良を発表しました。
SUBARU HIGH PERFORMANCE X Version II
このモデルは、高密度インタークーラーや高強度ピストンを採用することで、最高出力375ps、最大トルク525Nmを達成しています。ただ、事前に実施したベンチでの耐久テストでヘッドガスケット破損が発生したため、今回の24時間では出力を抑え350ps仕様で出走するとのこと。
それでも出力向上となっているわけですが、その上燃費性能も向上させるという効率アップも果たしていることが注目すべきポイントになります。なお、これまで満タンで1時間10〜15分だったスティント時間が、1時間30分まで走ることができるようになるなど、燃費性能が改善されたそうです。
さらにAWD制御では、センターデフにスピン挙動検知や抑制制御を追加しましたが、ドライバーの意図的なオーバーステアは止めないという高度な制御を入れています。
リヤLSDも、ステアリング角・車輪速差を加味した制御に変更することで、駆動の最適化とドライバビリティの向上が図られているとも。
トランスミッションについては、3〜6速とトランスファーギヤの材料を変更し、そこにショットピーニング処理でギヤ強度を22%向上させています。
SUBARU HIGH PERFORMANCE X Version II
空力面ではリヤウイング裏面にディンプル状表面処理を施した「空力撥水ステッカー」を採用することで、CD値低減と最高速向上を狙ったそうです。ちなみに同仕様品がすでにSTIパーツとして販売中になっています。
モチュール製のサステナブルエンジンオイルを実証実験も行われています。これはベースオイルを植物由来としたもので、スバルとしては初めての採用とのこと。従来のオイルに比べてCO2排出量が約70も%削減するということで、大きな期待を寄せているそうです。
市販車へフィードバックされるS耐の技術
この場では、初代BRZのHyperPerformance Xからの3世代で蓄積された技術が、量産車へのフィードバックされた事例が紹介されました。
具体的には、BRZ Type-Sでアクセルレスポンス制御、BRZ STI Sport Type-RAでフラットシフト制御、ブリッピング制御としてすでに反映済みとなっています。
今後はオルタネーター制御、ステアリング剛性の向上、アクセルペダルダイレクト制御、非燃焼アンチラグなどを順次展開する予定になるそうです。
SUBARU HIGH PERFORMANCE X Version II
今後の展開にも期待大
なお、S耐マシンの開発や市販車へのフィードバックなどは、今年から新設されたスポーツ車両企画室が担います。
この部門が設立した背景のひとつとして、部署間の壁を取り払うことで、分業意識の弊害を打破したいという強い想いがあったとのこと。この改革をきっかけに、モータースポーツと量産開発を融合させることで、エンジニアが「やっちゃいけない」という歯止めをかけずに動ける環境づくりを目指していくそうです。
スバルが近日発表するという3車種のイメージも披露された。(写真提供:スバル)
同時に、今後展開を予定している3つの製品についてもレクチャーがありました。
まず1つ目は、WRXに6年ぶりとなるSTI専用の6速マニュアルトランスミッション「TY85」を復活させるとのこと。将来的なエンジン出力アップにも対応可能なトランスミッションとして位置づけしていきます。
2つ目は、BRZコンプリートカーとしてSTI Sport Type-RAをベースに「軽やかに走る」コンセプトの車両を企画中。
3つ目は、5ドアハッチバックWRXで、4ドアとはコンセプトが異なる、お手頃な価格の購入しやすいモデルを検討中という。こちらは”懐かしい”走り味を目指した試作車が完成済みとのこと。
ちなみにマニュアルトランスミッションの位置づけについては、大きなマーケットを期待しているわけではなく、「お客様がいる間は出し続ける」「技術・ノウハウを途絶えさせない」ことが主目的になるそうです。
TY85復活の際は、開発知見を保有している開発者は定年直前の1名のみだったという経緯が明かされるなど、少し赤裸々な説明でしたが、今後の技術の継承などについての本気度が伺える、熱のこもった内容でした。
ちなみに電子制御センターデフ(TCCD)については、制御基板とソフトウェアが生産中止になるなど、サプライヤーからの調達に問題が生じていたそうですが、すでにECUは調達の目途が立っており、制御基板とソフトウェアについては、アイサイトチームが新規開発を引き受けて開発が続いていくとのこと。近い将来、何らかの吉報が待たれます。
SUBARU HIGH PERFORMANCE X Version IIのレースはいかに
さて、2026年6月6日15時にスタートが切られた富士24時間レースでは、スバルはノートラブル、ノーペナルティで走り切ることに成功しました。
先述した様々に加えられた改良点も功を奏したことで、特筆した速さを見せています。
SUBARU HIGH PERFORMANCE X Version II
結果は、ノートラブルで24時間を走り切っての総合順位は16位。
フェアレディZやGRスープラ、メルセデスAMG GT4などが走るST-Zクラスに割って入るほどの周回数(721周)でチェッカーを受けています。
SUBARU HIGH PERFORMANCE X Version II
今回のレースで示された走りの性能が、やがて多くの市販車にフィードバックされていく。今年の24時間レースは、例年以上に多くの実りを実感できたレースでした。
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