
ホンダが公開した新型EV「スーパーワン」に対し、1980年代のHonda City Turbo IIを思わせる“小さなホットハッチ”として登場したこのモデルに、海外メディアやSNSで反響が広がっている。
注目されたのは、単なる“軽EVの海外版”ではない点だ。7速MT風の疑似変速やエンジンサウンド演出など、最近のEVでは珍しい「運転の楽しさ」を前面に押し出した一方で、海外ユーザーの関心は意外にも別の方向へ。それは、極端なまでにコンパクトなサイズ感と、都市で扱いやすそうな実用性だった。
●文:月刊自家用車編集部
海外メディアは「小さいのに成立している」と注目
英国のメディアは、スーパーワン(英国名:スーパーN)について、SUV人気で存在感を失いつつあった“小さなクルマ市場”の救世主候補として紹介している。
スーパーワンは、日本で発売された軽EV「N-ONE e:」をベースに開発されたモデルだ。軽規格の制約から離れ、ワイドフェンダーや専用サスペンション、スポーティな外装を採用し、全長約3.6mのコンパクトさを保ちながら存在感を高めている。
パワートレインはEVながら、BOOSTモードでは疑似7速シフトやエンジンサウンドを組み合わせる遊び心ある演出を採用。これは日本仕様と共通する特徴だ。
英国メディアの試乗記事では、この演出以上に「驚くほど広い室内」や「軽自動車由来のパッケージング」が高く評価されていた。
見た目以上に開放感があり、後席も十分使えること。さらに座面ごと跳ね上がる後席アレンジなど、日本の軽自動車で培われた思想が海外でも新鮮に映ったようだ。
写真はN-ONE e:の「Sporty Style(スポーティスタイル)」。レトロレーシーな雰囲気を楽しめるのがポイント。
海外展開はシンガポールと英国にとどまる
実際に発売段階まで進んでいるのは日本・シンガポール・英国の3カ国のみで、マレーシアをはじめとする他の東南アジア諸国はまだ「投入候補」の域を出ていないというのが現状だ。
興味深いのは、世界で最初に発売されたのが日本ではなくシンガポールだった点だ。
本国発売に先立ち、2026年1月のシンガポールモーターショーで発表・発売。日本円換算で約2,240万〜2,350万円(2026年7月時点の相場、車両保有権込み)と高額だが、これは車両そのものというより、シンガポール特有の登録コストの影響が大きい。フル装備の単一グレードのみが設定され、量販モデルというよりニッチ層向けの立ち位置となっている。
英国では「スーパーN」として今月発売予定で、6月下旬から予約受付を開始。価格は1万8995ポンド(2026年7月時点の相場で約406万円)からで、英国政府のEV購入補助金対象外ながら、競合のFiat 500eなどと比べると手頃な価格帯とされる。
全長3,599mm・全幅1,573mm(ミラー除く)というサイズは英国市場でも最小クラス。航続距離はWLTP複合モードで128マイル(約206km)、市街地モードでは199マイル(約320km)と案内されている。
なお、マレーシアでは試作車のテスト走行も確認されており、現地メディアでは投入期待が高まっているものの、正式発表はまだ行われていない。また、欧州本土(英国以外)や北米市場への展開についても、現時点では明らかになっていない。
英国で発売される新型コンパクトEV「スーパーN」
「こういうクルマを待っていた」海外ユーザーもサイズ感に集中
ホンダの公式YouTubeで公開されたスーパーワンの公式映像、海外記事のコメント欄を見ると、性能よりも“存在そのもの”への反応が目立った。
あるユーザーは、
「欧州向け左ハンドル仕様を出してほしい」
とコメント。
別のユーザーも、
「すごく良いデザイン。オーストリアでも販売してほしい」
「Boostカラーが最高」
と反応しており、デザインに対して好印象を抱くとともに、地域展開への期待が見られた。
興味深いのは、出力や加速性能への議論が意外と少ないことだ。海外では近年、EVの大型化・高価格化が進み、「都市向けの小型EV」が減少している。
そのため、「全部SUVになってしまった」「こういう小さくて遊び心があるクルマが欲しかった」という文脈で受け止めるユーザーが少なくないようだ。
英国ホンダのHPでは「爽快なホンダ スーパーNは、『小さな車に大きな楽しさ』をわずか18,995ポンドからお届けします」と紹介
「航続距離は足りるのか?」という現実的な声も
もちろん、歓迎一色というわけではない。
英国メディアでは、航続距離が約206km(市街地条件では約320km)と紹介されており、英国市場で受け入れられるか慎重に見る声もあった。
また、最高出力95psというスペックについても、
「コンセプトとしては面白い」
「もう少し性能が欲しい」
といった意見が見られている。
EVで疑似変速を再現する仕組みについても、
「面白い」
という反応がある一方、
「そこより航続距離や価格の方が重要では」
という現実的な見方も混在していた。
海外が注目したのは“速さ”ではなく“小ささ”
今回の反応を見る限り、海外ユーザーが注目したのはスポーツ性能そのものではなさそうだ。
海外が反応したポイントを整理すると、
・EVなのに疑似変速する“遊び心”
・全長約3.6mというコンパクトさ
・小さいのに広く感じる室内空間
・都市生活にフィットしそうな実用性
といった点だった。
こうした要素が組み合わさった結果、「久しぶりに新鮮なEV」と受け止められている印象がある。
スーパーワンは派手な高性能EVではない。それでも海外では、“もっと速く”ではなく、“もっと小さく、使いやすく”という価値観に応える1台として期待を集め始めている。
日本・シンガポール・英国での先行展開を皮切りに、この“小さなEV”がどこまで広がっていくのかにも注目が集まりそうだ。
スーパーN
ホンダ スーパーワン
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