「はっきり言ってオヤジグルマ」日本では失敗作…。地味な存在の初代モデルが、2代目でとんでもない大ヒット作に! そして現代に復活した[ホンダ・プレリュード]の変遷をたどる│月刊自家用車WEB - 厳選クルマ情報

「はっきり言ってオヤジグルマ」日本では失敗作…。地味な存在の初代モデルが、2代目でとんでもない大ヒット作に! そして現代に復活した[ホンダ・プレリュード]の変遷をたどる

「はっきり言ってオヤジグルマ」日本では失敗作…。地味な存在の初代モデルが、2代目でとんでもない大ヒット作に! そして現代に復活した[ホンダ・プレリュード]の変遷をたどる

1970年代に北米市場をターゲットとして誕生したホンダ・プレリュード。日本では「はっきり言ってオヤジグルマ」と冷遇され失敗作となりましたが、2代目で美しいローノーズスタイルを手に入れ、若者を熱狂させる大ヒット作へと変貌しました。現代への復活も話題を呼ぶスペシャリティクーペの歴代モデルの歩みをたどります。

●文:月刊自家用車編集部

徹底した顧客目線から生まれた、大人のためのパーソナルクーペ

ホンダという自動車メーカーに対し、F1をはじめとするモータースポーツの輝かしい戦歴や、高性能なスポーツカーを連想する方は多いでしょう。創業者である本田宗一郎が、2輪のマン島TTレースや4輪のF1参戦を通じて、後発メーカーだったホンダの技術力を世界へアピールしてきたのは間違いありません。

初代ホンダ・プレリュード XE(1978年)

しかし、その一方で、市販車の開発において宗一郎は常に「お客様」の視点を大切にしていました。一部の熱狂的なファンのためだけの過激なクルマ作りではなく、実際にそのクルマを購入し、日常で使う人々の姿を冷静に思い描いていたのです。 その根底には、自身がこだわり抜いた空冷エンジン搭載の「ホンダ1300」が市場で苦戦したという苦い経験がありました。技術的な理想を追求するだけではヒット作は生まれないという事実を痛感していたのです。だからこそ、誰でも扱いやすい「スーパーカブ」や、広さと走りを両立した軽自動車「N360」といった名車が生み出されました。

本田宗一郎が経営の第一線から退いた後も、この「市場のニーズを徹底的に探る」というホンダの哲学は受け継がれていきました。1978年にデビューした「初代ホンダ・プレリュード」も、まさにそうした緻密なマーケティングの産物だったのです。

初代ホンダ・プレリュード XE(1978年)

初代モデルの中でもラグジュアリーな位置づけだったのが「XE」です。スポーティグレードの「XR」「XT」がハニカム形状のフロントグリルを備えていたのに対し、「XE」と「E」は落ち着いたパラレルグリルを採用。さらに、車速に応じて重さが変わるパワーステアリングや、パワーウインドウといった当時の先進的な快適装備が標準で組み込まれていました。

初代のホンダ・プレリュードのエンジンルーム。全車に1.8LのCVCCエンジンを搭載。改良で90PS-95PS-97PSへとパワーアップ

【初代ホンダ・プレリュード XE(1978年式) 主要諸元】

  • 全長×全幅×全高: 4090mm×1635mm×1290mm
  • ホイールベース: 2320mm
  • 車両重量: 915kg
  • 乗車定員: 4名
  • エンジン(EK型): 直列4気筒SOHC 1750cc
  • 最高出力: 90PS/5300rpm
  • 最大トルク: 13.5kg・m/3000rpm
  • 最小回転半径: 5.0m
  • 60km/h定地走行燃料消費率: 21.0km/L
  • 燃料タンク容量: 50L
  • トランスミッション: 5速MT
  • サスペンション(前/後): マクファーソンストラット式独立懸架/マクファーソンストラット式独立懸架
  • タイヤ: 155SR13
  • 新車当時価格(東京地区): 140万円

日本市場では理解されなかった、初代の「大人っぽさ」

世界市場を視野に入れて開発された初代プレリュードですが、日本国内の販売実績に限って言えば、残念ながら失敗作と言わざるを得ませんでした。 当時の日本は厳しい排ガス規制などを乗り越え、自動車メーカー各社が性能競争に明け暮れていた時代です。「2ドアクーペ=若者のためのスポーツカー」というイメージが定着しており、ライバル車たちはこぞって派手なエアロパーツや刺激的なエンジンパワーをアピールしていました。

ところがホンダは、プレリュードをあえて若者向けの過激なスポーツカーには仕立てませんでした。開発陣が主なターゲットとして見据えていたのは、クルマ文化が成熟していた北米市場の大人たち、特に「働く女性」だったのです。通勤や日常の足として、おしゃれに乗りこなせる上質なクーペ。その狙い通り、北米では確かな人気を獲得しました。

初代プレリュードは、生産されていた狭山工場の最寄りインターチェンジの名称をかけて「川越ベンツ」と呼ばれていた。

しかし、当時の日本の若者にはその魅力が伝わりませんでした。「日産スカイライン」や「トヨタ・セリカ」「マツダ・サバンナRX-7」といった血気盛んなライバルたちと比較すると、プレリュードの洗練されたフォルムはあまりに落ち着きすぎており、はっきり言ってオヤジグルマに見えてしまったのです。 高級な本革シート(コノリーレザー)や電動サンルーフを備えた室内は快適そのものでしたが、スポーツカーらしい計器類が並ぶスパルタンな空間とは無縁でした。さらに、当時は「FF(前輪駆動)はスポーツ走行に不向き」という偏見が根強く、メディアのサーキットテストでタイムを競うような風潮にも合致しませんでした。足回りの完成度自体は高く評価されていたにもかかわらず、「川越ベンツ」という揶揄まじりのあだ名がつけられるほど、日本では地味な存在にとどまりました。

時代の寵児へ! 若者を熱狂させた2代目の圧倒的デザイン

初代の不満を完全に払拭し、日本国内で爆発的な大ヒットを記録したのが、1982年に登場した「2代目ホンダ・プレリュード」です。日本社会が急速に豊かになり、若者たちも上質なパーソナルクーペの価値を理解し始めたタイミングと見事に合致しました。

2代目を語る上で欠かせないのが、スポーツカーも顔負けの極端に低いボンネット(フロントフード)です。デザイン部門からの「先代よりもボンネットを100mm低くしたい」という難題に応えるため、エンジニアたちは世界初となる「ハイマウントアッパーアーム式ダブルウィッシュボーンサスペンション」を新開発しました。デザインを優先するための決断でしたが、結果としてロールの少ない俊敏なハンドリングという副産物をもたらしました。

大ヒットとなった、ホンダの2代目プレリュード。

さらに、日本車初となる4輪ABS(当時の呼称はALB)の採用や、運転席から助手席を倒せるリクライニングレバーの設置など、機能面でも充実。低く構えたダッシュボードがもたらす開放的なインテリアは、当時の「ヤンエグ(ヤング・エグゼクティブ)」層を中心に、最強の「デートカー」として熱烈に支持されました。ラヴェルの名曲「ボレロ」を起用した優雅なテレビCMの効果も絶大で、プレリュードはバブル前夜の日本を象徴するクルマとなったのです。

2代目ホンダ・プレリュード 1.8XX(1982年)

総生産台数60万台以上という金字塔を打ち立てた2代目モデル。低いボンネットとリトラクタブル・ヘッドライトの組み合わせは、当時の若者たちの心を鷲掴みにしました。

2代目ホンダ・プレリュード 1.8XX(1982年)

また、車内に目を向けると、あらかじめご自身のベストポジションをセットしておけば、別のドライバーが位置を変更しても自動的に元の位置へと戻る「記憶式チルトステアリング」を標準装備するなど、先進を技術を採用。ステアリング内には、クルーズコントロール用のスイッチを配置しています。また、XXでは4万円高のオプションとして、カラード液晶デジタルメーターを選択することも可能でした。

ホンダ・プレリュード1.8XXの車内。

シートは、ステアリング操作時に腕を動かしやすいよう配慮された、ローショルダータイプのフルバケットシートです。シートのスライド量は180mmを確保し、リクライニングはきめ細かな18段階の調整が可能でした。さらに、ヘッドレストには前後方向の調整機能も備わっています。

【2代目ホンダ・プレリュード 1.8XX(1982年式) 主要諸元】

  • 全長×全幅×全高: 4295mm×1690mm×1295mm
  • ホイールベース: 2450mm
  • 車両重量: 980kg
  • 乗車定員: 4名
  • エンジン(ES型): 直列4気筒SOHC 1829cc
  • 最高出力: 125PS/5800rpm
  • 最大トルク: 15.6kg・m/4000rpm
  • 最小回転半径: 5.1m
  • 10モード燃費: 12.0km/L
  • 燃料タンク容量: 60L
  • トランスミッション: 5速MT
  • サスペンション(前/後): ダブルウィッシュボーン式独立懸架/マクファーソンストラット式独立懸架
  • タイヤ: 185/70SR13
  • 新車当時価格(東京地区): 171万8000円

2代目ホンダ・プレリュード 2.0Si(1985年)

1985年には、新開発のB20A型DOHCエンジンを搭載した「2.0Si」がラインナップに追加されました。高出力エンジンを収めるためにボンネットがわずかに膨らみ、パワーバルジが設けられたのが外観上の特徴です。ブレーキやタイヤの強化、専用のギヤ比設定など、走りも本格的に磨き上げられました。

2代目ホンダ・プレリュード 2.0Si(1985年)

【2代目ホンダ・プレリュード 2.0Si(1985年式) 主要諸元】

  • 全長×全幅×全高: 4375mm×1690mm×1295mm
  • ホイールベース: 2450mm
  • 車両重量: 1040kg
  • 乗車定員: 4名
  • エンジン(B20A型): 直列4気筒DOHC 1958cc
  • 最高出力: 160PS/6300rpm
  • 最大トルク: 19.0kg・m/5000rpm
  • 最小回転半径: 5.1m
  • 10モード燃費: 13.0km/L
  • 燃料タンク容量: 60L
  • トランスミッション: 5速MT
  • サスペンション(前/後): ダブルウィッシュボーン式独立懸架/マクファーソンストラット式独立懸架
  • タイヤ: 195/60R14 85H
  • 新車当時価格(東京地区): 209万5000円

ライバルの猛追とバブル崩壊に翻弄された、3代目以降の軌跡

大成功を収めた2代目の勢いに乗り、1987年に誕生した「3代目ホンダ・プレリュード」は、先代の流麗なデザインをさらに洗練させたキープコンセプト路線を歩みました。ステアリング操作に応じて後輪が動く、世界初の「機械式4WS(4輪操舵)システム」を採用するなど、ホンダらしい独創的なメカニズムも話題を呼びました。

しかし、翌1988年に「日産シルビア(S13型)」という強大なライバルが登場します。FR(後輪駆動)レイアウトとターボエンジンを備え、美しいデザインまで兼ね備えたシルビアは、デートカーとしてだけでなく「走り屋」からも絶大な支持を獲得。上質さを売りとするプレリュードは徐々に苦戦を強いられるようになります。 その焦りからか、1991年にデビューした「4代目ホンダ・プレリュード」は、全幅を広げた3ナンバーサイズのボディに200PSを誇る2.2Lエンジンを搭載するなど、本格的なスポーツクーペへと大きくコンセプトを変えました。

ところが時代はバブル崩壊を迎え、自動車市場の価値観は激変していました。若者のクルマ離れや収入の減少に加え、「トヨタ・エスティマ」に代表されるミニバンブームが到来。実用性に乏しい2ドアクーペは、もはや市場から見放されつつあったのです。さらに北米市場でも、スポーツカーの事故多発による保険料の高騰などが逆風となっていました。

結果として4代目が販売面で苦戦したことを受け、1996年登場の「5代目ホンダ・プレリュード」は、再びかつてのような優雅なスペシャリティクーペへの原点回帰を図りました。しかし、「トヨタRAV4」や「ホンダCR-V」といった都市型SUVがデートカーやレジャーの主役となっており、クーペが入り込む隙間は残されていませんでした。 顧客のニーズを徹底的に分析して大ヒットを生み出したプレリュードでしたが、最後は市場そのものの劇的な変化によって、その歴史に一旦の幕を下ろすこととなったのです。

3代目ホンダ・プレリュード

2代目よりもさらにボンネット位置を下げ、フェラーリにも例えられたほどの低いプロポーションを実現。エンジンはすべて2.0Lに統一され、4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションを装備。S13型シルビアが登場するまでは、先代を凌ぐほどの爆発的なヒットを記録しました。

3代目ホンダ・プレリュード 2.0XX(1987年)

【3代目ホンダ・プレリュード 2.0XX(1987年式) 主要諸元】

  • 全長×全幅×全高: 4460mm×1695mm×1295mm
  • ホイールベース: 2565mm
  • 車両重量: 1110kg
  • 乗車定員: 4名
  • エンジン(B20A型): 直列4気筒SOHC 1958cc
  • 最高出力: 110PS/5800rpm
  • 最大トルク: 15.5kg・m/4000rpm
  • 最小回転半径: 4.8m(4WS車)
  • 10モード燃費: 12.0km/L
  • 燃料タンク容量: 60L
  • トランスミッション: 5速MT
  • サスペンション(前/後): ダブルウィッシュボーン式独立懸架/ダブルウィッシュボーン式独立懸架
  • タイヤ: 185/70R13 85S
  • 新車当時価格(東京地区): 182万円

3代目ホンダ・プレリュード 2.0Si TCV(1989年式)

【3代目ホンダ・プレリュード 2.0Si TCV(1989年式) 主要諸元】

  • 全長×全幅×全高: 4460mm×1695mm×1295mm
  • ホイールベース: 2565mm
  • 車両重量: 1140kg
  • 乗車定員: 4名
  • エンジン(B20A型): 直列4気筒DOHC 1958cc
  • 最高出力: 145PS/6000rpm
  • 最大トルク: 17.8kg・m/4500rpm
  • 最小回転半径: 4.8m(4WS車)
  • 10モード燃費: 12.0km/L
  • 燃料タンク容量: 60L
  • トランスミッション: 5速MT
  • サスペンション(前/後): ダブルウィッシュボーン式独立懸架/ダブルウィッシュボーン式独立懸架
  • タイヤ: 195/60R14 85H
  • 新車当時価格(東京地区): 220万7000円

4代目ホンダ・プレリュード 2.2Si VTEC(1991年)

全長を詰め、全幅を広げたワイド&ショートなボディへと変身。SOHCエンジンを廃止して排気量を2.2Lに拡大し、VTEC機構を備えたハイパワーエンジンを搭載するなど、本格的なスポーツ路線へシフトしました。バイザーのない斬新なメーターパネルや、音響にこだわったオーディオシステムも話題を集めました。

4代目プレリュード2.2Si VTEC (1991年)

【4代目ホンダ・プレリュード 2.2Si VTEC(1991年式) 主要諸元】

  • 全長×全幅×全高: 4440mm×1765mm×1290mm
  • ホイールベース: 2550mm
  • 車両重量: 1280kg (※一部仕様により異なる)
  • 乗車定員: 4名
  • エンジン(H22A型): 直列4気筒DOHC 2156cc
  • 最高出力: 200PS/6800rpm
  • 最大トルク: 22.3kg・m/5500rpm
  • 最小回転半径: 4.9m(4WS車)
  • 10モード燃費: 11.0km/L
  • 燃料タンク容量: 60L
  • トランスミッション: 5速MT
  • サスペンション(前/後): ダブルウィッシュボーン式独立懸架/ダブルウィッシュボーン式独立懸架
  • タイヤ: 205/55R15 87V
  • 新車当時価格(東京地区): 220万5000円

5代目ホンダ・プレリュード

スポーツカーの色合いが強かった先代から一転し、ボクシーで端正なクーペスタイルへと回帰。マニュアル感覚で変速できるシーケンシャルATや、コーナリング時の左右の駆動力配分を制御する「ATTS」などの新技術を投入しました。特に「Type S」はエンジンの高圧縮比化などが施され、自然吸気エンジンでありながら最高出力220PS(リッターあたり100PS超)を絞り出しました。

5代目ホンダ・プレリュード2.2SiR (1996年)

5代目ホンダ・プレリュード 2.2 Type S(1996年式)

【5代目ホンダ・プレリュード 2.2 Type S(1996年式) 主要諸元】

  • 全長×全幅×全高: 4520mm×1750mm×1315mm
  • ホイールベース: 2585mm
  • 車両重量: 1300kg
  • 乗車定員: 4名
  • エンジン(H22A型): 直列4気筒DOHC 2156cc
  • 最高出力: 220PS/7200rpm
  • 最大トルク: 22.5kg・m/6500rpm
  • 最小回転半径: 5.5m (※ATTS搭載車)
  • 10・15モード燃費: 12.4km/L
  • 燃料タンク容量: 60L
  • トランスミッション: 5速MT
  • サスペンション(前/後): ダブルウィッシュボーン式独立懸架/ダブルウィッシュボーン式独立懸架
  • タイヤ: 205/50R16 87V
  • 新車当時価格(東京地区): 265万3000円

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