
「クルマ」と聞けば、4〜5人が乗れるサイズを思い浮かべる人が多いはず。ところが、そんなクルマの常識とは少し違うモビリティが、いよいよ街へ送り出されようとしています。
それが、KGモーターズの一人乗り超小型EV「mibot(ミボット)」です。
KGモーターズは2026年9月1日、第三者割当増資によって総額4.7億円を調達したと発表しました。今回の資金は、生産能力の拡大をはじめ、初期生産における品質・生産性の向上、市場開拓、ソフトウェア開発などに活用される予定です。
つまり今回のニュースは、単なる資金調達ではありません。開発して終わりではなく、mibotを「実際にもっと作って、もっと街へ届ける」ための段階に入ったことがポイントです。
●文:月刊自家用車編集部 ●写真:KGモーターズ
KGモーターズ「mibot」はどんなクルマ?
mibotは、1人乗りの超小型EVとして開発されたモビリティです。
最大の特徴は、なんといっても「1人乗り」に割り切っていること。一般的な乗用車のように家族全員を乗せるのではなく、日常生活で発生する「自分1人の移動」に焦点を当てています。
ボディサイズは全長2485mm×全幅1140mm×全高1470mm。コンパクトな車体ながら、ドアやエアコンを備えているのも特徴です。
デザインはレトロさと未来感を組み合わせたスタイル。さらに、ソフトウェアによって機能や体験を進化させられるSDV(ソフトウェア定義車両)設計を採用しています。
「小さいクルマ」というだけではなく、従来のクルマとは異なる使い方を想定して開発されているわけです。
最高速度60km/h、航続距離100km。日常の移動を狙う
mibotの最高速度は60km/h。航続距離は100kmで、30km/h定地走行テスト値となっています。
充電規格はJ1772に対応し、AC100〜200Vで充電可能。公式スペックでは、100Vの場合の満充電時間は11.5時間、200Vでは3時間。エアコンは冷暖房に対応し、シートヒーターも設定されています。
mibot高速道路を使った長距離移動などを主目的としたクルマではなく、日常の近距離移動をコンパクトにするための存在だということがわかるでしょう。
通勤、買い物、駅までの移動など、「クルマは必要だけれど、実際にはほとんど1人でしか乗らない」という場面との相性が気になります。
もちろん、家族で出かけるときや荷物をたくさん積むときには、一般的な乗用車のほうが適しています。一方で、普段の移動だけを考えれば、「本当に5人乗りのクルマが必要なのか?」という問いが生まれます。
今回の4.7億円は「mibotをもっと作る」ため
今回の資金調達で集めた4.7億円は、生産能力の拡大に向けた金型を中心とする投資に加え、初期生産における品質・生産性の向上、実証・初期導入を通じた市場開拓、OTAや遠隔診断などのソフトウェア機能の継続開発に使われます。
KGモーターズは前回の資金調達を受け、すでに金型を中心とした生産投資に着手。今回はそれに続く工程を担う資金調達と位置づけています。これにより、同社のエクイティによる累計調達額は22.35億円となりました。
現在は初期生産を開始しており、自治体や企業との実証・初期導入も進めているとのこと。今後は生産規模を段階的に拡大し、予約しているユーザーを含め、より多くの人にmibotを届けることを目指します。
広島県東広島市に「mibot」の量産拠点「Mibot Core Factory」がある。
なぜ「1人乗り」が街を変える可能性がある?
mibotを考えるうえで興味深いのが、「クルマを小さくする」という発想です。
現在の乗用車は、複数人が乗れることや荷物を載せられることなど、多くの用途に対応できるよう設計されています。そのぶん、1人で近所へ移動するだけの場合には、車体が大きく感じられるケースもあります。
そこで、最初から「1人で移動するためのクルマ」にする。mibotは、そんな割り切った発想を形にしたモビリティです。しかも、単なる簡易的な乗り物ではなく、ドアやエアコンを備え、ソフトウェアによる機能拡張も想定されています。
もしこうした1人乗りの小型モビリティが普及すれば、「クルマを所有する」という考え方だけでなく、通勤や買い物など日常の移動手段そのものにも変化が生まれる可能性があります。実際にKGモーターズは、地方のセカンドカー需要や法人向け業務用途、地域の移動課題なども視野に入れています。
mibotの基本スペック
| 乗車定員 | 1名 |
|---|---|
| 全長 | 2485mm |
| 全幅 | 1140mm |
| 全高 | 1470mm |
| 最高速度 | 60km/h |
| 航続距離 | 100km(30km/h定地走行テスト値) |
| 充電規格 | J1772 |
| 充電電圧 | AC100〜200V |
なお、価格について今回の発表では具体的な金額は示されていません。また、公式サイト掲載の仕様は変更される可能性があります。
カラーバリエーションは5色「Keshizumi」
「小さいクルマ」が当たり前になる日は来る?
今回の4.7億円調達で注目したいのは、mibotそのものだけではありません。
1人乗りという大胆なサイズと用途のクルマを、本当に量産して市場へ届けられるのか。その挑戦が、開発段階から生産・社会実装のフェーズへ進んだことに大きな意味があります。
大きなクルマですべての移動をカバーするのではなく、「1人の近距離移動なら、もっと小さなクルマでいい」という選択肢が広がるのか。
mibotが街を変えるかどうかは、これから実際にどれだけ普及するかにかかっています。
一人乗りの小さなEVが、街の風景の一部になる――。今回の資金調達は、そんな未来に向けた一歩と言えそうです。
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