
日本の食を支える大切な産業が農業だ。暑い日も雨の日も手を抜くことができず、その過酷さゆえに従来は敬遠されがちだったが、多岐にわたる農作業を人に代わって行う農業機械の発達により、今あらためて注目が集まっている。本記事では、日本の社会を支える“はたらくくるま”のうち、2025年に創立100年を迎えた総合農機メーカー・井関農機の最新鋭ロボット田植え機を紹介する。
●文/写真:鈴木ケンイチ(オートメカニック編集部) ●外部リンク:井関農機
過酷で難度の高い田植え作業を“はたらくクルマ”で克服
足場の悪い田の中で中腰になって行う田植え作業は重労働だ。また、苗を正確にまっすぐに均等に植えることも必須となる。そうした困難な作業を人の代わりに行う“はたらくくるま”が田植機だ。
日本においては、1965年に手押し式、1967年に動力式歩行型の田植機が実用化。1960年代後半になって、ようやく本格的な普及がスタートしたのだ。
その後、ヰセキによって1986年にロータリー式植え付け機構が完成する。これは従来のクランク式が植え付け機構1つであったのに対して、植え付け機構を2つに増やしたもの。植え付けの速度だけでなく精度も飛躍的に高めることができた。
そして近年は省力化を目的に、田植機の自動化が進んでいる。実のところ、田んぼの中で田植機ををまっすぐ走らせるのも技量が必要だ。その難しい部分を自動化しようというのが、近年の田植機の進化のトレンドとなる。
自動化にはGNSS(全球測位衛星システム)が使われており、運転手が乗車した状態で直進や旋回をアシストするタイプもあれば、運転手を必要とせず、人による外部からの監視のもとに自動で作業するタイプなどが用意されている。
ロボット田植機「さなえ PRJ8 DREAMPILOT」:自動で走って繊細な手の動きを再現!
使用する人が監視する必要こそあるが、なんとリモコン操作で田植え作業を行えるという先進的な田植え機がすでに登場している。初心者でも熟練者並みの精度で作業でき、短い期間に集中する田植え時期にも対応できるのが大きな魅力。労働力の確保が難しいご時世だけに、プロ農家にとっては大きな魅力だ。
【ヰセキ さなえ PRJ8 DREAMPILOT】田植え作業を自動化する注目のロボット農機だ。
ロータリー式の田植え機構。1つの機構に2つの植え付けの爪が備わっていて、2つの爪が回転しながら植え付けを行う。
棚の苗を上から入れる苗のせ台。下にある植え付け部から苗が植え付けされていく。後ろのボックスは除草剤入れ。
車体の上にある白い台は、植え付けを行う苗を乗せる棚。車体の左右に複数段が設置されている。
GNSS(全球測位衛星システム)やリモコンなどからの電波を受信するセンサー類。自動での田植え作業を行う上で重要な部品だ。
座席下に配置される1.1Lのディーゼルエンジン。前後輪を駆動するAWD方式だ。
有人監視型の場合、①を人が操作してティーチングし、②と③を自動で田植えを行う。最後に有人操作で④の仕上げを実施する。
植え付けの爪が苗を挟んで植え付ける。植え付けの瞬間に速く動くことで、しっかりと植え付けることができる。
【取材協力:井関農機株式会社】1926年(大正15年)創立の老舗の総合農機メーカーが、「ヰセキ」ブランドの井関農機だ。全自動籾すり機からスタートし、自脱型コンバイン(1966年)/ロータリー植込杆/乗用田植機など、数多くの画期的な農業機械を世に送り出している。現在は、日本向けの田植機/コンバイン/トラクターだけでなく、欧州/北米/中国を含んだアジア地域など世界中で、トラクター/田植機/乗用芝刈機などを販売している。
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