[はたらくくるま] 日本の農環境にマッチした“コンバイン”は、稲や麦の穂先のみを脱穀する繊細仕様〈ヰセキ コンバインシリーズ〉

はたらくくるま|ヰセキコンバイン JAPAN HJ6130

日本の食を支える大切な産業が農業だ。暑い日も雨の日も手を抜くことができず、その過酷さゆえに従来は敬遠されがちだったが、多岐にわたる農作業を人に代わって行う農業機械の発達により、今あらためて注目が集まっている。本記事では、日本の社会を支える“はたらくくるま”のうち、2025年に創立100年を迎えた総合農機メーカー・井関農機の最新鋭コンバインを紹介する。

●文/写真:鈴木ケンイチ(オートメカニック編集部) ●外部リンク:井関農機

日本のコンバインは穂先のみを脱穀する

日本における主食となる米。その収穫において大活躍する“はたらくくるま”が「コンバイン」だ。稲や麦などの穀物を“刈り取り”して“脱穀”、そして“選別”までを1台でこなす。“統合(コンバイン)”という名称通りの役割を果たしている(正式名称は「コンバインハーベスタ」)。

現在、日本で普及しているタイプは“自脱型”と呼ばれるもので、稲や麦の穂先だけを脱穀し、籾とは別に藁を残せるのも特徴だ。欧米で先に普及したコンバインは、穀物をまるごと脱穀する方式のため大きな力が必要となり、大型エンジンが搭載されているものが大半。そのため、日本の狭い水田には大きすぎ、重すぎ、さらには収穫ロスも多く不向きだった。

そういった諸問題を考慮し、日本においては1962年に農林省が自脱型コンバインの試作機を発表。その後、日本メーカーから多くの自脱型コンバインが登場して、本格的な普及が進んでいった。

日本の市場では、4~7条刈りのコンバインが中心で、8条以上は普通型コンバインが使われる。ヰセキのコンバインは、高精度/高効率/高耐久を特徴としており、2条刈りから7条刈りまでの自脱型をラインナップする。

ヰセキコンバイン JAPAN HJ6130-Z[6条刈り]:日本の環境/仕様にマッチした機能充実の主力

【ヰセキコンバインHJ6130[6条刈り]】●寸法:全長4870×全幅2315×全高2680mm ●車両重量:5160kg ●エンジン:水冷直列4気筒ディーゼルインタークーラーターボ ●総排気量:3620㏄ ●出力:95.6kW(130PS) ●走行部:油圧モーター ●変速段数:前後進無段階/副変速2段 ●移動時最高速度:3.2m/s(時速11.52km/h)

車体側面のカバーを外したところ。稲穂を運ぶフィードチェーンの奥に脱穀のこぎ胴が見える。

6列の稲を刈り取る6条刈りの刈取装置。倒れた稲でも引き起こして刈り取ることができる。

ディーゼルエンジンで稼働した油圧モーターで駆動するクローラ。前傾後傾/左右高さ違いなどの姿勢制御も可能。

車体の進行方向の右側にあるグレンタンク。刈取/脱穀/選別した籾を収納する。排出はオーガを経由して行う。

収穫した籾をトラックなどに送り出すオーガ。筒内部がスクリュー状になっており、最長5.2mまで伸ばすことができる。

  1. キャビン:運転席
  2. 刈取装置:稲を引き起こしてカット。刈り取った稲を脱穀装置まで運ぶ。刈取りできる稲の列に合わせて、6条刈りや7条刈りのモデルがある
  3. フィードチェーン:刈取装置から送られてきた稲を脱穀装置に運ぶ
  4. クローラ:ディーゼル・エンジンで油圧ポンプを稼働し、その油圧を使うモーターで駆動する。前下がり/後ろ下がり/左右の高さを変えるなど、姿勢を変えることができる
  5. 排ワラ処理装置:脱穀した後のワラを、刻んで後方に飛ばしたり、まとめて束にするなどして処理する
  6. 脱穀装置:刈り取った稲から穀粒を取り出す
  7. 排出オーガ:脱穀した穀粒を、ためたグレンタンクから排出する。国内最長の5.2mまで伸ばすことができる
  1. 主変速レバー:コンバインの前進/停止/後進の切り替えと車速の調整を行う。前に動かすと前進、後ろに動かすと後進。レバーの操作量で速度が変わる
  2. 副変速レバー:走行と作業の速度を切り替える
  3. 刈脱レバー:“脱穀”にすると脱穀部が回り、“刈取/脱穀”にすると、脱穀部と刈取部とフィードチェーンが回る
  4. パワーステアリングレバー:コンバインの進行方向を変え、刈取部を上下させる
  5. 刈取かき込みペダル:停車状態で、刈取部が回り、かき込み作業ができる
  6. フットレスト:運転中に足を置く場所
  7. 駐車ブレーキペダル:停車中のクルマを動かなくする
  8. スイッチパネル:走行速度や車体姿勢制御など刈取作業に使用する様々な自動機能を任意に設定する

脱穀装置「ツインエイトスレッシャー」の仕組み

  1. 刈り取られた稲は、穂先を運転席側に向けて、大径ロングこぎ胴の下を通過。大径ロングこぎ胴のこぎ歯によって穂先の籾が外れて、下の揺動棚へ落ちる
  2. 揺動棚の上で揺られながら移動し、唐箕(とうみ)ファンの風で実の入っていない軽いクズ籾などが飛ばされる
  3. 上下2段になった揺動棚にて籾を選別。選ばれた籾は下に落ちる
  4. 選別されて落ちた籾は、一番ラセンを経由して上に送られ、保存用のグレンタンクへ運ばれる
  5. 最初の大径ロングこぎ胴で処理されなかった籾は、わらクズなどとともにこぎ胴の回転によって後方へ運ばれて、排塵処理胴へ送られる
  6. 排塵処理胴にて、籾とわらクズなどを分離する
  7. 分離した籾は下に落ちる
  8. 奥に運搬
  9. 二番ラセンに落ちた籾は、二番処理胴へ運ばれる
  10. 二番処理胴で分離された籾は、下にある揺動棚に落ちて、②と混ざって再選別される

【取材協力:井関農機株式会社】1926年(大正15年)創立の老舗の総合農機メーカーが、「ヰセキ」ブランドの井関農機だ。全自動籾すり機からスタートし、自脱型コンバイン(1966年)/ロータリー植込杆/乗用田植機など、数多くの画期的な農業機械を世に送り出している。現在は、日本向けの田植機/コンバイン/トラクターだけでなく、欧州/北米/中国を含んだアジア地域など世界中で、トラクター/田植機/乗用芝刈機などを販売している。

取材でお邪魔したのは、茨城県茨城県にある「つくばみらい事業所」。社内研修などが行われる拠点だ。

つくばみらい事業所には、ポルシェと技術提携で生まれたトラクターなどが展示されている。

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