なぜ「ビッグマイナーチェンジ」という言葉が生まれた?

●文:[クリエイターチャンネル] Peacock Blue K.K.
さまざまな違いがある「クルマの改良」
クルマに対して定期的に行なわれる改良にはいくつかの種類があります。
こうした改良には、内外装のデザインに加えて、プラットフォームやパワートレインなども刷新される「フルモデルチェンジ」に対して、内外装の変更やグレード体系の変更がメインとなる「マイナーチェンジ」、そして小規模な改良にとどまる「年次改良」の3段階に分類することができます。
「フルモデルチェンジ」はおおむね5〜6年周期、「マイナーチェンジ」はおおむね2〜3年周期、そして「年次改良」はその名のとおり毎年行なわれるのが一般的です。
ただ、これらの呼び方の違いは、変更の度合いによって決まるわけではありません。
たとえば、「フルモデルチェンジ」という呼び方を用いる場合、国土交通省に届け出が行なわれる型式番号が変更されることが条件となります。一方、「マイナーチェンジ」や「年次改良」では、原則として型式番号の変更はともないません。
つまり、理論上は、外見の変化が一切なくても型式番号が変更していれば「フルモデルチェンジ」となり、反対に外見が大きく変わっていても型式番号が変更していなければ「フルモデルチェンジ」とは呼べないということになります。
近年見かける「ビッグマイナーチェンジ」、その意味は?
一方、近年では「ビッグマイナーチェンジ」という言葉を見かける機会も増えています。
「ビッグマイナーチェンジ」は、型式番号の変更をともなわない改良ではあるものの、従来の「マイナーチェンジ」よりも大幅な変更が施されたもの、言い換えれば「マイナーチェンジ」以上「フルモデルチェンジ」以下の改良ということになります。
注意しなければならないのは、「ビッグマイナーチェンジ」と「マイナーチェンジ」の間には明確な線引きができないという点です。つまり、変更箇所や変更の度合いが基準ではなく、メーカーやメディア、あるいはユーザーが「ビッグマイナーチェンジ」と呼ぶかどうかが基準であるということです。
「ビッグマイナーチェンジ」が施されたモデルの具体的な例としては、レクサス・ISや三菱・デリカ D:5などが挙げられます。
2020年11月に「ビッグマイナーチェンジ」が行なわれたISは、内外装のデザインはもちろん、ボディや足回りなどに大幅な改良が施されており、感覚的には一般的な「フルモデルチェンジ」と同じほどの変化をしています。
デリカ D:5は2019年2月、IS同様に大幅な改良が施されています。
ただ、いずれも型式番号自体は以前から変更されていないため、いわゆる「フルモデルチェンジ」ではない点がポイントです。
「ビッグマイナーチェンジ」が生まれた背景には「電動化」が?
「ビッグマイナーチェンジ」が行なわれるモデルには、前回の「フルモデルチェンジ」から長い年月が経過しているという共通点があります。
上で挙げたモデルの場合、ISは2013年、デリカ D:5は2007年が最後の「フルモデルチェンジ」となっています。5〜6年程度で「フルモデルチェンジ」が行なわれることが多い国産車としては、かなりの長寿モデルであることがわかります。
これらのモデルが「フルモデルチェンジ」を行なわない根本的な原因のひとつには、パワートレーンやプラットフォームの刷新をともなう「フルモデルチェンジ」は、それらの開発に多額のコストと時間を要するという点があります。
現在の自動車業界は「電動化」という大きな潮流があります。その最たるものであるBEVは、パワートレインやプラットフォームの刷新が必要不可欠ですが、「電動化」に関する各国の方針は不透明な部分も多く、様子見をしているメーカーも多いのが現状です。
先の見えないなかで「フルモデルチェンジ」を行なうことリスクは大きいことから、一部のモデルでは「マイナーチェンジ」で繰り返すことで急場をしのぐ必要が生じてきました。
一方、一般的な「マイナーチェンジ」ではユーザーのニーズを満たしづらく、ライバルに対する競争力も低下してしまうため、より大幅な改良を施すことで対応するモデルが登場しました。そうしたモデルに対し従来の「マイナーチェンジ」と区別するために「ビッグマイナーチェンジ」が生まれたと考えられます。
「ビッグマイナーチェンジ」のモデルは、型式番号の変更をともなっていないとはいえ、大幅な改良が施されていることは事実です。そういった意味では「フルモデルチェンジ」ではないからと言って見劣りすることはありません。
ただし、「ビッグマイナーチェンジ」と「マイナーチェンジ」の間には明確な区別がないため、クルマ選びをする際には、必要以上にこれらの言葉を意識しすぎないほうがよさそうです。

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