
●文:[クリエイターチャンネル] Peacock Blue K.K.
建物や樹木など視界を遮るものはないはずなのに、発生するクルマ同士の衝突事故。これは「十勝型事故」と呼ばれるもので、実は全国各地で発生しています。
見通しがいいにもかかわらず発生するこの事故は、いったいなにが原因なのでしょうか。
原因は目の錯覚? 十勝型事故とは
十勝型事故とは、交差点においてドライバーが相手の車両を認識できず、止まっているように見えたり、接近しているのに気付かなかったりすることで発生する事故です。
この事故の名称は、北海道の十勝地方で多発したことが由来とされており、背景がほとんど変わらない平地などで発生しやすいことから「田園型事故」とも呼ばれています。
また、英語で衝突・激突を意味するコリジョン(collision)から、「コリジョンコース現象」の名称で知られていることも多いようです。
ちなみに、コリジョンコース現象による衝突事故は飛行機/ヘリコプターなどの航空機でも発生しています。
クルマの十勝型事故は、田畑が広がるような見通しのいい交差点で特に発生しやすく、JAFによるとこの現象は「錯覚が引き起こす事故原因のひとつ」とのこと。
そもそも人間の視野は中心部である中心視野と、周囲を捉える周辺視野に大きく分けられます。
運転時、ドライバーは中心視野を利用して道路の直前の状況や遠くの標識を読み取りますが、速度の早い車両/遠くから近づいてくる車両は周辺視野によって捉えます。しかし、周辺視野は動きを捉えるには適していますが、速度や距離を正確に見極めるのは困難です。
このため見通しのいい交差点や道路では、相手の車両が高速で接近しているにもかかわらず、同じ速度で同時に走行してくると遠くにあると誤認識してしまいます。
そして、車両の接近に気づかないまま交差点に進入してしまうことで、十勝型事故が発生するというわけです。
見通しがよいからといって油断していると、対向車との距離感を見誤って事故につながってしまうことも少なくない
過去の事例では、2022年10月に熊本県嘉島町の交差点で軽自動車とオートバイが衝突し、オートバイに乗っていた40代の男性が死亡する事故が発生しています。
事故の現場は信号機や一時停止の標識がない交差点で、視界を遮るものは電柱しかないような道とのこと。
見通しがよく、交通量も少ない道ながらこのような事故が発生してしまったのは、十勝型事故が原因だと考えられています。
同様の事故は全国各地で発生しているため、このような道路を走っているときでも油断はできません。
十勝型事故を未然に防ぐためには、運転時の意識と行動を改善することが重要です。
運転中、目線を動かすだけでなく頭も積極的に動かし、物体やほかの車両を中心視野で確実に認識しましょう。
またフロントピラーによって生じる死角も、見落としの原因になり得ます。
フロントピラーが死角になり、車両や歩行者が見えづらいことも。周囲を十分に確認し、安全運転を心がけたい
相手のクルマが自分と同じ速度/角度で走行している場合、フロントピラーにちょうど隠れてしまい、交差点に進入するまで存在に気づけない可能性があります。
これを防ぐためには、たとえ信号機/一時停止の看板がなかったとしても交差点が近づいたら十分に減速し、周囲にほかの車両がないか目視で確認することが大切です。
また十勝型事故が発生しやすい交差点には、「交差点あり」の道路標識や「交差点注意」の道路標示があるので、それらを見逃さないように注視することもポイントです。
見通しがいい道だからと油断せずに、周囲の安全確認を怠らないことを心がけましょう。
このように、十勝型事故は見通しがよい道路や交差点で発生しやすい現象であり、ドライバーの速度や距離の誤認識が主な原因だと考えられています。
この問題に対処するためには、目線だけでなく顔の向きも動かして、中心視野でほかの車両を捉えることが重要です。
また交差点に近づいたら十分に減速し、左右の安全を確認してから進みましょう。安全な運転習慣を身につけ、常に周囲の状況に注意を払うことで、事故のリスクを大幅に減少させることができます。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(トリビア)
世界初のガソリンエンジン車の駆動系 最初の自動車の駆動方式はミッドシップだった 最初の自動車は前輪駆動だった。1769年、蒸気で走る世界初の3輪自動車が現れたが、前1輪を駆動するFF車だった。蒸気機関[…]
1900年初頭、石油ランプからアセチレンランプへ進化 ガソリンエンジンを搭載した自動車が実用化された初期の時代は石油ランプが用いられていた。1900年代に入ると炭化カルシウムと水を反応させて、発生する[…]
電子制御サスペンションは、3つの制御方式に大きく分類される サスペンションに電子制御を持ち込み、走行状態、路面の状況に合わせた最適な乗り心地やアジリティ、スタビリティが得られるものも一部のクルマに採用[…]
リアサスは、固定式リーフスプリングからコイルスプリングへ進化していった 長い間、リアの車軸は固定式で、それをリーフスプリングで支えていた。コイルスプリングが実用化されると、一部の高級車でそれを使うもの[…]
困ったときのお助けサービス。知っておくと、いざというときに安心 サービスエリアやパーキングエリアの片隅に置かれた、コンパクトな機器。ほとんどの人が、気にもとめずに素通りするが、必要な人にとっては、実は[…]
人気記事ランキング(全体)
全方位型のツインタイプの小型ファン 先日、ヘッドレストに装着するタイプの扇風機を愛車に導入したのだが、ファンとしてはオーソドックスな丸型タイプの扇風機も使う機会があったので、便利そうな2種を紹介してい[…]
前席は快適でも、後席は意外と暑くて不快な場合も… まだまだ強い日差しが照りつけるこの季節、車内の冷房の稼働は必須と言える。クルマに乗り込んで、涼しい風に当たって「はぁ〜涼しい…」と、ひと息ついていると[…]
2人旅に特化したゆとりある空間 TR540S Joinの魅力は、まず「2人旅に特化」と割り切った設計にある。就寝人数を2名(乗車人数は5名)に絞ったことで、車内レイアウトに余裕を生み出し、広々としたダ[…]
普段はコンパクトに収納、車に常備しておくのもアリ! 乗り物に関するグッズを多数展開するブランド「CAMSOP(キャムショップ)」が、人気のジムニーをモチーフにした便利なアイテムをリリースしたので紹介し[…]
乗用ミニバンの優れた居住性と走行性に車中泊のための快適機能をプラス メティオのラクネルシリーズはバンコンから軽キャンパーまで様々なタイプの人気モデルがそろうが、今回紹介するラクネル ステイ•スイートは[…]
最新の投稿記事(全体)
スズキのBEV世界戦略車が国内導入 新型eビターラは、2024年11月にイタリア・ミラノで初公開された、スズキのBEV世界戦略車第一弾となるモデル。 「Emotional Versatile Crui[…]
剛性の積み重ねが生む一体感 2024年に実施されたゲームチェンジャーとまで言われた20式から24式への進化。その革新的な変化と比べると、24式から25式への進化は「ブラッシュアップ」と表現するのが妥当[…]
コンパクトに収まるベース仕様 RS1+のベースとなるのは、スズキ・エブリイワゴン。標準設定としてベッドマット、カロッツェリアの楽ナビ、そして諸費用を含む構成になっている。軽キャンピングカーを求める人に[…]
プロポーショニングバルブの開発で、ブレーキ液圧を適正に制御 クルマは様々な要因で荷重変化が起こり、それによってタイヤの接地性が変化し、制動力が左右される。これを防ぐために開発されたのが前後のブレーキ液[…]
日本車が手本とした、美を優先する伊デザイン。その代表が117クーペ 日本において、商品のデザインが売れ行きを大きく左右することに最初に気づいたのは、松下電器器具製作所(後の松下電器産業、現パナソニック[…]
- 1
- 2