2022年の年央に発表発売を予定している、トヨタの電動シリーズ「bZ」の第一弾SUV。最先端モデルのプロトタイプを、千葉県・袖ヶ浦フォレストレースウェイで味見した。
●文:川島茂夫 ●まとめ:月刊自家用車編集部 ●写真:奥隅圭之
常用速度域で力強く、120km/h巡航も余裕
BEVで気になるのは高速域での効率とトルクの低下。最近の多くのBEVは80㎞/h以下では素晴らしくパワフルであり、内燃機車の上級高性能車にも匹敵する加速性能を示す。しかし、速度域が高くなるほど加速は鈍り、電費が悪くなるのが一般的。
bZ4Xも例外ではなく、140㎞/hくらいの速度域ではNA2ℓ相応くらいの印象。ただ、120㎞/hくらいまでは駿足。大きく加速低下を体感するほどの変化もなく、また中庸域での加速反応も良好。電費の悪化がどれほどになるかは別として、制限速度120㎞/h区間の高速道路でも余裕で巡航できる性能は備わっていた。なお、最高速度は160㎞/hに設定されているが、モーター出力の限界というより実用面のバランスを考えた設定と思われる。
もうひとつ興味深いのは初期加速。ノーマルモードの4WD車は踏み込んだ直後に大きく加速を立ち上げる。まさに蹴り出すような感じだ。同じようにアクセルを踏み込んでも2WD(FF)車は立ち上がりが穏やか。ちなみに総モーター出力で10kWほど2WD車が劣るが、150kWもあれば踏み込み初期加速に差が出るはずもなく、駆動系のしゃくり等のトルク変動制御の違いと思われる。加えて蹴り出し感は刺激的ではあるがドライバビリティへの寄与はほとんどない。個人的にはトルク立ち上げを鈍(なま)し気味にしていたエコモードの方が穏やかで上品で好印象だ。2WD/4WD車のドライバビリティの違いも少なく、サーキット走行ゆえ激しい加減速も行ってみたが、エコモードでもとくに不足を感じなかった。
フットワークは意外なほど穏やか。揺れ返しを抑えたサス制御だが、2WD/4WD車ともにロールは比較的深く、ロール軸は水平に近く感じられる。限界域でのラインコントロール性と操舵に対する反応に優れ、クセがなく扱いやすく安心感あるハンドリングだ。
2WD車と4WD車で違いが出るのはコーナリング限界だ。4WD車の方がスタビリティ制御の介入速度が高い。ラインコントロール性の限界速度の違いと言い換えてもいいだろう。前輪駆動を意識させないハンドリングの2WD車だが、スタビリティ制御の介入で前輪駆動の限界を感じてしまう。
もっとも、これは公道では考えられないような速度域での話であり、スタビリティ制御の介入速度の高低よりも、介入時の信頼感とコントロール性のよさの方が実際は重要。早めに介入して穏やかに済ませるのは見識でもある。
過剰な演出を抑えつつ、BEVに乗る醍醐味が味わえる、あるいは内燃機車から乗り換えても違和感を覚えない、そんなバランスの妙味も見所のひとつである。
デザインは過剰演出せず、カジュアル&先進的
短いリヤオーバーハングと長いホイールベースのためプロポーション的にはコンパクトに見えるが全長はRAV4より95㎜長く、ほぼ4.7m。ちょっと大きめだが、取り回しとゆとりの最大公約数的パッケージングといえる。
ハリアーよりRAV4に近いか
角張ったラインとメリハリの効いた面構成が目を引く。キャラクターで言えば流麗なハリアーよりも無骨なRAV4に近い。EV縛りではなく、ガソリン車との競合でも選ばれる実用SUV。そんな狙いが姿形にも表れている。
インパネ周りでは低いカウルトップの上に置いたような輪外配置型メーターが印象的。モーターサイクルを思わせるメーターデザインがコックピット感を高めるが、全体のデザインはおとなしめ。奇をてらわずに現実的な未来を思わせる。先進感を深めるならもう少し個性的でもよさそうだが、そこを狙ったのがワンモーショングリップ仕様のステアリングだろう。
内装全般のデザインはケレン味のないカジュアル路線でまとめられていた。細部の造り込みや素材感の演出はミドルSUVの並レベル。価格相応の高級仕立てを求めると少々安っぽい印象を覚えるかもしれないが、カジュアルな雰囲気にはマッチしている。
乗員間の距離はRAV4より寸法拡大しているというが、ことさらに広くなった印象は受けなかった。それでいて後席はくつろいだ着座姿勢も取りやすく、視角的開放感も良好。4名のロングツーリングに適した居住性である。
トヨタ式運転支援を採用、ソーラーパネルも用意
bZ4Xはスバルのソルテラとともにトヨタ/スバル協業により開発された。基本ハードウェアを共有するが、安全&運転支援装備には最新のトヨタ・セーフティセンスを採用する。新世代アイサイトの機能をカバーする衝突回避性能と運転支援機能を備えているほか、半自動化駐車機能やスマホを用いたリモコン入出庫機能を備えたアドバンストパークも採用されている。
電動車らしい装備としては駐車中は駆動バッテリーを充電、走行中は12Vバッテリー系統に給電を行う太陽光発電システムを設定。効率を向上させた新型ソーラーパネルにより定格出力225Wの発電性能を実現。名古屋市の日射データ基準での年間発電量はWLTC電費で1750㎞に相当する224kWhとなるとのことだ。
車載IT関連機能に関しての詳細は不明だが、クラウドコンピューティングの特性を考えると、充電スポット情報等のBEV関連情報を除けば基本機能は従来のTコネクトと大きな違いはないと予想される。また、スバルはコネクト機能としてスターリンクを展開しているが、Tコネクトと連携した内容あるいは互換性を与えられているかも今のところ不明である。
先進安全性優位のユーティリティ
装備はラグジュアリー志向というよりも、先進安全&実用性向上が主眼。助手席にグローブボックスを設けず、座席や荷室の下に電池を置かず、ヒト優先の室内空間やSUVに相応しい荷室容量を確保している。
※本記事の内容はオリジナルサイト公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
※特別な表記がないかぎり、価格情報は消費税込みの価格です。
関連する記事
トヨタ クラウン【トヨタセダンを代表する伝統モデル。納期も優等生】●価格帯:489万9000〜739万3000円2018年に登場した現行クラウン。2020[…]
◆試乗グレード:日産ノートオーラ G FOURレザーエディション(4WD)●車両本体価格:295万7900円●ボディカラー:ガーネットレッド/スーパーブラック 2トーン( 有料色8万2500[…]
日産のチャレンジ精神が正しく具現化されているフルモデルチェンジからおよそ1年と4カ月が過ぎた日産ノートだが、オーラの追加もあって、その販売台数はおおよそ月70[…]
ともに最新のTNGA技術が投入されたご自慢モデル2019年12月に発売を開始したヤリスは、トヨタのTNGA技術が注がれた注目のコンパクトカーとして大きな話題を集めたモ[…]
【エクステリア】ボディサイズはアウトバックが一回りほど大きいもともとレヴォーグは、大きくなりすぎたレガシィのポジションを埋めるために生まれたモデル。共にフルイ[…]
最新の記事
- 1
- 2