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売れすぎて嬉しい悲鳴のスズキ・フロンクス クラス上の走りと、〝買い得〟すぎる価格が人気の理由

ディーラーに試乗車が用意される前の先行予約で9000台を超える受注を集めたスズキ・フロンクス。ディーラーレベルでは「納車まで相当お待ちいただくことに……」と嬉しい悲鳴をあげているようだが、そのクラス離れした実力ぶりを考えると、この状況はしばらく続きそうだ。

●文:川島茂夫 ●写真:奥隅圭之

クーペルックに騙されるなかれ、中身は広々キャビンの実用SUV

上手にまとめたクーペルックのおかげもあって、スタイル優先のSUVと思ってしまうかもしれないが、キャビンまわりのパッケージをチェックしていくと、見た目以上に実用性もしっかりと考えているクルマであることが分かってくる。

風の流れを意識させるクーペルックデザイン。ベルトラインを高めに取ることもあって、サイドウインドウはそれほど広いタイプではないが、スタイリッシュなサイドビューも注目を集める理由になっている。

●主要諸元(標準仕様 2WD)
全長×全幅×全高(mm):3995×1765×1550 ホイールベース(mm):2520 トレッド【前/後】(mm):1520/1530 最低地上高(mm):170 車両重量(kg):1070 パワーユニット:1460cc直列4気筒エンジン(101PS/13.8kg・m)+モーター(2.3kW/60Nm) ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)ディスク(R) サスペンション:マクファーソンストラット式(F)トーションビーム式(R)タイヤ:195/60R16

最近のコンパクトSUVは、運転感覚にこだわるモデルが多いこともあって、どのモデルを選んだとしても前席スペースで窮屈に感じるケースは皆無。このクラスで違いが出るのは後席スペースの余裕や居心地で、フロンクスはリヤエンドが少し絞り込まれているため、後席まわりもそれなりと思ってしまうかもしれないが、いざ後席に座ってみると想像以上に広々としていることに驚いてしまう。

インパネは面積を大きく取ったメタル調加飾パネルや、トリムやシートにブラック&ボルドー落ち着いた色調の2トーンを用いる大人っぽい仕立て。

革&ファブリックのコンビシートを装着。ショルダー部はボルドー色を用いることでプレミアムな雰囲気を高めている。シート形状は身体を支えてくれるサイドサポート&フィット感を意識したタイプ。後席まわりの余裕を確保したキャビン設計も、フロンクスの大きな武器といえる。

後席に乗り込む時には頭をぶつけないように慎重な乗り降りになるが、気になるのはそこだけ。足元スペースには余裕があり、シートの座り心地もしっかり。全長4m級のSUVの中では、抜群のキャビン実用性を備えている。トリムやシートにブラック&ボルドー落ち着いた色調の2トーンを用いる大人っぽい仕立てもあって、居心地も上々だ。

後席格納はシンプルな前倒式。ことさら積載性を売りにするタイプではないが十分な容量が確保される。日常域での買い物やレジャーシーンでも活躍できそうだ。

本領発揮は高速ツーリング、クラストップ級の走り

そして圧巻なのは走り。スズキは軽自動車を得意としているだけあって、タウンユース専門というイメージを持つ人もいるかもしれないが、フロンクスに関しては大いに違う。4.8mの最小回転半径設定や上級駐車支援機能など、狭い場所での取り回しを配慮した設計を取り込んでいるが、フロンクスの走りの真骨頂は、高速ツーリングでの走りの質と安心感が際立っていることに尽きる。

加減速のコントロールがしやすく、素直な操作感が楽しめることも好印象。ステアリング感覚も適度に重みがあるため、俊敏な挙動を入力してもほどよい緩さがあり、落ち着き感も上々。カーブでは低重心なクルマに乗っている感覚が強めだ。ライバルたちと異なる味を感じることもフロンクスの良さといえる。

パワートレーンは1.5Lのマイルドハイブリッドなので、上級モデルのような動力性能の余裕はないが、高回転域までキレイに回ってくれる特性もあって、そのフィーリングは極めて軽快。全開加速でもほどよく抑制されるエンジン音や、NV性能に優れたボディ設計のおかげで、高速走行時でも会話がとおりやすい。

1.5Lの直4DOHCエンジンは、燃費性能と低中速域での力強さに定評があるスズキのグローバルエンジンのひとつ。モーター(ISG)が組み合わされるマイルドハイブリッド車のみとなる。

さらにフットワークが秀逸。減衰感をしっかりと利かせたサスセッテイングで、角のある突き上げ感がなく、揺れ返しも少ない。短いストロークの中にはしなやかさや腰が練り込まれている。

ハンドリングも中立の据わりがよく、コーナリングでの車体のゆらぎも少ない。最小限の操舵で思ったコーナリングラインをトレースできる。全長4m級のSUVとは思えない安心感のあるフットワークで、SUVに限らずスモール&コンパクトクラスではトップクラスの実力だ。

キャビンまわりに徹底した遮音対策を実施したことも質感向上に大きく貢献。静粛性の高さはこのクラスでは際立っている。

性能&装備の充実ぶりを考えると、実はバーゲンプライス。売れるのも当たり前

ちなみにフロンクスの価格は、2WD車が254万1000円、4WD車は273万9000円。この価格だけを見てしまうとライバルよりも高いのでは? と感じてしまうかもしれないが、灯火類はすべてLED、インテリアも本革巻きステアリングにパドルシフト、ステンレス製ペダルプレートやレザー調ドアトリム&アームレストなど高級車を思わせる内容。安全運転支援機能にしても、ミリ波レーダーと単眼カメラを組み合わせた高精度の自動ブレーキシステムに、全車速追従機能・停止保持機能付きアダプティブクルーズコントロール、他車ではOPということも多いナビも標準装着と、抜群の買い得感だ。

●新型フロンクス 主要装備一覧
グレード標準仕様
2WD4WD
価格254万1000円273万9000円
デュアルセンサーブレーキサポートⅡ
ブラインドスポットモニター
パーキングセンサー(フロント、リヤ)
ヘッドアップディスプレイ(カラー)
アダプティブクルーズコントロール(ACC)
グリップコントロール
ヒルディセントコントロール
オートライトシステム
リヤスタビライザー
フルオートエアコン
シートヒーター
レザー調ファブリックシート
全方位モニター付メモリーナビゲーション (9インチHDディスプレイ、全方位モニター用カメラ、ハンズフリーマイクなど)
6スピーカー(フロント2、リヤ2、フロントツイーター2)

アウトドア志向が強いユーザーにはオススメしにくいが、普段は街中のドライブ、たまに長距離ツーリングを楽しみたい、というユーザーならば、フロンクスはベストの選択になりうる一台だろう。

当初予定していた月あたりの販売台数は1000台。発売後、さらに受注は重なっているようで、すでに1万台の大台も突破している。厄介なのは船で日本に送られてくるインド生産の輸入車ということで、国内生産のクルマのような融通が効きにくいことも不安材料のひとつ。すでに納期は相当長くなっているようだ。

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