![[懐かし名車旧車] トヨタ クラウン(4代目)「絶版になってから大人気」時代を先取りしすぎた悲劇のクルマ](https://jikayosha.jp/main/wp-content/uploads/2024/12/9aff4e966fa869b013b07ad728ec4a6e.jpg)
空気抵抗の減少を狙ったスピンドルシェイプや2段に分かれたノーズ、ボディと同色のビルトインバンパーなど、斬新なデザインでデビューしたMS60型4代目クラウン。デザインばかりではなく高級オーナーカーという位置付けにふさわしい性能&装備を纏った先進的なサルーンであったが、その先進すぎたデザインゆえに、当時の消費者には受け入れられなかった。
●文:月刊自家用車編集部
紡錘型(スピンドルシェイプ)は今でも斬新。キャビンと一体感を強調したカプセル型ボティで三角窓が廃止された。
クジラとも称された4代目クラウン。車体下側の丸みを帯びたシェイプがクジラのお腹部分に例えられことが「クジラ」の愛称の由来になっている。突起物を極力排することで実現した安全性の高い面構成や、組み込み式カラードバンパーの採用もこのモデルの特徴になる。
先進的スタイルとなった背景には、日産セドリック&グロリアとの熾烈な販売競争があると言われている。
【主要諸元】
全長×全幅×全高:4680×1690×1420mm ホイールベース:2690mm 重量:1360kg 排気量:1988cc水冷直6OHC 最高出力:110ps/5800rpm 最大トルク:16.0kgm/3800rpm トランスミッション:3速マニュアルコラムシフト 型式:MS60型 ●生産台数:26万7500台
新機軸として(航空機の)コクピットタイプのメーター類/燃料残量ウォーニングランプ/ソフトタッチホーンなどが装備された。
コラムフロントシートは3名がけの6名定員。フロアシフト仕様は2名用の5名定員となる。ファブリック仕様も豪華さが追求されている。また室内もトータルでカラーコーディネートされている。
前輪ディスクブレーキ装備やトレッド拡大で、高速走行に対応
オーナーカー時代に向けて提案したスタイリングが時代を先取りしすぎたのか、世間の無理解と保守性に翻弄されてしまった4代目クラウン(MS60系)。何よりの特徴はそのデザインで、空気抵抗の減少を狙ったスピンドルシェイプは、2段に分かれたノーズやボディと同色のビルトインバンパーなどが新鮮だった。さらにワゴンの側面観など、現代の目にも未来的に映る。
メカニズムも先進的で、いずれもオプションながら、後輪ESC(ABSに相当)/EAT(電子制御AT)/クルーズコントロールなどが採用されている。最高級グレードとしてスーパーサルーンが設定されたのも、この4代目からだった。また最終年度には、折から厳しさを増した排気ガス規制に対応し、一部のグレードに電子制御燃料噴射装置が取り入れられている。
エンジンはすべて6気筒になり、2600ccも追加された。クラウンエイトを例外とすれば、初めて3ナンバー規格となるクラウンで、高度経済成長時代を反映していた。
しかし、多くの消費者にとって見慣れぬデザインが不評を被った結果、ライバルの日産セドリック/グロリアに販売の首位を奪われるなど、トヨタの看板車種としては低迷してしまった。そこで発売2年後の1973年、人気挽回を期してマイナーチェンジを実施。前後の一体型バンパーをボディとの同色からメッキに変え、グリルも荘重に改めるなどの対策を尽くしたが、いったん根付いた悪評を覆すまでには至らず、けっきょく1974年にわずか4年という現役生活に終止符を打ってしまった。しかし、その先鋭的なデザインの印象は強烈で、今では旧車ファンの間で垂涎の的になっている。
トヨタがこのスピンドルシェイプを世に問うたのは、けっして一瞬の気まぐれによるものではなく、次の時代に向けての真剣な瀬踏みだった。その意図がほのかに垣間見えるのが、1962年のモーターショーに出展されたコンセプトカー・スポーツX。瀟洒な4座クーペだったが、フロントのコーナー部にスモールライトをはっきり突き出したあたりに、4代目クラウンに通ずるものも感じられる。そんな時間の流れとアイディアの温め方を思うと、スピンドルシェイプが失敗だったのではなく、高級車クラウンに応用したのが意外すぎたということになるだろうか。いろいろな意味で、忘れることのできないクラウンである。
これからのスタイリングをリードすると謳われたとおりカスタム(ワゴン)のデザインも先進性に富むものだった。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(クラウン(旧型))
クラウンシリーズ随一の実用性 2024年内に登場を予定しているエステートは、キャビン容量を大きく確保したプロポーションが採用され、シリーズでは最も高い実用性を有するモデル。パッケージングやスタイルから[…]
クラウンの正統後継モデル 新型クラウンの中で唯一のFRプラットフォームを採用した「セダン」。伝統のセダンタイプで、クラウンの正統な後継ともいえるモデルだ。パワートレーンにはミライ譲りのFCEVが上位設[…]
「スポーツ」と名前がついてるけど実態はSUV クラウン史上初の2BOXモデルとして登場したクラウンスポーツ。車名には「スポーツ」と名前が付くが、スポーツ性に振ったモデルではなく、多様な使い方ができるS[…]
シリーズ唯一のパワーユニットを搭載するなど個性が強いクロスオーバー 新型クラウンシリーズの第一弾として登場したクロスオーバーは、パワーユニットに2.5ℓのHEVと、上位設定としてシリーズ唯一の新開発2[…]
県警文字の書体から装備の細部まで忠実に再現 ヒコセブンが展開する「RAI’S」は、同社の商品ラインナップのうち、警察車両をメインとするシリーズで、各県や車両ごとに違う県警文字の書体から、コールサイン、[…]
最新の関連記事(旧車FAN)
豊かな時代の波に乗って人々の心を掴んだ高級車 1980年代頃までの日本において、3ナンバーの普通自動車は贅沢品の象徴だった。自動車税ひとつを取っても、税額が4万円以内に抑えられた排気量2L未満の小型車[…]
規制の逆風の中、速さを誇ったREスポーツ 2ローターのロータリーエンジン(RE)を積んだコスモスポーツを世に送り出して以降、マツダはロータリー車のバリエーションを増やし、1970年代を「ロータリゼーシ[…]
欧州スポーツカーとは異なる出自 まずお金の話で失礼しますが、クルマの開発にはそもそも大金がかかります。一例をあげると、ドアを1枚新たに開発するだけで、そのコストは軽く数億から10億円超にもなるといいま[…]
環境の時代を見据えたFF2BOX+省エネ技術 頑強だが垢ぬけない三菱車のイメージを一変させたデザイン クルマの売れ筋のトレンドは、時の世界情勢にも左右される。現在では地球環境保護や気候変動抑制という課[…]
サービスや部品供給の詳細は、2025年秋頃に発表 かねてからホンダは、多様な取引先の協力を得て、生産供給が困難になった部品の代替部品生産の検討していたが、今回、愛着あるクルマに長く乗り続けたいという顧[…]
人気記事ランキング(全体)
ベッド展開不要の快適な生活空間 全長5380mm、全幅1880mm、全高2380mmという大型バンコンでありながら、その中身は大人二人、あるいは二人+ペットでの旅にフォーカスされている。7名乗車・大人[…]
リアサスは、固定式リーフスプリングからコイルスプリングへ進化していった 長い間、リアの車軸は固定式で、それをリーフスプリングで支えていた。コイルスプリングが実用化されると、一部の高級車でそれを使うもの[…]
快適性を追求した軽キャンの完成形 「ミニチュアクルーズ ATRAI」は、岡モータースが長年にわたり築き上げてきた軽キャンパー製作のノウハウを、現行アトレーのボディに惜しみなく注ぎ込んだ一台である。全長[…]
最新版CarPlay・Android Autoに対応するワイヤレスアダプター スマホと連携して、様々なサービスを使用できるディスプレイオーディオ、接続には大きく分けて、ケーブルを利用する場合とワイヤレ[…]
濡れ物・汚れ物も気にしない。唯一無二の「防水マルチルーム」 イゾラ最大の特徴とも言えるのが、車両後部に備えられた「防水マルチルーム」だ。これはレクビィ独自の装備であり、実用新案登録もされている。アウト[…]
最新の投稿記事(全体)
リアサスは、固定式リーフスプリングからコイルスプリングへ進化していった 長い間、リアの車軸は固定式で、それをリーフスプリングで支えていた。コイルスプリングが実用化されると、一部の高級車でそれを使うもの[…]
ベッド展開不要の快適な生活空間 全長5380mm、全幅1880mm、全高2380mmという大型バンコンでありながら、その中身は大人二人、あるいは二人+ペットでの旅にフォーカスされている。7名乗車・大人[…]
最新改良で新しい外装塗料を採用。美しさと耐久性が向上している 5月に実施された一部改良(7月より改良モデルは発売)では、外装の美しさと耐久性を向上させつつ、原材料費の高騰に対応した価格改定を実施。この[…]
最新改良で2WDモデルを廃止。全車4WDモデルのみのラインナップへ 2024年11月に実施した最新改良では、従来はメーカーオプションだった機能の一部グレードで標準装備化が図られた。 具体的には、Xグレ[…]
デッドスペースにジャストフィット! 車内の温度較差を解消! 暑いシーズンのドライブは、車内の環境がシビアになりがち。炎天下に駐車後に乗り込む際や、夏場の渋滞中など、クーラーだけではなかなか車内温度が下[…]