
日本の自動車産業は世界に通用する競争力をつけつつあった1970年代、名車とも迷車とも言えるクルマが数多く登場した。そのひとつが、ホンダから登場したホンダ・バモスだ。軽トラックをベースにルーフやドアなどすべて取り去ったフルオープンモデル。当時、北米で人気の高かったバギーをモチーフに、ホンダ流にカスタマイズさせたマルチパーパスカーであった。
●文:月刊自家用車編集部
大胆にも軽トラックのボディを取り去ったフルオープンモデルのバモス。もちろんドアパネルも装備していない。2人仕様と4人仕様が用意されていた(写真は、リヤシートを畳んだ状態の4人乗りバモス4)
【主要諸元】 バモス2(1970年型)
●全長×全幅×全高:2995㎜ ×1295㎜ ×1655㎜ ●ホイールベース:1780㎜●車両重量:520㎏ ●駆動方式:ミッドシップエンジン・リヤドライブ●乗車定員:2名●エンジン:強制空冷4サイクル2気筒SOHC 354㏄ ●最高出力:30PS/8000rpm●最大トルク:3.0kg-m/5500rpm●最小回転半径:3.8m ●燃料タンク容量:26L●変速機:前進4段後進1段●サスペンション(前/後):マクファーソン・ストラット式独立懸架/半楕円板バネ●タイヤ(前・後):5.00-10-4PR ○価格:31万5000円(バモス2)/34万5000円(バモス4)
居住空間のみを幌で覆ったハーフホロ仕様(バモス4)。
居住空間はもちろん荷室全体に幌で覆ったバモスフルホロ。
軽トラックTN360のボディを取り去ったフルオープンマルチパーパスカーだった
ホンダZの誕生と時を同じくして鮮烈なデビューを飾ったのが、個性の塊とも言えるバモスホンダである。ベースとなっているのは、主力の商業車である軽トラックのTN360。キャブオーバースタイルのボディを取り去り、これに代えて割り切りの強いフルオープンのスクエアなボディを被せた。
北米で人気の高かったバギーをホンダ流に味付けした、「乗る人にその使い方を任せる」という新しい発想のマルチパーパスカーで、リヤはもちろん、フロント側にもドアはない。サイドパネルをまたいで乗り降りを行い、走行するときはバーを下げて落ちないようにする。頭を保護するのは、コの字型の細いロールバーだけだ。
小さいながらも、さまざまなアイデアが満載されたクルマだったのだ
バンパーと荷台にはガード用のバーが付き、丸形ヘッドライトの間にスペアタイヤを組み込みんだ爽快なフルオープン構造だが、キャビンをカバーするソフトトップを装備している。フロントシートだけの2人乗りとリヤシートを装備した4人乗りの2種類が用意されていた。ちなみにフロントパネル上のスペアタイヤは衝突時の乗員保護の役割を果たし、小さなボディながらさまざまなアイデアが満載されていた。
さらに、フルオープンということでメーター、スイッチ、シートは防塵・防水処理され、キーを抜けば自動的に作動するステアリングロックで盗難防止が図られた。
ただし、メカニズムのほとんどはTN360のもので、搭載された2気筒は、ホンダ最後の空冷エンジンであった。斬新なデザインでユーザーからの期待度は高かったが、悪路走破に強い4WDモデルがなかったこともあり、販売は低調に終わった。
4人乗り「バモス4」は、後部座席の背もたれ部分までホロが設定されている。リアシート使用時は、奥行き1m程度の荷室だが、荷室床は、タイヤハウスの張り出しもなく、完全フラットとなっている。
むき出しのメタルパネルに計器を埋め込んだ運転席。キー付きグローブボックスやハンドルロック機能もあり。
フロントバンパー上部にガード用バーを装備するほか、フロントに設置された予備タイヤは、衝突時に乗員を保護する緩衝材の役割を担っていた。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(旧車FAN | ホンダ)
四輪ラインナップの中核として期待され生まれた「1300」 「ホンダ・1300」は、1969年に発売されたホンダの小型乗用車です。 1960年代のはじめ、オートバイメーカーとしてすでに世界的な地位を確立[…]
自動車業界を震撼させた通産省の業界再編法案 近代日本の産業の多くは、俗に「護送船団方式」と呼ばれる国の指導下で成長してきた。銀行や保険会社の利率や商品構成が、つい最近までどこも同じだったように、国の保[…]
世界一の二輪技術を注いだ暴れん坊として誕生 前述のように、「ホンダ・S500/S600/S800」は、オートバイメーカーだったホンダが初めて4輪の乗用車としてリリースしたモデルです。 このモデルが初め[…]
高回転まで気持ちよく回るNAエンジン 日本人というのは、制約があってこそ創意工夫の実力を発揮する民族なのかもしれない。狭い国土に人がひしめき、多くが山岳地で耕作面積も狭ければ資源にも恵まれないというな[…]
軽自動車でも豪華で個性的なクルマが求められた時代。それを象徴するモデルとして誕生 1980年代の軽自動車市場は、1979年デビューのスズキ アルトなどの経済的な商用車がリードした。しかし、1989年に[…]
最新の関連記事(ホンダ)
N-BOXカスタムの一部グレードに、LEDフォグライトとフォグライトガーニッシュを追加設定 今回実施される一部改良では、N-BOXカスタムの一部グレードに、LEDフォグライトとフォグライトガーニッシュ[…]
余裕のある室内空間を効率良く活用 ホンダのステップワゴンは、最大で8名が乗車可能な人気のミニバンで、現行モデルは初代から数えて6代目となっている。スタイリッシュなエクステリアデザインと、実用性の高さか[…]
四輪ラインナップの中核として期待され生まれた「1300」 「ホンダ・1300」は、1969年に発売されたホンダの小型乗用車です。 1960年代のはじめ、オートバイメーカーとしてすでに世界的な地位を確立[…]
世界で1台の車がつくれるStyle_iDの豊富なメニューでカスタマイズ ジャパンキャンピングカーショー2025のホワイトハウスのブースで展示されていた1台が、フリードクロスター HV メトロキャンパー[…]
新デザインやカラーをプラスすることでイメージ一新 今回のステップワゴン スパーダ用純正アクセサリーは、従来の「Emotional Solid(エモーショナルソリッド)」から「Emotional Bla[…]
人気記事ランキング(全体)
シートサイドのスペースを有効活用できるUSB付きポケット 車のシートサイドや、シートとコンソールにある隙間などはデッドスペースになっていることが多い。小銭などの小物を落としてしまうことも多く、一度落と[…]
軽トラックTN360のボディを取り去ったフルオープンマルチパーパスカーだった ホンダZの誕生と時を同じくして鮮烈なデビューを飾ったのが、個性の塊とも言えるバモスホンダである。ベースとなっているのは、主[…]
ダイハツ・アトレー広すぎる室内スペース。シートをフルフラットにすると巨大なソファのよう こちらの軽キャンパーは、広々空間で人気のダイハツのアトレーがベースとなっている。写真を見てもらえればわかると思う[…]
ショックレスリングとは? 一般の金属とは異なる原子の規則相と不規則相が存在する“特殊制振合金”を採用した金属製のリングで、シート取付ボルトやサスペンションアッパーマウントのボルトに挟み込むだけで、効果[…]
ただものじゃない、激シブかっこいいプロボックス プロボックスは街でよく見かけるポピュラーな、トヨタの商用車のひとつ。そんな地味な、いかにもビジネス用途一点張りのプロボックスがSUV風の外観と、おしゃれ[…]
最新の投稿記事(全体)
純正マットの上に敷くだけで、プラスα効果を実感 クルマのフロアマットって、車内の泥汚れなどを防いでくれる必需品だけど、汚れ防止だけじゃない進化したフロアマットがあるのをご存知? 実はこれ、エーモンから[…]
「アルピーヌ A110 R 70」:世界770台限定の「R」バージョン最終仕様 今年でブランド創立70周年となるアルピーヌ。今回実施されるラインナップ変更では、ブランド設立を記念した「アルピーヌ A1[…]
バッテリーEVにも、スバルらしいアクティブイメージをプラス 発表された新型「トレイルシーカー」は、スバルのグローバルバッテリーEVとしては2番目に登場するe-SUVモデル。スバルとトヨタが、互いに強み[…]
新商品を発売前に公開して消費者の興味を引きつける、効果的なマーケティングであるのは間違いない そもそもティザーとは、英語のTeaserで「焦(じ)らす」という意味がある。ここでいうティザー・キャンペー[…]
軽トラックTN360のボディを取り去ったフルオープンマルチパーパスカーだった ホンダZの誕生と時を同じくして鮮烈なデビューを飾ったのが、個性の塊とも言えるバモスホンダである。ベースとなっているのは、主[…]