
●文/写真:鈴木ケンイチ
特徴的なフロント「オーシャン・エックス」
BYDから日本導入第4弾となる「シーライオン7」が発売された。ちなみに「7」という数字は車格を示しており、シーライオン7は、全長4830×全幅1925×全高1620㎜の体躯を持つラージサイズのクロスオーバーSUVとなる。実はシーライオン7は、先に発売されているスポーティセダン「SEAL(シール)」をベースに開発されているため、SEALの兄弟車のような存在だ。
「シーライオン7」
パワートレーンは後輪駆動の2WDと4WDの2グレード編成。価格は2WDが495万円、4WDが572万円となる。SEALの方が若干高い設定だが、現在はキャンペーン価格で、シーライオン7とSEALは同価格となっている。
シーライオン7のデザインは、SEALと同じように、「海洋生物の自由さと美しさ」がテーマとなっている。フロント部分は、SEALと同じく、ヘッドライトと左右バンパーがXを描く「オーシャン・エックス・フェイス」が採用されている。フロントからリヤに流れるシャープなウェストラインは、空と海の境界線を表現したもので、ルーフがリヤエンドに向けてなだらかに傾斜するクーペスタイルというのも特徴のひとつになる。
「シーライオン7」
安全&高効率な「ブレードバッテリー」を搭載
BYDのEV専用プラットフォーム「e-Platform 3.0」では、「CTB(Cell to Body)」と呼ばれる革新的な技術を採用。これは、バッテリーパックを車体構造の一部として一体化させることで、ボディ全体の剛性を向上させるというもの。駆動バッテリーは、高い安全性が特徴のLFP(リン酸鉄リチウムイオン)バッテリーを、BYD独自の技術で薄い板状に成形した「ブレードバッテリー」を使用。一般的にエネルギー密度が低いとされるLFPバッテリーの弱点を克服する工夫が凝らされている。
このブレードバッテリーをシーライオン7では82.56kWh搭載することで、2WDで590㎞、4WDで540㎞(WLTC値)もの長い航続距離を実現。モーターはフロントが最高出力160kW(217PS)、最大トルク310Nmの誘導モーター、リヤが230kW(312PS)・380Nmの永久磁石同期モーターとなる。2WDでも十分すぎるほどのパフォーマンスを誇る。
「シーライオン7」
この優れたスペックに負けないのが、装備類の充実ぶりだ。ナッパレザーを使ったパワーシートに大きなパノラミックルーフ、15.6インチの大型センターディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ、アンビエントライト、パワーゲート、スマートフォンをキーにするNFCデジタルキーなどを装着。もちろんACCを筆頭にしたADAS関連も最新の機能が揃っている。現在のBYDラインナップの最上位モデルらしい豪華で充実した内容はラグジュアリーを名乗るにふさわしいレベルだ。
スペックだけではない、総合力の高さが魅力
そして走り出して、すぐに気づかされる遮音性の高さもそんな印象をさらに高める。これはフロントガラスと、前席窓に採用された防音・熱線吸収ガラスが効いているのだろう。乗り心地は硬め。車両重量が2WDで2230㎏、4WDで2340㎏もあるため、足回りは相当締め上げた印象だ。ただ、245/45R20タイヤが組み合わされる4WDよりも、前235/50R19、後255/45R19インチとなる2WDの方がクッションが効いた分だけ、乗り心地は柔らかいものに感じられた。
パワーも十分。特設コースで試した加速体験では、スポーツカー顔負けの加速を体感することができた。4WDの0-100㎞/h加速はカタログ値で4.5秒と、2トンを超えるヘビー級SUVとしてはかなり速い。ただ、飛ばして楽しいという感じではなく、あくまでもベースは乗用モデル。余裕ある振る舞いが求められるラグジュアリークラスのSUVとして考えれば、この落ち着いたキャラ付けは好ましい。試乗を終えて振り返れば、シーライオン7は多くのプラスを感じることができる。充実した装備やパワフルなモーター、十分な航続距離、そしてリーズナブルな価格は、日本でも相当の競争力を持つのは間違いない。
BYDの日本での知名度はまだまだ道半ばではあるが、これだけの優良スペックを並べるクルマが揃うブランドはそうそうない。今後、BYDユーザーは増えていくのは間違いないだろう。
「シーライオン7」
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(BYD)
BYD初のステーションワゴン 世界初公開された、新型ハイブリッド車「BYD SEAL 6 DM-i TOURING」は、BYD初のステーションワゴンであり、同社が独自に開発したプラグインハイブリッド車[…]
好評の特別装備を追加した買い得な限定モデル 今回発売される「Grateful PINK」シリーズは、小型ハッチバックEV「BYD DOLPHIN」をベースに、カーボン調のインテリアトリムや電動テールゲ[…]
「10年30万kmパワーバッテリーSoH延長保証」を認定中古車まで拡大 BYDオートジャパンは、2025年4月から新車向けに「10年30万kmパワーバッテリーSoH延長保証」を導入しているが、同内容の[…]
BYDシリーズ第4弾となる新型クロスオーバーSUV 「BYD SEALION 7」は、高い評価を得ているEVセダン「BYD SEAL(ビーワイディー シール)」を基盤として設計されたSUV。 国内仕様[…]
ドルフィンに新グレードを設定。価格は299万2000円 今回の価格改定&ラインナップ変更の対象となるのは「ドルフィン」「ATTO 3(アット スリー)」の2モデル。 エントリーモデルのドルフィンは、従[…]
最新の関連記事(SUV)
「ピュア ポジティブ」が体現する、新しいフォルクスワーゲン 「ID.クロス コンセプト」は、人気の「T-クロス」クラスに属する電動コンパクトSUVとして、その手頃な価格帯が注目を集める。デザイン責任者[…]
グロッシーブラックのアクセントで存在感をプラス 今回導入される「XC60 Ultra B5 AWD Dark Edition」は、今年6月に内外装がリフレッシュされた最新のXC60マイルドハイブリッド[…]
55年の歴史に敬意を表した特別なレンジローバー 1970年の誕生以来、レンジローバーは「ラグジュアリーSUV」という新しいカテゴリーを創造し、そのセグメントを常に牽引してきたモデル。 快適な乗り心地と[…]
ボディカラー:MANUFAKTURカラハリゴールドマグノ(マット) 通常モデルでも人気のマットカラーを4色展開 今回導入される「Mercedes-AMG G 63 Black Accent Editi[…]
艶やかなグロッシーブラックのエクステリアパーツを採用 特別仕様車「XC40 Dark Edition」は、フロントグリルをはじめとする各所にグロッシーブラックのエクステリアパーツを採用し、スポーティな[…]
人気記事ランキング(全体)
全方位型のツインタイプの小型ファン 先日、ヘッドレストに装着するタイプの扇風機を愛車に導入したのだが、ファンとしてはオーソドックスな丸型タイプの扇風機も使う機会があったので、便利そうな2種を紹介してい[…]
前席は快適でも、後席は意外と暑くて不快な場合も… まだまだ強い日差しが照りつけるこの季節、車内の冷房の稼働は必須と言える。クルマに乗り込んで、涼しい風に当たって「はぁ〜涼しい…」と、ひと息ついていると[…]
2人旅に特化したゆとりある空間 TR540S Joinの魅力は、まず「2人旅に特化」と割り切った設計にある。就寝人数を2名(乗車人数は5名)に絞ったことで、車内レイアウトに余裕を生み出し、広々としたダ[…]
普段はコンパクトに収納、車に常備しておくのもアリ! 乗り物に関するグッズを多数展開するブランド「CAMSOP(キャムショップ)」が、人気のジムニーをモチーフにした便利なアイテムをリリースしたので紹介し[…]
乗用ミニバンの優れた居住性と走行性に車中泊のための快適機能をプラス メティオのラクネルシリーズはバンコンから軽キャンパーまで様々なタイプの人気モデルがそろうが、今回紹介するラクネル ステイ•スイートは[…]
最新の投稿記事(全体)
スズキのBEV世界戦略車が国内導入 新型eビターラは、2024年11月にイタリア・ミラノで初公開された、スズキのBEV世界戦略車第一弾となるモデル。 「Emotional Versatile Crui[…]
剛性の積み重ねが生む一体感 2024年に実施されたゲームチェンジャーとまで言われた20式から24式への進化。その革新的な変化と比べると、24式から25式への進化は「ブラッシュアップ」と表現するのが妥当[…]
コンパクトに収まるベース仕様 RS1+のベースとなるのは、スズキ・エブリイワゴン。標準設定としてベッドマット、カロッツェリアの楽ナビ、そして諸費用を含む構成になっている。軽キャンピングカーを求める人に[…]
プロポーショニングバルブの開発で、ブレーキ液圧を適正に制御 クルマは様々な要因で荷重変化が起こり、それによってタイヤの接地性が変化し、制動力が左右される。これを防ぐために開発されたのが前後のブレーキ液[…]
日本車が手本とした、美を優先する伊デザイン。その代表が117クーペ 日本において、商品のデザインが売れ行きを大きく左右することに最初に気づいたのは、松下電器器具製作所(後の松下電器産業、現パナソニック[…]
- 1
- 2