
●文:川島茂夫 ●写真:編集部
プレミアムSUVの魅力を身近にする、戦略モデルが登場
メルセデス・ベンツの中核を担うCクラス。そのSUVモデルとして確固たる地位を築いているGLCクラス(以下GLC)に、新たなエントリーグレード「GLC220d 4MATIC コア」が加わった。
これまで、そのプレミアムな質感と走行性能で多くの支持を集めてきたGLCだが、この新グレードは、従来の魅力を色褪せることなく、より戦略的な価格設定を実現している点が大きなポイント。ベースグレードから48万円という価格ダウンは、決して小さな数字ではない。しかし、その価格に見合うだけの装備削減が行われているかといえば、答えは否だ。
GLC220d 4MATIC コアは、単なる廉価版ではなく、プレミアムクラスに相応の装備や機能を備えながら、より多くの層にメルセデスのSUV体験を提供するという明確な意図を持って市場に投入されたモデルと言えるだろう。
GLCクラスの新たなエントリーモデルとして企画された「GLC220d 4マチック Core(ISG)」。価格はベースグレードよりも48万円低く設定された819万円。
全長☓全幅☓全高:4720☓1890☓1640mm、ホイールベースは2890mm。ミドルSUVクラスのサイズだが、キャビン後半の上手な絞り込みと広いウインドウエリアのおかげで数値寸法よりもコンパクトに見える。レジャー用途にも使える落ち着いた外観も好印象。Cd値は0.29。
メルセデスならではの質感と快適な居住空間は健在
エクステリアは、GLCが持つ普遍的な美しさをしっかりと継承。全長4720mmという堂々とした大きさでありながら、実車を目の当たりにすると、同等サイズの国産SUV、例えばCX-60などと比較して、幾分かコンパクトな印象を受けるのは興味深いところ。これは、キャビン後半の絞り込まれたプロポーションや、広めに取られたサイドウインドウのグラフィックによる視覚効果が大きいのだろう。
また、よりパーソナルな趣を持つクーペモデルがラインナップされていることも、ワゴンタイプのGLCをより実用的なSUVとして印象づける要因となっている。奇をてらうことのない、落ち着いた佇まいは、長く付き合えるデザインだ。
インテリアに目を移すと、メルセデス・ベンツならではの質感の高さは健在だ。試乗車はワゴンタイプだったが、居住空間は十分に確保されており、大柄な男性でもゆったりと寛ぐことができる。前後左右からのGに対しても、しっかりと身体をサポートしてくれるシートは、長距離移動においても疲れを感じさせない。
コンソールの大型ディスプレイが目を引く先進的なデジタルコクピット。操作系の集約に加え、上質な素材と精緻な作り込みも魅力のひとつ。
2列シートの無理のない設計もあって、荷室の広さも十分。通常時は620ℓ、後席格納時は最大1680ℓまで拡大される。レジャービークルとしても十分活躍できる。
最近のメルセデス・ベンツで強力なフック要素になっているインフォテインメントシステムは、直感的で操作性に優れた最新のMBUXが搭載。ARナビゲーションなどの先進機能も標準装備されている。今回の「コア」グレードでは、ボディカラーが3色となり、シートヒーターなどの一部オプション設定が制限されているものの、基本的な快適装備は十分に備わっており、日常使いにおいては不満を感じることは少ないだろう。なお、AMGラインパッケージやパノラミックスライディングルーフといった従来から人気を集めているオプションは選択可能だ。
ステアリング奥には12.3インチのコクピットディスプレイを配置。
コンソールには11.9インチの縦型メディアディスプレイを配置する、第三世代のMBUXを搭載。直感的なゼロレイヤー操作に加え、ARナビゲーションやジャストトークなどにも対応している。
819万円の価格に見合う価値はあり
実際にステアリングを握ると、洗練された走行性能の高さが強く印象に残る。搭載される2.0L直列4気筒ディーゼルターボエンジンは、10kWのISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)を備えたマイルドハイブリッド仕様であり、低回転域から豊かなトルクを発生させる。9速ATとの組み合わせもスムーズで、幅広い速度域において、ドライバーの意図に忠実な加速フィールを実現。さらにその静粛性の高さも見どころで、ディーゼルエンジン特有のノイズはしっかりと抑え込まれているのはお見事だ。
GLC220dは、2.0リッター直列4気筒ディーゼルターボエンジンにISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)を組み合わせたマイルドハイブリッド仕様。
フットワーク面ではリヤサスペンションの動きが秀逸。加速時やコーナリング時には、リヤがじんわりと沈み込みながら、短いストロークでしっかりと路面を捉え、荷重を均等に分散していく。しなやかでありながら、奥深い懐の広さを感じさせるサスペンションは、ドライバーには心地よい安心感を与え、同乗者には振動の少ない快適な乗り心地を提供する。良質なフットワークのお手本といっても過言ではない味つけは、長年にわたりプレミアムカーを作り続けてきたメルセデス・ベンツの経験と技術の賜物と言えるもので、このモデルでもしっかりと継承されている。
4WD車になっても主駆動輪は後輪が担当。FRの乗り味と4WDの安定性や据わりの良さを高水準でバランスさせているのが強み。特にフットワークのレベルの高さは際立っている。
GLC220d 4MATIC コアの価格は819万円。決して安価ではないが、その価格に見合うだけの価値は十分に備わっている。GLCが国内で一番売れているメルセデス・ベンツということがうなずける。価格で躊躇していた層にとって、この新しいエントリーグレードは、プレミアムSUVの世界への扉を開く絶好の存在になってくれるはずだ。
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