
トヨタより入門用レーシングカート「GR KART」が発売された。一体、どのような内容なのか? どこがすごいのかを詳しく解説しよう。
●文:鈴木ケンイチ
「モータースポーツの裾野を広げたい」
トヨタから入門用レーシングカート「GR KART」が9月10日に発売された。価格は38.5万円。驚くべきは、シャシー単体ではなく、エンジン、カウル、シート、そしてタイヤに至るまで、走行に必要なすべてが揃った「コンプリート価格」という点だ。
従来の欧州製レーシングカートの場合、シャシーだけでも30万円以上を要し、一式を揃えて走らせるには70万〜90万円ほどの初期投資が必要だった。つまり「GR KART」は、従来の半額程度という驚異的な低価格を実現している。価格だけでなく、車体の機構から販売アプローチに至るまで、ビギナーがモータースポーツを始めるための工夫が徹底的に盛り込まれているのが凄い。
フルカウルを装備し、38.5万円という低価格ながら本格的なレーシングカートのフォルムを体現。初心者が走るために必要なエンジン、タイヤ、シート、カウル、そしてバックミラーまでが全て含まれた「コンプリートパッケージ」として提供される。
レース専用品ではなく量産効果の高い汎用ベルトドライブを最適化して組み込むなど、汎用コンポーネントを徹底活用。さらにサプライチェーンの効率化により中間マージンを削ぎ落とすことで、低価格での提供を実現している。
メンテナンス性に優れた自己充電式のエンジン(OHV)を右側に配置。特徴的な独自形状のステアリングには、カートでは珍しいバックミラーが標準装備され、後方視界を確保されることも入門車らしいところ。
全長1820×全幅1160mmと、従来のカートより一回りコンパクト。ノアやヴォクシーといったミドルミニバンにそのまま積めることもアピールポイントのひとつ。
メンテナンスの負担も大幅に軽減
工夫のひとつ目は、あらゆる体格に対応する高い汎用性を持つことだ。従来のカートはポジション変更にシート脱着という大掛かりな作業を伴ったが、「GR KART」はペダルとステアリングに位置調整機構を備え、シートを外さず身長135cmから185cmまで即座に対応する。さらに最大15kgまでの専用ウエイトボックスも標準装備され、親子での共有や公平なハンデ調整も容易だ。
2つ目は整備負担を激減させる機構を採用していること。駆動系にはチェーンではなくベルト駆動を採用し、オイル飛散による服の汚れや、チェーン脱落、スプロケット摩耗といったトラブルからドライバーを解放する。また、エンジン内蔵の自己充電式バッテリーによって手動充電の手間を無くし、キャブレターには始動前の燃料吸引を平易にするプライマリポンプ付きダイヤフラム式を採用。メカニズム全体でメンテナンスのハードルを極限まで下げている。
駆動方式に従来のチェーンではなく「ベルトドライブ」を採用した点が画期的なところ。
独自形状のステアリングにバックミラーを完備。ステアリング位置はドライバーの体格に合わせたポジションに容易にセットできる。
ノア/ヴォクシークラスのミニバン荷室に「GR KART」を積載した例。専用トランポ不要でマイカーにそのまま積める。
従来のカートはシート脱着でポジション調整が必要だったが、GR KARTはシートを外さずペダルスライドとステアリング位置調整で、身長135〜185cmまで即座に対応可能。
部品は専用のECサイトから購入
オフコースにおける取り回しの良さも秀逸だ。全長1820×全幅1160mmというサイズは従来のカートよりひと回り小さく、トヨタのミニバン「ノア」「ヴォクシー」などの荷室にそのまま積載することが可能という。さらにガソリンやオイルを入れたまま縦置き保管できる構造のため、保管のたびに燃料を抜き取る手間もかからない。
消耗品やパーツ類はすべて「楽天市場」内の専用ECサイトで注文できる。国内メーカーのカート撤退が相次ぐ中、タイヤを含めた純正部品を安定して手に入れられる環境を整えた意義は非常に大きい。
また、ECサイトでの改造パーツ販売を最小限に留め、あえて「カスタムさせない」方針を打ち出している点も特徴のひとつ。マシンの性能差が出ない環境は、資金力や知識の乏しい初心者にとって何よりありがたい。純粋にドライビング技術を磨かせるという設計思想は、入門機としてまさに正鵠を得た選択と言える。
専用アプリ「GR app」での座学・テストから「ドライバーパスポート」発行、対応カートコース・GR Garageでの実技講習まで、シームレスな体験を提供。これにより独自のライセンス取得を不要とし、初心者の参入ハードルを大幅に下げている。
専用レースを用意し、K-TAIにも対応
そして最後の工夫は、「GR KART」の購入者が戦えるレースが用意されていることだ。トヨタからのリリースには「SLカートミーティングにおけるGR KARTレースへ参加する場合は~」とある。また、車両販売が全国の主なカートコースで行われるように、カート業界からの協力を得ているのも力強いところ。
そして個人的に感銘を受けたのが、車両に「バックミラー」が標準装備されている点だ。カートの世界でミラーといえば、モビリティリゾートもてぎで毎年100チーム以上を集めて開催される「もてぎKART耐久フェスティバル K-TAI」が有名だが、この人気の耐久レースへの参戦までも想定していることが分かる。
「GR KART」の内容は、従来の常識を覆す画期的なもの。レース初心者が挫折しがちな課題へ見事に対処されている。トヨタ広報からは「モータースポーツの裾野拡大もさることながら、幼少のころからこの小さなクルマで楽しさを感じていただき、将来もクルマ業界を支えてくれるような人たちを増やす(プロレースドライバー等ではなくても)、という壮大な夢もあります」というメッセージもあった。
「GR KART」は子どもの夢をサポートするアイテムになることは間違いない。もちろん、大人になってからレースへ挑戦したい人にとっても朗報だろう。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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