
トヨタ初の“スペシャリティカー”として知られる「セリカ(TA21型)」には、テールの形状と構造が異なる「LB」というバリエーションが存在します。場合によってはベースモデルの「セリカ」よりも「LB」の方が認知度が高いというくらい人気を博したモデルで、今でも根強い支持を集めています。ここではその「セリカLB」にスポットをあてて、少し掘り下げてみたいと思います。
●文:往機人(月刊自家用車編集部)
ライバルの日産とGTの頂点の座を奪い合った時代
トヨタのスペシャリティカー「セリカLB 2000GT(RA27型)」がデビューしたのは1973年です。
「セリカLB」は、1970年に発売された初代「セリカ(TA21型)」のバリエーション追加版として登場しました。初代「セリカ」は、独立したトランクを持つ“ノッチバック”スタイルのクーペですが、その後半部分を、リヤウインドウごとテールゲートが開く“リフトバック(=LB)”スタイルにモディファイしたのがこの「セリカLB」です。1970年頃は経済の成熟から自家用車の所有率が上がり、それまでは大衆向けスポーツカーの主力エンジンは1600ccでしたが、ひとクラス上の2000ccが望まれるようになっていました。
トヨタのライバルだった日産は、合併したプリンスの時代にすでに「スカイライン2000GT」をリリースしていて、そのジャンルで一定の地位を築いていて、1972年には4代目の「C110型スカイライン」で3代目の「2000GT」を投入。同じ2.0Lエンジンを搭載する「フェアレディZ」と共にスポーツイメージの定着を図っていました。その状況を指を咥えて見ているわけにはいかないトヨタは、「セリカ1600GT」で築いた地盤の上に、ライバルを上回る性能を持った「2000GT」を打ち立てる計画を進めます。
クーペ1600GT(1970年)
発売前年のモーターショーに出品されたコンセプトカー「EX-1」をベースに開発された。独立トランクを持つ2ドアクーペで、同時に登場したカリーナとプラットフォームを共用する。
外観だけではなく、エンジンも変更。
「セリカLB」の最注目ポイントは、ルーフからなだらかにテールエンドにかけてスロープを形成する“リフトバック(ハッチバック)”による流線型のフォルムでしょう。しかし、この「LB」のウリはその外観だけに留まりません。
高出力を発揮させる原動力には、この当時の高性能の象徴“ツインカム”ヘッドを搭載した「18R-G型」を採用。このユニットは、初代「トヨペット・クラウン」に搭載されていた「R型」の系譜に連なる伝統のラインで、内径×行程:88.5×80.0mmの構成で1968ccの排気量となる「18R型」をベースにして、「2T-G型」と同様の手法で、ヤマハとの共同開発による“ツインカム”ヘッドを搭載したものです。出力は当時2.0Lクラス最高の145psをマーク。ライバルの「スカイライン」の130psを大きく上回る動力性能を発揮しました。
しかし、初代セリカでは後輪にオーソドックスな4リンク式のリジッドアクスルを採用していましたが、ライバル車であるC110スカイラインはすでに独立懸架のセミトレーリングアーム式を採用しており、シャーシのメカニズム的には、遅れをとっていたのは否めませんでした。
LB2000GT (1974年)
初代セリカの歴史の中でも特に人気の高いのがLB2000GT、当時のフラッグシップ(最高級・最速)モデルで、スカイラインの対抗馬として開発された。
2000GTに搭載された18R-G型エンジン。当時クラス最強の145PSを誇った。
“ダルマ”と“LB”は意外と違う
初代「セリカ」と、その追加グレードの「LB」は「ただ後ろをハッチバックにしただけでしょ?」と思っている人も少なくないと思いますが、実はいろいろ細かい違いがあります。
実は顔つきからして細かく変更が加えられています。ヘッドライトやバンパーの意匠が同じなのでパッと見ただけでは分かりづらいのですが、タイヤから前の長さ“フロントオーバーハング”が70㎜も延長されて835㎜(クーペは765㎜)となっています。それにともなって「く」の字形に尖っていた前端が平らになり、モダンな印象に。丸目4灯のライト間のグリル部分も広がっているので、全体的に漠然と「なんか雰囲気が違う」といったレベルの変更が凝らされています。
そして延長された前部とは逆にリアオーバーハングは20㎜短縮され955㎜(クーペは975㎜)となり、ロングノーズ・ショートデッキ具合を強調。リフトバックのスタイルとあわせて「フェアレディZ」の対抗馬に充てる狙いも垣間見えます。
1600 GTに比べ、グリルがより立体的になり、中央が少し前に突き出したような、アメリカンマッスルカーを意識した力強いデザインとなったLB2000GT。また、LBは、より大きな2000ccエンジン(18R-G型)を搭載することを前提に設計されたため、フロント部分が数センチ延長されたためロングノーズになっている。
リフトバックは4本スポークのステアリング。GTは本革巻き。計器類の配置はクーペと共通。シフトの手前に見えるのは灰皿だ。
通気性向上のエアホールも付いたLB2000GTのハイバックフロントシート。シートアジャストは前後160ミリ。
“パクリ”と言われた特徴的なテールランプ
この「セリカLB」は、その名の由来となっているリフトバックのスタイルと、テールエンドがスパッと断ち切られ、リヤゲートのスロープが後端に向かってすこし跳ね上がりを見せる“ダックテール”のシルエット、そして片側5つのスリットで構成されたテールランプ形状が独特の個性を発揮して、スポーツカー好きの心を捉えました。
しかし、ケチを付ける人はいつの時代にも存在します。このテールの姿が「フォード・マスタング・ファストバック」に似ていることから「パクリだ」という批判がどこからか聞かれるようになります。「マスタング・ファストバック」が1969年なので、時期的にパクリだと言われても仕方がありませんし、この時期の国産メーカーの多くはアメリカ車をお手本としていたのは確かです。しかし「LB」のプロトタイプの「SV-1」は一体型のテールランプ形状だったので、その後に「セリカ」との差別化を図るためにより特徴的な形状を充てたというのが実際のところだと思われます。
トヨタEX-1(1969年)
1969年の東京モーターショーに出品され、セリカの源になったコンセプトカー。同年三菱からだされたGTX-1からライバル車「コルトギャランGTO」も生まれている。
セリカのルーツとなったコンセプトカーのEX-1(1969年)はLBにより近いファストバックのデザイン。しかし、フォード・マスタングも、1969年に登場した2代目がファストバックのフォルムであったため、パクリ疑惑が彷彿した。
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