
トヨタ自動車が、イタリアの歴史的ラリー「ミッレミリア」に初めて挑む。6月9日から13日にかけてブレシアを起点に開催されるサポートイベント「1000 Miglia Gran Turismo Experience 2026」に、初代クラウンからLEXUS LFAまでの5台で出走するもので、日本メーカーのミッレミリア関連イベントへの参加は今回が初めてとなる。1000マイル(約1600km)を走り抜く挑戦は、トヨタ70年のクルマづくりの歴史をそのまま体現するような顔ぶれだ。
●文:月刊自家用車編集部 ●写真:トヨタ自動車株式会社/ミッレミリア公式サイト
初代クラウンからLEXUS LFAまで、モータースポーツとともに歩んだ70年の結晶が、イタリアの空の下を走る!
ミッレミリア2025の模様。
トヨタ自動車が、イタリアが誇る歴史的ラリー「ミッレミリア」に初めて挑む。6月9日から13日にかけて、北イタリアのブレシアを起点に開催されるサポートイベント「1000 Miglia Gran Turismo Experience 2026」に5台で出走するもので、日本メーカーとしての参加は今回が史上初となる。
ミッレミリアは1927年から1957年にかけてイタリアで行われた公道レースを原点とする。1000マイル(約1600km)にわたってイタリアの美しい街並みや田園を駆け抜けるその光景は、「世界で最も美しいレース」と称されてきた。現在は当時の原型を保つクラシックカーのみが出走できるヒストリックラリーとして、世界中の自動車愛好家やメーカーが参加する平和的な国際交流の象徴となっている。
トヨタが参戦するミッレミリアグランツーリスモは、「より幅広い名車を走らせたい」という思いから、ミッレミリアとゲームシリーズ「グランツーリスモ」を手がけるポリフォニー・デジタルが共同で立ち上げた新たなイベント。トヨタはこの大会を「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」の源流のひとつととらえ、その歩みを体現する5台での出走を決断した。
5台が語る、トヨタの70年
初代トヨペットクラウンRS型
今回出走するトヨタ車5台の最年長は初代トヨペットクラウン RS型だ。1955年に生まれた日本初の純国産乗用車は、翌年にはロンドンから東京まで5万キロを8か月かけて走り抜き、1957年には日本車として初めて豪州一周ラリーを完走した。当時の日本人が「クルマで世界を走る」とは想像もしなかった時代の話だ。2025年に発売70周年を迎えたこのクルマが、今回の5台のリーダー格として名を連ねる。
トヨタスポーツ800 UP15型
続くのはトヨタスポーツ800 UP15型。1965年に登場したトヨタ初の2人乗りスポーツカーは、とにかく軽かった。その軽さを武器に、1966年の第1回鈴鹿500kmレースでは給油なしで500kmを走り切り、クラス優勝を果たした。燃費や効率を突き詰めることが速さにつながる、その発想は今のトヨタにも脈々と生きている。
トヨタ2000GT MF10L型
トヨタ2000GT MF10L型は、日本が本気で世界を目指した証だ。1966年の速度記録チャレンジで3つの世界記録と13の国際新記録を樹立し、「日本にもこんなクルマがあるのか」と世界を驚かせた。現在のスーパー耐久シリーズの源流にあたる富士24時間耐久レースでは1〜2フィニッシュも達成している。
スープラJZA80型
さらにスープラ JZA80型は、トヨタのマスタードライバーとして知られるモリゾウ、豊田章男会長の原点となった1台だ。故・成瀬弘氏との運転特訓の舞台にもなったこのクルマは、速さだけでなく環境性能や安全性能も当時の最高水準を追い求めた。スポーツカーのあり方そのものを問い直した意欲作でもある。
LEXUS LFA
そして最後を飾るのがLEXUS LFA。レクサスのスポーツライン「F」の頂点に立つこのモデルは、開発時からマスタードライバーであった故・成瀬 弘氏がニュルブルクリンクで徹底的に磨き上げ、ニュルブルクリンク24時間レースで計5度のクラス優勝を刻んだ。エンジン音さえも官能的と称されたその走りは、「クルマは感動を与えられる」というレクサスの信念の結晶だ。
クルマ文化を未来へつなぐために
ミッレミリア2025の模様。
今回のミッレミリアのトヨタ初参加の意義はどこにあるのだろうか? それはトヨタが今回の取り組みを単なるイベント参加として終わらせようとしていない点にある。
同社はミッレミリアへの参加を通じて、欧州に根付くクルマ文化を現地現物で学ぶとしている。欧州ではクルマは単なる移動手段ではない。地域の歴史や産業、暮らしと結び付いた文化の一部として受け継がれている。
約100年の歴史を持つミッレミリアが今なお多くの人々を惹きつけるのも、その背景に自動車文化そのものへの敬意があるからだろう。トヨタは日本自動車会議所が掲げる「クルマをニッポンの文化に!」という考え方のもと、欧州と日本の自動車文化の交流にも取り組むとしている。
電動化や知能化が加速する時代だからこそ、クルマを文化として次世代へ残していく取り組みの重要性はむしろ高まっているのだ。
WRCやWEC、スーパー耐久へ続く“もっといいクルマづくり”の原点
ENEOS スーパー耐久シリーズ 2026 Empowered by BRIDGESTONE 第3戦 NAPAC富士24時間レースに参戦した「#32 TGRR GR Corolla H2 concept」。液体水素を燃料として使用する。今回、世界で初めて「超電導液体水素ポンプ」を搭載して出走した。
現在のトヨタは世界ラリー選手権(WRC)、世界耐久選手権(WEC)への参戦や国内ではスーパー耐久シリーズを舞台に、水素エンジンやカーボンニュートラル燃料など次世代技術の開発を進めている。そこで一貫して掲げられているのが、「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」だ。
1950年代のクラウンが世界へ挑み、1960年代の2000GTが世界記録へ挑戦し、LFAがニュルブルクリンクで鍛え上げられたように、レースや極限環境で得た知見を市販車へ還元するという思想は今も変わっていない。
今回のミッレミリア参戦は過去を懐かしむためのイベントではない。トヨタが現在進めるクルマづくりの原点を見つめ直し、その思想を未来へつなげていくための取り組みであるのだ。
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