
●文:月刊自家用車編集部
時代の要請とコストの壁。なぜ「クリーンディーゼル廃止」なのか
マツダのCセグメントモデル「マツダ3」は、伸びやかでスポーティな「ファストバック(ハッチバック)」と、上質でエレガントな「セダン」という2つのボディタイプを擁し、デザインと走りの質感を追求するユーザーから高く評価されてきた。
そんなマツダ3がパワートレーンの大刷新を含む、大幅な商品改良を発表した。
今回の改良における最大のポイントは、2.5Lマイルドハイブリッドエンジンが新規投入され、これまでマツダ3の人気を支えてきた1.8Lクリーンディーゼルエンジンの完全廃止という、大きな変化が挙げられる。
2019年の登場以来、洗練された「魂動デザイン」で高い評価を受けてきたマツダ3。スポーティなファストバック(左)と、品格漂うセダン(右)という対照的な2ボディを展開し、熟成を重ねてきた。
マツダの新たに主力を担う2.5Lマイルドハイブリッド「e-SKYACTIV G 2.5」。大排気量NAならではのリニアな加速感にモーターアシストが加わり、街乗りから高速巡航まで余裕に満ちた走りを提供する。(写真はCX-5)
世界市場における需要の偏りと「脱ディーゼル」の足音
これまでマツダの主力モデルは、分厚いトルク特性と燃料コストが安くなることで経済性に優れているディーゼル車を販売の中軸に据えていたが、世界的に進む環境性能を求める要求もあって、ディーゼルエンジン車の販売が厳しくなってきた。
その理由としては、排ガス中に含まれる有害物質を現代の厳しい環境規制に適合させるため、DPFや尿素SCRシステムといった複雑かつ高価格な後処理装置が不可欠となった点が挙げられる。大型SUVであれば車両価格にコストを吸収・転嫁できるが、200万〜300万円台が主力のコンパクトクラスでは車体価格の高騰に直結し、商品力を維持することが極めて困難だからだ。
低回転からの力強いトルクとコストの良さで高く評価されいた1.8Lディーゼルターボモデルは、今回の改良で惜しまれつつ姿を消すことになる。
さらに、グローバルな需要比率の偏りも、今回のディーゼル廃止が進んだ理由になるだろう。
日本国内では経済的なディーゼルが多くのユーザーから支持されていたが、世界全体で見ればすでに少数派であり、特定地域のためだけに多額の規制対応コストを掛け続けることは、採算上で困難だったことが推測できる。
すでにマツダの販売現場では、新型となったCX-5がディーゼルレスになったほか、ほかのモデルでも設計年次が古い直4ディーゼルの廃止が進んでいる。長年ブランドを支えた看板ユニットの撤退を惜しむ声が強いにもかかわらず、だ。
そんな流れのなか、ディーゼルに代わる核として据えられたのが、現行CX-5などでも定評のある2.5L直列4気筒ガソリンエンジンに、独自のマイルドハイブリッドシステム「M HYBRID」を組み合わせた「e-SKYACTIV G 2.5」だ。
このユニットは、大排気量ゆえの余裕あるトルクと静粛性を実現するほか、モーターアシストが加わることで実用域のレスポンスの良さと環境性能を手に入れている。
マツダ3に搭載されている1.8Lディーゼルターボエンジン。グローバル市場における電動化シフトと需要の変化に伴い、マツダはパワーユニットの最適化を急いでおり、日本市場で人気の高かったディーゼルモデルの廃止もその戦略の一環といえる。
奇跡的に生き残った「6速MT」
また、もうひとつ見逃せないのが、ファストバックに6速MT、いまや絶滅危惧種になっている「マニュアルシフト」が維持されたこと。
マツダ3は決してサーキット走行を最優先した純粋なスポーツモデルではないものの、自らの手でシフトを操りたいマニュアル派にとって非常に価値ある設定と言える。AT化に加え、電動化が急速に進むなか、手頃な価格帯で上質な内燃機関とMTの組み合わせを新車で購入できる機会は、事実上これが最後になるかもしれない。
今や希少となった6速MTがファストバックに継続設定されたのは朗報。自らの手でシフトを操り、エンジンの回転感を味わう高揚感は好きなユーザーには代えがたいものになるだろう。
過渡期だからこそ進化を止めない、マツダの挑戦とこれから
経済性と力強い走りを両立していたディーゼルモデルのカタログ落ちは残念だが、熟成の2.5Lエンジンとハイブリッドを融合させた「e-SKYACTIV G 2.5」は、ガソリン車ならではの伸びやかさと上質感を提供してくれる。
長年ディーゼルを指名買いしてきた既存のオーナーにとって、この新ハイブリッド車が受け皿となるかは見極めが必要だが、来年にはCX-5に待望のフルハイブリッドモデルを投入することが明言されているなど、環境と走りを両立する次世代内燃機の開発も着々と進んでいる。
過渡期だからこそ進化を止めることを選ばなかった、マツダらしい今回の商品改良。この選択が成功だったのか? 今後の販売動向に注目してみたい。
今回の商品改良では、パワートレーンの再編に伴い、グレード体系もシンプルな構成へと整理された。ファストバックは従来法人向けだった仕様から一般カタログモデルへ格上げされた15C(236.5万円)や15S(253万円)をエントリーに据え、新開発の2.5Lハイブリッドを搭載する25S(305万8000円〜)や上級グレードの25L(319万円〜)がラインナップの中核を担う。最上級グレードとしてe-SKYACTIV X エンジンを搭載するX Touring(407万円)も用意される。
装備面でも、上級モデルであるCX-60やCX-80と同等の先進安全技術(降車時警告機能付きBSMや進化型ALH等)が移植されるなど、安全性能が引き上げられている。
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