
スズキは2026年9月25日、「10年先を見据えた技術戦略2026」を発表した。今回の発表では、BEV(電気自動車)やハイブリッド車、内燃機関などのパワートレイン技術に加え、車両の軽量化や開発手法の刷新など、幅広い技術が紹介された。そのなかで鈴木俊宏社長は、自動車を取り巻く環境の変化を説明するなかで、「5年前と比べて平均車両価格は約50%上昇し、車両重量は約10%増加した」と説明した。
クルマは、なぜこれほど高く、重くなったのか。そしてスズキが改めて掲げる「ちょうどいい」とは何なのだろうか?
●文:月刊自家用車編集部
5年前と比べてクルマの価格は約50%上昇、重量は約10%増加
鈴木社長が示したのは、5年前と現在のクルマを取り巻く状況の変化である。スズキによれば、5年前と比べて平均車両購入価格は約50%上昇。一方、平均車両重量も約10%増加しているという。
自動車を取り巻く環境では、原材料価格やエネルギーコストの上昇、規制の強化などが進んでいる。
また、クルマに求められる機能も多様化・複雑化している。こうした変化のなかで、鈴木社長は「本当に必要な価値とは何か」「本当に必要な機能とは何か」を改めて考える必要があると説明した。
そこでスズキが重視するキーワードが「ちょうどいい」である。
「本当に必要な機能とは何か」を問い直す
クルマには、安全装備や快適装備、電動化技術、通信機能など、さまざまな機能が搭載されるようになった。一方で、機能が増えれば、それに伴って部品点数や重量、消費するエネルギーなども増える。
スズキは今回の技術戦略で、単純に新しい機能を追加していくのではなく、ユーザーにとって本当に必要な価値を見極めることを重視している。
これは、同社がこれまで掲げてきた「小・少・軽・短・美」や「エネルギー極少化」「本質価値極大化」ともつながる考え方だ。
「10年先を見据えた技術戦略2026」発表資料
スズキは2025年の技術戦略でも、地球に寄り添う技術による「エネルギー極少化」と、人に寄り添う技術による「本質価値極大化」を掲げている。
2030年に向けて「100kg軽量化」も目指す
「重くなったクルマ」をどうするのか。スズキが取り組んでいるのが、車両そのものの軽量化である。
今回の技術戦略では、2030年以降を見据え、車両1台あたり100kgの軽量化を目標として掲げている。さらに、その先には最大120kgの軽量化も視野に入れる。
「10年先を見据えた技術戦略2026」発表資料
「10年先を見据えた技術戦略2026」発表資料
軽量化の対象となるのは、大型部品だけではない。
例えばボルトについても、M8ボルトの頭部を小さくすることで、1本あたり約1gの軽量化を図るという。クルマには3000本以上のボルトが使われるため、小さな削減でも積み重ねることで車両全体の軽量化につながる。
また、衝突時のエネルギーを効率よく受け止める構造や、エンジンなどの搭載位置、車体構造、材料の使い方などを見直し、安全性能を確保しながら軽量化を進める考えだ。
「軽くする」ことで必要なエネルギーも減らす
スズキが軽量化を重視する理由は、単に車両重量を小さくすることだけではない。
車両を軽くすれば、走行時に必要となるエネルギーを抑えやすくなる。さらに、車両を製造する際に必要となる資源やエネルギーの削減にもつながる。
スズキは以前から、小さく軽いクルマによって必要なエネルギーそのものを減らす「エネルギー極少化」を技術開発の柱としている。つまり、電動化だけでエネルギー問題に対応するのではなく、そもそもクルマに必要なエネルギーを減らすという考え方である。
「高機能化」だけではないクルマの進化へ
今回の技術戦略でスズキが示したのは、単に「新しい技術を搭載する」という方向性ではない。
5年前と比べてクルマの価格が約50%上昇し、重量も約10%増加したという現状を踏まえ、ユーザーにとって本当に必要な機能や価値を見極める。
そして、必要な機能を残しながら、車両を軽くし、使用するエネルギーも抑えていく。その先にあるのが、スズキが掲げる「ちょうどいい」クルマである。
電動化、内燃機関、ハイブリッド、軽量化など、さまざまな技術を組み合わせながら、「何を足すか」だけでなく「何を減らすか」も追求する。今回の技術戦略は、そんなスズキのクルマづくりの方向性を改めて示すものとなった。
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