「使う」から「作る」へ。MIRAIの技術で水素インフラの未来を可視化【JMS Bizweek 2026】│月刊自家用車WEB - 厳選クルマ情報

「使う」から「作る」へ。MIRAIの技術で水素インフラの未来を可視化【JMS Bizweek 2026】

「使う」から「作る」へ。MIRAIの技術で水素インフラの未来を可視化【JMS Bizweek 2026】

トヨタは10月13日〜16日に千葉・幕張メッセで開催された「Japan Mobility Show Bizweek 2026」(以下、JMS Bizweek 2026)にて「水電解システム」を展示した。「水電解システム」は、トヨタが燃料電池車(FCEV)の開発で培った技術を応用して生み出されたもので、ブースではMIRAIの技術を活用した実証プラントの全貌や、千代田化工建設との協業による5MW級システムの開発、そして2029年を見据えた世界展開のロードマップまで、水素社会の実現に向けた取り組みが発表されていた。

●文/取材:鈴木ケンイチ

水素を生成する「水電解システム」は、FCEV(燃料電池車)の技術を活用

自動車展示会「Japan Mobility Show」(以下、JMS)は、2024年よりビジネス向けの「JMS Bizweek」が加わり、本章とBizweekが隔年で交互開催されることとなった。今回の会場は幕張メッセの2ホールと小規模ながら、目玉となったのが日本自動車工業会(自工会)による「実現したい未来の社会像」をテーマとした合同展示だ。「マルチパスウェイ」や「水素普及」など様々なテーマで各社が出展し、トヨタはその中で「水電解システム」を披露した。

トヨタの水電解システムは、FCEVの開発で培った技術を応用したものだ。具体的にはFCEV用のFCスタックに電気を通し、水を電気分解して水素を製造する。会場のブースにはFCスタックの実物に加え、千代田化工建設と共同開発し、2026年にトヨタ本社工場へ設置した5MW級商用実証プラントの模型が展示された。

JMS Bizweek 2026で披露された、トヨタ本社工場「水電解実証プラント」の1/50模型。MIRAIのFCスタック12個(5MW級)を搭載し、水素の「地産地消」に向け、着実に稼働するプラントの全貌を再現している。

FCスタックはFCEV(水素燃料電池車)の「MIRAI」と共通の設計で、構成部品の約9割を共有する。通常の発電とは逆の反応を起こし、1個あたり400kW出力(水素製造能力8kg/h)に相当。これを12個組み合わせることで、5MW級かつ製造能力96kg/hのポテンシャルを持つシステムを構築している。

12個のFCスタックは20フィートコンテナほどのサイズに収められており、運搬や設置が容易な点が強みだ。プラント全体としては、この水電解コンテナを中心に、イオン交換器、圧縮機、除湿器、整流器、水素ステーションなどで構成される。

FCEV「MIRAI」のFCスタックと部品の約9割を共有する、トヨタの「水電解セルスタック(400kW)」。通常の発電とは逆の反応で、水を電気分解して水素を「つくる」システムの心臓部だ。

「つかう」から「つくる」へ。トヨタが描く水素エネルギーの未来図

トヨタの水素戦略は、「つくる/はこぶ/ためる/つかう」の全方位で取り組む点が特徴だ。「つかう」領域のFCEVや、「ためる/はこぶ」領域の水素タンク開発は広く知られており、モータースポーツ(スーパー耐久レース)の現場でも「つくる・はこぶ・つかう」の実証を重ねてきた。

「つくる」領域へのアプローチは2010年代の風力発電活用から始まり、2020年代には「MIRAI」の技術応用へと進展。2024年2月には千代田化工建設と大規模水電解システムの共同開発における戦略的パートナーシップを締結した。今回の5MW級プラントはその代表的な成果といえる。今後はこの5MW級を基本単位として、2029年度以降に国内外へ大規模展開していく計画だ。

なお、合同展示の水素普及コーナーでは、官民連携の「水素大動脈構想」も紹介されていた。2035年までに福島〜福岡間の幹線道路で大型FCEVトラックを定期運行させる計画で、実現すれば安定した水素の需給環が生まれるという。

このほか、川崎重工の水素運搬船や水素エンジンバイク、三菱ふそうの水素エンジン大型トラック、日野自動車のFCトラックなども並んでいた。

川崎重工業の「液化水素運搬船」模型。トヨタの「つくる」「つかう」を繋ぐ「はこぶ(海上輸送)」の主役であり、水素サプライチェーンの構築に不可欠な存在といえるものだ。

「水素大動脈構想」や共同物流の実現に向け出展された、日野の大型FCトラック「プロフィア Z FCV」。幹線道路での定期運行を見据えた実用的なFCEVであり、水素の安定需要を生み出す社会実装の鍵となるモビリティだ。

「つかう」側の選択肢が広がるからこそ、「つくる」側の確実な供給が必要になる。今回の展示は、トヨタの水電解システムが単なる一技術の発表ではなく、水素社会という巨大なパズルを完成させるための不可欠なピースであることを明確に物語っていた。

JMS Bizweek 2026の「水素普及」ゾーンでは、「水素大動脈構想」のパネルが掲げられ、福島から福岡まで幹線道路で需要と供給をつなぐ、日本の水素社会実現に向けた官民連携の巨大なビジョンが提示されていた。

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