
通常、自動車業界におけるモデルライフといえば6年程度が一般的なサイクルだ。技術の進化やデザインのトレンドが目まぐるしく変化する現代において、10年以上も走り続けることすら容易ではない。しかし、そんな自動車業界の「常識」を根底から覆し、異例とも言える快挙を成し遂げ続けているモデルが存在する。それが、三菱自動車のミドルミニバン「デリカD:5」だ。2007年のデビューから今年で20年を迎える超ロングセラーモデルでありながら、今年の上期(2026年4月~9月)販売台数が前年同期比24%増の1万6798台と、過去最高の販売台数を記録しているという。なぜデビューから20年目を迎えたベテランが、いま「過去最高に売れている」のか?
●文:月刊自家用車編集部
ミニバンでありながら中身は「クロカン」に近い不思議なクルマ
2007年1月に5代目デリカとして市場に投入された現行デリカD:5。その最大のアイデンティティは、登場時から貫く「ミニバンの利便性」と「SUVの力強さ」を融合した唯一無二のパッケージングにある。
一般的なファミリー向けミニバンが室内空間の広さや使い勝手、燃費性能を最優先するなか、デリカD:5はレジャー需要を意識した設計を採用している。
具体的には、リブボーンフレームを採用した高剛性ボディと、本格オフローダーにも匹敵する最低地上高&悪路走破性が与えられたことで、3列シートを備えた利便性の高いミニバンでありながら、足回りやメカニズムの中身は「本格クロカン級」のタフな作り込みとしている。
1980年代のバブル時代に一世を風靡を「デリカスターワゴン」から受け継がれたブレない商品設計が、アウトドア好きやコアな三菱ファンから根強い人気を獲得している格好だ。
2007年に誕生したデリカD:5。リブボーンフレーム構造を採用した高剛性ボディと高い最低地上高を備えるなどで、「ミニバン×本格オフローダー」という国産車唯一無二のジャンルを切り拓いた。
2019年の大規模商品改良で中身を一新。定番ミニバン勢とも渡り合える上質感を獲得
そんなデリカD:5だが、登場から10年以上が経過した2019年に大きな転換期を迎える。
もともとデリカD:5は、販売面では同クラスのミドルミニバンになるトヨタ・ノア&ヴォクシー、日産・セレナ、ホンダ・ステップワゴンといった強力なライバルに押され気味で、ミドルミニバンとしては「知る人ぞ知るマニアックで地味な存在」にとどまっていた。
そんな流れを2019年に実施した大規模な商品改良が一変させる。
まず三菱のデザインコンセプトである「ダイナミックシールド」や特徴的な縦型マルチLEDヘッドライトを採用することで、一目で違いがわかるエクステリアへと一新。
さらに、パワートレーンは大幅な改良が施された2.2Lクリーンディーゼルエンジンと新開発の8速ATが組み合わされ、低速から力強いトルクを発揮しつつも、静粛性とスムーズな走行フィールを確保。予防安全技術「e-Assist」の導入やインパネ周りの上質化など、キャビンのクオリティも大幅に底上げされた。
この大規模改良によって、無骨でタフなキャラはそのままに、上質で先進的なイメージがプラスされた上に、パワートレーンの大幅強化もあって走行性能も向上するなど、オールラウンドで活躍できるミニバンへと大きな変貌を遂げている。
その結果、従来のコアなファン層にとどまらず、それまで定番のミドルミニバンを選んでいた一般ファミリーや都市部のユーザーからも注目を集めることになったのだ。
2019年のビッグマイナーチェンジでは、内外装の雰囲気もイメージチェンジ。キャビンまわりの使い勝手が向上したほか、タフでスタイリッシュな顔つきに変貌を遂げたことで、その魅力を大きく高めている。
2.2Lクリーンディーゼルターボと8速ATの組み合わせは力強く、長距離ドライブの余裕も高まっている。※画像は2019年モデル
2026年の商品改良で三菱自慢の「S-AWC」を新採用。走りの完成度はついに頂点へ
そんな大きな進化を遂げたデリカD:5だが、2026年1月に行われた商品改良でさらに魅力向上が図られた。
まず内外装のリファインとして、フロントグリルや前後バンパーのデザインを変更し、足元には新採用のホイールアーチモールや18インチアルミホイールを配置して、迫力感をさらにアップ。キャビンまわりも8インチカラー液晶のディスプレイメーターを採用し、先進性と視認性を大幅にアップさせている。
そしてこの時の最大のハイライトになるのが、三菱独自の車両運動統合制御システム「S-AWC(Super All Wheel Control)」が新たな投入されたことだ。
四輪の駆動トルクや制動力を自在に制御するS-AWCを搭載したことで、オンロードでの操縦安定性や旋回性が向上しただけでなく、悪路や雪道での走破性が一段と強化された。さらにドライブモードとして「ECO」「NORMAL」「GRAVEL」「SNOW」という4タイプを選択可能とし、どんな路面状況であっても安心感のある走りを提供できるようになっている。
長年熟成されてきた頑強な基本骨格に最新の電子制御技術が融合したことで、クルマとしての完成度は極限まで高められたといえるだろう。
2026年1月の商品改良でさらなる魅力を獲得。内外装のリファインに加え、先進の四輪制御技術「S-AWC」を搭載し、オールラウンドミニバンとしての完成度を大きく高めている。
20年目にして「過去最大」の販売台数を記録した理由
そんなオンリーワンのキャラクターもあって、じわじわと存在力を高めてきたデリカD:5だが、2025年度の国内販売台数は2万6379台に達し、発売翌年の2007年度の数値を上回って過去最高を記録した。
そして、2026年1月からの最新改良モデルの実績が反映された2026年度上期の販売台数も、前年同期比24%増(1万6798台)を記録。これは2期連続で過去最高を更新したという結果になる。なお2020年度以降からの実績でも、6年連続で前年同期を上回り続けるという異例の快進撃を続けているとのことだ。
デビュー20年目にしてピークを迎える異例の販売実績は、近年のアウトドアブームによる追い風だけではなく、時代のニーズに合わせて走りとクオリティを着実にアップデートしてきた結果だろう。
また、グレードのラインアップを高付加価値寄りのグレード設定へとシフトさせた「戦略の妙」も唸らせられるポイント。
2019年の改良時に安価なガソリン車を廃止し、比較的高価なディーゼル車のみのラインナップとしたことで価格帯は上昇。最新改良でも装備強化や四輪制御技術「S-AWC」を追加している。これほどの機能があれば価格も上がるのも仕方なく、最新モデルは必然的に上級グレード中心の構成になっている。ただこの選択は大当たりのようで「最上級の仕様でタフなカーライフを楽しみたい」というユーザーの指名買いに繋がっている。
大幅リファインされた後期型は、装備水準の強化に加え、内装まわりの加飾レベルも大きく向上した。それ以前のデリカD:5に比べると「上質で先進的」な魅力を持つオールラウンドミニバンへと洗練されたことで、一般ユーザーからの注目度が一気に高まっている。※画像は2026年モデル
2026年1月からの現行最新モデルは、走行性能やデザイン、安全性能のすべてを一段と進化させ、最終進化系にふさわしい完成度を獲得したことが特徴。価格は451万円からと前期型の時代からは大きく上がってしまったが、それに見合う性能と機能が与えられているのは間違いない。
また、現在の中古車市場でデリカD:5の人気が「マニア的」と言えるほど高水準で維持されていることも見逃せない。2007〜2018年式の初期から中期のモデルでもリセールはかなり強いのだが、2019年以降の後期から人気はそれ以上。1~2年落ちの高年式帯は極めて強気な相場になっている。走行が少ない個体ともなれば、新車価格とそれほど変わらない水準で取引されるのも珍しくないほどだ。
この「値崩れしにくい」という状況も、ユーザーの財布の紐を緩める理由になっているのは間違いなく、結果的に新車の好調な販売台数を下支えする好循環を生み出しているといえるだろう。輸入車のプレミアムモデルでは「最新」こそ「最良」という言葉も聞くが、デリカD:5もそんなイメージが生まれつつある。
目の肥えたユーザーにとって、いまのデリカD:5は「代えの効かない存在」
世の中には広くて快適なファミリー向けのミニバンが溢れているが、悪天候の高速道路でも、雪深きゲレンデへの道中でも、荒れたキャンプ場へのアプローチでも、乗員全員と大量の荷物を乗せて「確実に目的地まで運んでくれる」という安心感を提供できるミニバンは、国産車、輸入車を見渡してもデリカD:5の他に見当たらない。
熱心なファンの間では「そろそろ次期モデル(デリカD:6?)が登場するのではないか」という噂も絶えないが、電動パワートレインへのシフトが予想される次期型に対し、頑丈なボディ骨格に力強いクリーンディーゼル、完成されたS-AWCを組み合わせた現行D:5の後期モデルは、なかなか色褪せないことが予想できる。
ミニバンでアウトドアシーンを遊び倒したいというユーザーたちにとって、もはや代えの効かない存在として強い輝きを放ち続けるはずだ。
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