
9月7日から先行予約が開始されたSUBARUの新型SUV「レイバック」。ベースモデルのステーションワゴン「レヴォーグ」との違いはどこにあるのか? プロトタイプのステアリングを握ることができたので、その模様をお届けしよう。
●文:川島茂夫 ●写真:澤田和久/株式会社SUBARU
操舵に忠実に、かつ穏やかに回頭し、神経質な反応がなく、タフで懐深いフットワーク
機能に関わるSUVの条件は大きくはふたつある。ひとつは悪路走破性、もうひとつはパッケージングである。前者は特殊な条件下での実用の道具としてのSUVの存在理由そのもの。もうひとつも実用性に関わるのだが室内高を高く、荷室容量を配慮したキャビンデザインにしている。最低地上高の増加以上に高い全高設定になるモデルが多いのもこのためだ。
レヴォーグの新バリエーションとして開発されたレイバックは車体パッケージングはレヴォーグと共通。フロントマスクのデザイン変更等で全長が15mm伸びているが、キャビン周りはレヴォーグと共通であり、室内寸法も同様だ。
最低地上高はレヴォーグに対して55mm増の200mm。装着タイヤ半径がレヴォーグ(215/50R17)より30mm弱拡大するのでサス設計による最低地上高増は約25mmという計算である。
たった25mmだがサスのジオメトリーにすればストローク時のタイヤ接地角制御が理想値から離れてしまう。車高が高くなってもジオメトリーを正当にするには取り付け角やアーム長などサス本体の設計変更が必要であり、レイバックのサスもレヴォーグから変更された。もっとも完全新設というわけでもなく、クロストレック用をベースに開発されたもの。最低地上高の値が同じなのも納得できる。
ただ、最低地上高とサスの構造的な変更だけではなくフットワークの方向性がレヴォーグと異なるのも注目すべき点である。一言で済ませるなら乗り心地をより重視したセッティングとなるが、ハンドリング面でも御しやすく安心感の高い特性を狙っている。運転ストレスの軽減はクロストレックやインプレッサ以降、掲げられたスバルのハンドリングのテーマであり、レイバックも同様である。
試乗コースは比較的タイトなコーナーの連続するワインディング。アンダーステア傾向が目立ちやすいコースであり、レイバックも鼻先軽くヒラリという具合にはいかない。それがいい。あくまでも操舵に忠実にかつ穏やかに回頭し、神経質な反応がない。狙ったラインに乗せるために操舵量に神経質になる必要もない。挙動の揺れ返しやオーバーシュートも抑えられている。こういった特性はコーナリング中の減速も容易く、これもラインコントロール性と安心感では有利なポイント。
この試乗コースには途中大きなうねりなど路面の荒れている部分もあり、不用意な速度で入ればフルバンプで跳ね上げられる。がしかし、ラインは乱れない。さすがに一瞬の衝撃はあったものの、すぐに平常を取り戻す。タフで懐深いフットワークでもある。
サスチューニングの要点のひとつは体感ロールの減少。要するに高くなった車高と重心高をドライバーに気取らせない特性。サスチューンそのものはさほどハードではなく、スポーティ売りのモデルに比べるとロールの絶対量も大きめだが、伸び上がるような印象がない。外輪側を沈ませるようなロール感覚であり、定常円旋回中はロール軸の前下がりも意識しない。前後輪共に同じように沈み込ませているのだろう。
沈み込みストローク使いの上手さやストローク速度の抑制は乗り心地の向上にも繋がるが、車軸周りの細かな振動や揺動も少ないので肌触りがいいようなすっきりとした乗り心地に仕上がっていた。
フットワーク全般の個人的な印象ではレヴォーグSTIスポーツe-チューン仕様のコンフォートモードに近く思えた。
搭載パワートレーンはレヴォーグの標準系と同じ1.8L水平対向4気筒ターボ。低中回転域の力強さと低負荷域での扱いやすさ、ターボらしい高回転のパワーを上手にまとめた汎用性の高さが特徴。悠々とした広さはないが、大人4名が長時間のツーリングを楽しむに十分なキャビンスペースもある。
4WDシステムはクロストレックやフォレスター、レヴォーグと同様の電子制御型を用い、リア駆動系容量も同様。ただし、クロストレックやフォレスターが採用する悪路特化型駆動力制御のXモードは今のところ採用されていない。この辺りはオフロードのイメージを余り濃くしないためとのこと。腰高感やクラッディングを殊更に強調してしない外観も然り。スポーツワゴン「レヴォーグ」というブランドのこだわりでもある。
とはいえ実態はクロストレックと同カテゴリーの上位設定モデルなのは間違いない。レヴォーグ由来の高性能をベースにするならダートやラフロードも含めた全天候全路面対応型ツアラーと見るのが一番実態に近い。SUVの標準系ではないが、四季を通して旅を楽しむユーザーには期待の一車だ。
■SUBARUレイバック(プロトタイプ)主要諸元
・全長×全幅×全高:4770mm×1820mm×1570mm
・ホイールベース:2670mm
・トレッド前/後:1560mm/1570mm
・最低地上高:200mm
・車両重量:1600㎏
・乗車定員:5名
・最小回転半径:5.4m
・搭載エンジン形式:CB18
・搭載エンジン種類:1795cc水平対向4気筒DOHC直噴ターボ
・搭載エンジン最高出力:177PS/5200-5600rpm
・搭載エンジン最大トルク:300Nm/1600-3600rpm
・燃料タンク容量:63L
・燃料種類:無鉛レギュラーガソリン
・サスペンション前/後:ストラット/ダブルウィッシュボーン
・ブレーキ前/後:ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク
・タイヤサイズ:225/55R18
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(レヴォーグ)
好評の特別仕様車を1.8L車にも設定 昨年12月に2.4Lターボ車に設定された特別仕様車「STI Sport R-Black Limited」を1.8Lターボ車にも設定。内容としては「STI Spor[…]
レヴォーグ:モデル概要〈見た目はキープコンセプトながら、中身はまるで別物に進化〉 初代モデル(先代)の大成功を引き継いで登場した現行レヴォーグ(2代目)。エクステリアはキープコンセプト路線を採用したた[…]
スバル自慢の正統派ステーションワゴン。2023年にはSUV色を強めたレイバックも追加 2020年秋にデビューした現行レヴォーグは、レガシィの系譜を受け継ぐステーションワゴン。走りの良さや充実の装備機能[…]
エクステリア&インテリアデザインの変更を実施 今回実施された改良では、一部グレードのインテリアデザインを変更。「Smart Edition EX」には「GT-H EX」のインテリアを採用、「Black[…]
サスチューンが柔らかくなったことが高評価。いまやレイバックが一番人気のグレード 2020年秋にデビューした2代目「レヴォーグ」は、手ごろなボディサイズに流麗なスタイリングが楽しめるスポーツワゴン。グロ[…]
最新の関連記事(スバル)
静粛性の高さを強く実感。ターボは軽快さ、S:HEVは落ち着き感を重視した味付け 用意される3つのグレードは、上級かつ中心グレードとなる「Premium」、唯一のターボグレードとなる「SPORT」、アウ[…]
故障した回路に関連する気筒のみを休止させる機能を追加 「SUBARU BRZ」は、スバル伝統の水平対向エンジンを搭載したFR(フロントエンジン・リアドライブ)レイアウトのピュアスポーツカー。 2012[…]
P-1(すばる1500) 現在の社名の原点ともなった幻の名車 P-1の制作は1951年頃、中島飛行機を母体とする富士精密工業の直4エンジンを搭載した乗用車を、富士自動車工業をはじめとする複数の会社の合[…]
燃費と加速、2つの魅力がさらに高まった最新ターボを搭載 まず「スバルのターボ」と言えば、多くのユーザーが燃費を気にすると思うが、今回の約200kmのドライブで計測したところ、車載計の数値はWLTCモー[…]
走行性能の強化に加え、インフォテインメントシステムまわりも大幅な進化 スバル・アウトバックは、乗用車の快適性とSUVの機能性を融合させたクロスオーバーSUV。歴代モデルはその強みを磨き上げ続けたことで[…]
人気記事ランキング(全体)
太陽光を活用した電源システムで、電力の心配から解放される 「ミニチュアクルーズ ATRAI SV」の大きな特徴のひとつが、標準装備されるSHARP製225Wソーラーパネルだ。車両のルーフにスマートに装[…]
忘れがちなタイヤの空気圧。最悪の場合は事故の原因に… 普段、やや忘れがちなタイヤの空気圧の存在。走行時に不安定な挙動を感じて初めて「もしかしたら空気圧が減ってる?」と、ちょっと不安に感じることもあるか[…]
シャンプーで築き上げた“本当によく落ちる”の実績 カーメイトの『本当によく落ちる水アカシャンプー』は、2011年にC63ホワイト&ホワイトパール車用とC64ダーク&メタリック車用がデビュー。 水アカだ[…]
車載クーラー標準装備で夏も快適。「ツェルト キリマ」 12V車載クーラーを標準装備しているので外部電源を必要とせず、大容量サブバッテリーで駆動可能なこのエアコンは、暑い夏の夜でも快適な車内環境を保つ。[…]
樹脂パーツの劣化で愛車が古ぼけた印象に…。でもあきらめないで! いつも目にしている愛車が、なんとなく古ぼけた感じに…。それ、樹脂パーツの劣化が原因かもしれない。最近の車種は、フェンダーやバンパー、ドア[…]
最新の投稿記事(全体)
ミニバン感覚で普段使いできるキャラバンに日産系キャンピングカープロショップが本格派キャンパーに仕立てる! クラフトキャンパー スペースキャンパーNB-COOLs(以下スペースキャンパーNB-COOLs[…]
【1990 ランドクルーザープラド70系】廉価かつ高性能を両立したベーシック4WDへ 1985年にヘビーデューティのランドクルーザー70系に追加された4気筒専用ショートボディのワゴンがプラドのルーツ。[…]
新開発のターボ+48Vモーターを組み合わせた最新ハイブリッドを採用 2015年の国内導入、ジープブランドのコンパクトSUVとして発売されているレネゲード。これまでの国内累計販売台数は2万7000台を超[…]
静粛性の高さを強く実感。ターボは軽快さ、S:HEVは落ち着き感を重視した味付け 用意される3つのグレードは、上級かつ中心グレードとなる「Premium」、唯一のターボグレードとなる「SPORT」、アウ[…]
圧倒的なドア大開口「ミラクルオープンドア」が高い評価を獲得 ダイハツ「タント」は、圧倒的に乗り降りがしやすくなるセンターピラーレス構造のスライドドア「ミラクルオープンドア」を武器に、人気を集めているス[…]
- 1
- 2