
スバル最新のBEVとして登場する新型「トレイルシーカー」。トヨタとの協業で培った電動技術に、スバル伝統のSUV性能を融合させた注目の1台だが、正式発表に先駆けてプロトタイプモデルを、雪上試乗する機会が訪れた。実用性を極めたパッケージングと、進化した4WD性能がもたらす走りの実力は如何に?
●文:川島茂夫 ●写真:SUBARU
「実用レジャーワゴン」を目指した設計思想。ソルテラとの違いは明白
トヨタとの協業によるBEV(電気自動車)として2022年に誕生した「ソルテラ」。昨年7月にはニューヨークで「アンチャーテッド」が世界初公開され、そして今回、第3のモデルとして「トレイルシーカー」が登場した。
これら3台をスバルの内燃機関車に当てはめると、ソルテラがフォレスター、アンチャーテッドがクロストレック、そしてトレイルシーカーがアウトバックに相当する。事実、トレイルシーカーはスバル車全体のフラッグシップとして開発されている。
全長☓全幅☓全高は4845☓1860☓1670mm。荷室を中心としたリヤセクションを拡大することで、スバル車最大級の荷室容量を確保。ワゴンシルエットを採用することで、実用性も考慮したパッケージングとしている。
だが、実車を前にしても、過度な装飾で格上の存在感を誇張するような印象はない。パネルで覆われたグリルや独特のランプ形状にBEVらしさは宿るが、全体としては未来感よりも実用性を重視した、真面目なファミリー&レジャー向けSUVという趣だ。
ダッシュ中央部に大型ワイドディスプレイを配置。水平基調のデザインを採用するなど、居心地の良さを意識した設計も見どころ。
そのキャラクターは、ソルテラやフォレスターと比較するとより鮮明になる。
プラットフォームを共用するソルテラとはホイールベースが共通で、全幅なども近いが、全長はトレイルシーカーの方が155mm長い。これは主にキャビン後半のデザインによるものだ。
フォレスターとの比較では全長が190mm長く、ホイールベースも180mm上回る。エンジンルームを短縮できるBEVの利点を活かしたこともあって、キャビン容量はかつての頂点モデルであるアウトバックさえ凌駕している。
直立気味のリヤゲートや、後端まで伸びやかなルーフラインは、後席の開放感と積載性を優先した結果。スポーティなソルテラに対して、トレイルシーカーは実務的なレジャーワゴンといった感じだ。実はこの対比は、クロストレックとフォレスターの関係性にも似ている。
雪上でも揺るがない安定した走りに、スバルらしさを感じる
メカニズム面では、昨年改良されたソルテラの最新仕様がベースとなる。バッテリー容量やFWD車のスペックは共通だが、AWD車の後輪モーターは88kWから167kWへと倍増され、そのシステム最高出力はソルテラを28kWも上回る280kWに達している。0-100km/h加速は車体の拡大をものともせず、0.4秒速い4.5秒という俊足を見せつける。
今回の試乗の舞台は雪道。その狙いは、スバルが誇る悪路踏破性の一端を、過酷な状況で確かめることにある。最低地上高はソルテラ同様、クラス最大級の210mmを確保。これは、このクルマがいかに「道を選ばないこと」を重視しているかの証左だろう。
一世代前のソルテラと比べると、前後のeAxleやインバータ、バッテリーパックなどの改良により出力性能は向上。システム全体での損失低減が図られたこともあって、一充電航続距離も大きく拡大している。
試乗コースの路面は圧雪からアイスバーン、さらには固まったシャーベットが散乱する悪条件。しかし、トレイルシーカーはそれらを力強く圧し潰し、SUVらしい安心感をもって進んでいく。
BEVは車両重量がネックになりがちだが、重さが仇となる場面はなかった。むしろ、電動駆動ならではの緻密なトルク制御が功を奏し、ペダル操作に忠実な駆動力や、X-MODEによる空転抑制などのおかげで、意のままのコントロールを実現している。
スバル独自のAWD技術がもたらす走破性の高さは、BEVになっても健在。電動駆動ならではの緻密な制御が可能になったことで、扱いやすさはさらに高まっている。
滑りやすい路面でも車体挙動は極めて安定しており、進路の修正も最小限で済む。スバル伝統の「扱いやすく安心な走り」が、ツインモーター4WDによってさらなる高みへと引き上げられた印象だ。
WLTCモードでの一充電航続距離は700km前後を確保。リアルワールドでは実質八掛けと見込んでも、500km以上は走ってくれるはずなので、一般的なレジャー用途には十分対応できるだろう。
試乗コースの路面コンディションは圧雪、アイスバーン、シャーベットなど冬期に遭遇するだろう状況が揃っていたが、まったく苦にすることなく走破してくれる。ペダルコントロールに対するトルクの追従感も優秀だ。
タブレット型のメーターや異形ステアリングなど、運転席周りには先進性が漂うなど、最新BEVらしい部分も目立つが、このクルマの本質は「大人4人が快適に過ごし、景色を楽しみ、道具を積み込む」という極めて堅実な設計にある。
夢のような近未来像ではなく、現実の使い勝手を追求した姿勢が印象的。今回の雪上試乗で実感したのは、厳しい状況だからこそ光る信頼感。奇をてらわず、実用性を軸に選んでも後悔しない、非常にバランスの取れた1台に仕上がっている。
シフトやドライブモードのセレクターは、運転席そばのコンソール部に集約。
メーターはステアリング奥に配置されるアイランド型。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(スバル)
輸出自主規制のなか、Zやセリカに続いたスバルの対米戦略車 妥協なく理想を追求した商品を標榜するのはたやすい。しかしその実現は難しい。なにしろ理想の追求には、カネもかかれば時間もかかる。本当は経営効率を[…]
待望のブラック系特別仕様車が誕生 今回導入された「Limited Black」は、e-BOXER(2.0L直噴エンジン+モーター)搭載の「Limited」をベースとした特別仕様車。 エクステリアには、[…]
スバル新型「ゲッタウェイ」 ファミリー層をターゲットに3列シートを採用 公開された新型ゲッタウェイは、トヨタとの共同開発から生まれた3列シートのミッドサイズe-SUV。「ソルテラ」「トレイルシーカー」[…]
P-1(すばる1500) 現在の社名の原点ともなった幻の名車 P-1の制作は1951年頃、中島飛行機を母体とする富士精密工業の直4エンジンを搭載した乗用車を、富士自動車工業をはじめとする複数の会社の合[…]
2.4L水平対向ターボ×シンメトリカルAWD 新世代実験車両として進化 SUBARUがスーパー耐久シリーズ2026開幕戦から投入するのは、新車両「SUBARU HIGH PERFORMANCE X V[…]
最新の関連記事(ニュース)
ビックチェンジで、欧州での販売体制を強化 2021年の登場以来、欧州でもトヨタの最量産モデルとして、2025年には年間20万台という販売台数を記録しているヤリスクロス。今回、欧州市場で実施されたアップ[…]
高速有鉛有鉛フェスティバルで会いましょう ついに開催日が近づいてまいりました!第一回「高速有鉛フェスティバル」パトカー、救急車、タクシー、旧車、ネオクラシック、USDM(北米仕様車)たちが大集合!高速[…]
クルマ好きが1日楽しめる、春の名物イベント。家族向けコンテンツも充実 「シン・モーターファンフェスタ2026 in 富士スピードウェイ」は、国内外の最新モデル50台以上に試乗できる新型車大試乗会や、1[…]
乗る人すべてを主役とする「全席特等席」を体感 今回実施されるキャンペーンは、1955年の初代誕生から16代目を数えるクラウンが、静粛性や上質さを追求した「クラウンネス」を軸に、多様な価値観に応える現代[…]
BMWの美学が凝縮された特別なMパフォーマンスモデル 特別仕様車「FROZEN EDITION(フローズン・エディション)」は、BMW X1 M35i xDrive、BMW X3 M50 xDrive[…]
人気記事ランキング(全体)
「キャロル」はマツダ・イズムの塊だった 初代の「キャロル(KPDA型)」の発売は1962年です。広島の地でコルク製品の製造業から始まった「東洋工業」は、戦時中に軍の下請けで3輪オートバイの製造を始めた[…]
「未来の国からやって来た」挑戦的なキャッチフレーズも話題 初代の「A20/30系セリカ」は1970年に登場しました。ちょうどこの時期は、モータリゼーション先進国の欧米に追い付けという気概で貪欲に技術を[…]
日常使いと車中泊を両立する絶妙なパッケージング 今回紹介するのは、キャンピングカーや福祉車両の製造販売を手掛ける老舗、東和モータース販売が仕立てたコンパクトバンコンバージョンの「ツェルトNV」だ。この[…]
割り切った機能とシンプルなデザイン、そして手頃な価格で購入を即決! 車内には、カーナビなどの時刻表示はあるものの、小さくて視認性が悪く、ちょっと不便だと感じていた筆者。車載用に、何か良いデジタルクロッ[…]
見えない変化を“数値で把握する”という新習慣 どれだけ先進的な安全装備が搭載されていても、車両の状態そのものを把握しておくことはドライバーにとって重要な要素だ。とりわけタイヤは、路面と唯一接地している[…]
最新の投稿記事(全体)
活用できていない車内のUSB。グッズを探しにカー用品店へ カーグッズとひと口に言っても、その種類は様々で、車種専用品から車種を問わず対応するタイプのものや、季節に合わせた商品など、選択肢は星の数ほどあ[…]
カスタムの王道ハイエースに新風を吹き込む一台 キャンピングカーや車中泊を楽しむユーザーにとって、トヨタのハイエースは不動の定番モデルとして君臨している。広大でフラットな室内空間、長距離移動でもへこたれ[…]
軽ワゴンの常識を覆す、まるで巨大ソファのような極上空間 今回紹介するのは、香川県に拠点を構える老舗ビルダー、岡モータースが手掛けた軽キャンパー「ミニチュアクルーズ」だ。ベースとなっているのは、広い室内[…]
ビックチェンジで、欧州での販売体制を強化 2021年の登場以来、欧州でもトヨタの最量産モデルとして、2025年には年間20万台という販売台数を記録しているヤリスクロス。今回、欧州市場で実施されたアップ[…]
足場とポイントの確認が「壊さない」第一歩 まず第一のポイントは、「足場の確保と正確なジャッキアップ」だ。傾斜地や砂利の上を避け、平坦な場所で作業することは大前提だが、車種ごとに設定されたジャッキアップ[…]
- 1
- 2
































