車名の由来は「イナヅマ」の英語。トヨタ車初,当時のハイパフォーマンス車の証とも言えるパーツを搭載した名車を紹介。

旧車の世界においても、人気マンガ「頭文字D」の影響は大きく、ゲームやアニメだけに留まらず、実車のコレクションにも及んでいます。今や旧車のマニアでもない一般の層にもファンがいるといってもいいでしょう。そんなファンたちから絶大な人気を誇っているのが「AE86」です。もはや「レビン/トレノ」は、多くの人に知られているクルマのひとつです。でもこの人気車には、元祖が存在することを知っている人はそう多くないのではないでしょうか。
ここでは、その「レビン/トレノ」の元祖である「TE27」系のカローラ/スプリンターについて話してみたいと思います。

●文:往機人(月刊自家用車編集部)

雷の語源を持つ「レビン/トレノ」の元祖とは?

AE86系の車輌は、当時の販売チャンネルの関係から、「カローラ・レビン」と「スプリンター・トレノ」に分けられていました。そしてその分類は「AE86」が始まりではなく、その先代の「TE27系」の世代に始まったものです。そもそも、「レビン/トレノ」というグレード名は、1972年に生まれました。

大衆車としてトヨタの販売台数を牽引する車種の地位を確立していた「カローラ」のホットモデルとして、それ以前にスペシャリティカーとして話題になっていた「セリカ」に搭載された高性能なツインカムエンジンを移植されたのが、トヨタのコンパクトスポーツ、「レビン/トレノ」というわけです。

車名の由来は、「レビン=Levin」が英語で「雷光」、「稲妻」を意味する言葉で、「トレノ=Trueno」はスペイン語で「雷鳴」という意味の言葉。ともにカミナリが語源というわけです。稲妻のように速く駆け抜け、雷鳴のような勇ましい排気音を奏でるかのうようなイメージ、ということなのでしょう。

それまではツインカムの高性能エンジンは、高級車の入り口であるスペシャリティカーまでが採用の下限でしたが、普及価格帯の車種に初めて搭載されたのが、この「TE27型」の「カローラ・レビン」と「スプリンター・トレノ」でした。

憧れの存在だったツインカムエンジンが、普及価格帯のカローラとスプリンターの派生車種で実現されたことは、当時の市場でもかなりのインパクトを伴って受け入れられました。

実際に出力で比べると、ベースグレードに搭載された最高クラスの性能の「T-B型」が1.4リッターで95psなのに対して、「レビン/トレノ」に搭載の「2T-G型」は1.6リッターで115psと、当時の2リッターエンジン並みか、それ以上の性能を発揮していました。

【1972年式 カローラ レビン SPEC】
●全長×全幅×全高:3945×1595×1335mm ●ホイールベース:2335mm ●トレッド(前/後)1270/1295mm ●車両重量:855kg ●乗車定員:5名 ●ミッション:5速MT ●駆動方式:FR ●エンジン:1588cc水冷直列4気筒DOHC ●ボア☓ストローク:85.0☓70.0mm ●最高出力:115PS/6400rpm ●最大トルク:14.5kg-m/5200rpm ●サスペンション(前/後):独立懸架マクファーソンストラット式/半楕円リーフ式 ●ブレーキ(前/後)ディスク/リーディングトレーリング ●タイヤサイズ:175-70HR13

搭載されるエンジンは2T-G型。1407ccのT型エンジンをベースに、ボアを5mm拡大してボア×ストロークを85.0mm×70.0mmに変更、技術提携をしていたヤマハ発動機が開発したDOHCヘッドを組み合わせたユニットになる。純正キャブレターは40φのソレックスツインチョーク2連式だった。

最高出力は115ps/6400rpm、最大トルクは14.5kg-m/5200rpmを発生。パワーウエイトレシオは7.43kg/psで最高速度は190km/h、0-400m加速も5人乗車でも16.3秒を記録。パワフルなエンジンを乗りこなす、軽量なボディとの組み合わせは決してバランスが良いとは言えなかったが、じゃじゃ馬的な性格も魅力のひとつと言われていた。

当時のハイパフォーマンス車の証、オーバーフェンダーを装着

外観上でベースグレードとの違いが明確に分かるポイントが“オーバーフェンダー”です。当時は高性能なエンジンのと搭載とともに、ワイドなタイヤを装着することがホットな走りの象徴でした。そのワイドなタイヤを収めるためのワイドな後付けのフェンダーを装着して、それを高性能のアイコンとしてアピールしていたわけです。

これは当時のツーリングカーレースでおこなわれていた手法を採り入れたもので、そのイメージを市販車に持ち込み、そこから一般のカスタムシーンへと浸透していきました。

ちなみにトヨタ車として初めてオーバーフェンダーを採用したのがこの「TE27型・レビン/トレノ」です。オーバーフェンダーの装着でベースグレードより90mmワイドになっていますが、それでも今の軽自動車の規格より20mmほどはみ出る程度の車幅しかありません。

その他のベースグレードとの違いは、専用に「用意されたエンブレムとオレンジとオリーブの車体色くらいです。

TE27型・レビン。オーバーフェンダーの装着でベースグレードより90mmワイドを実現。TE27レビン/トレノの特徴であるオーバーフェンダーはFRP製だが、一部初期モデルにはスチール製もあったという。

カスタムベースとしても人気を集めたTE27型レビン/トレノ

「TE27型・レビン/トレノ」はその高性能イメージから走りを意識する層に支持され、レースへの参戦や、カスタムベースとしても重宝されました。

特に当時としてはまだ貴重だったツインカムエンジンはチューニングの対象としても人気を高めて、TRDをはじめ多くのチューニングパーツがリリースされました。その中でも当時人気が高かったのは、市販のボアアップ用ピストンを使用して排気量を1750ccに上げる「イナゴ」チューンでした。

シリンダーをボーリングしてピストンを交換するだけという比較的お手軽に実行できる点と、ツインカムらしい高回転が活かせる点が支持されたようです。

TE27型・レビン。基本形状はセダン系と変わらないが、メーターパネルはセダンの2連に対し、レビンは3連。右がスピード、左がタコ、中央には水温/燃料計が備わっている。

TE27型・レビン。純正ではハイバックのセミバケットシートが装着されている。

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