「日本のサプライヤーが世界に先駆けて開発」レクサス車に搭載されて以降、世界の上級車がこぞって採用。アウディA8はなんと64個も…。│月刊自家用車WEB - 厳選クルマ情報

「日本のサプライヤーが世界に先駆けて開発」レクサス車に搭載されて以降、世界の上級車がこぞって採用。アウディA8はなんと64個も…。

「日本のサプライヤーが世界に先駆けて開発」レクサス車に搭載されて以降、世界の上級車がこぞって採用。アウディA8はなんと64個も…。

【クルマのメカニズム進化論 Vol.3】ヘッドライト編
初期の自動車は石油ランプを用いていた。それがアセチレンランプへと変わり、やがて電気式前照灯の時代へと入り、目覚ましい進化を遂げた。精密な配光が可能なLEDの先にレーザーの時代が見えてきた。
※この記事は、オートメカニック2019年1月号の企画記事を再編集したものです。

●文:オートメカニック車編集部

自動車が登場した初期は石油を燃やすランプを使用した。次に炭化カルシウムと水を反応させ、発生するアセチレンを燃焼させて光を得るアセチレンランプが用いられた。

1900年初頭、石油ランプからアセチレンランプへ進化

ガソリンエンジンを搭載した自動車が実用化された初期の時代は石油ランプが用いられていた。1900年代に入ると炭化カルシウムと水を反応させて、発生するアセチレンガスを燃焼させて光を得るアセチレンランプが用いられるようになった。

1879年、エジソンが白熱電球の実用化への道を開いた。開発当時は寿命が短いものだったが、1920年代に入って自動車用として採用されるようになった。それ以後、自動車の前照灯は電気の時代に突入する。

白熱電球を用いる前照灯は組み立て型、セミシールド型、シールド型へと進化していく。組み立て型は金属製のボディを持ち、レンズを前面に配置したものだが、雨、埃の侵入を完全に遮断することはできなかった。セミシールド型はそれを進化させたもので、1950年代まで用いられた。

エジソンによって発熱電球が実用化へと導かれた。これ以後、ヘッドライトや自動車用照明は電気の時代へと変わっていく。写真は1930年に製造されたメルセデス。

組み立て式ライトは埃や雨の影響を受けた。それを回避するために開発されたのがシールドライト。セミシールドから始まり、オールグラスのシールドライトへと進化する。

シールドビームの時代 組み立て式からオールグラスへ

次に登場したのはオールグラス製の完全なシールド型だった。雨や埃を遮断し、性能にも優れた。アメリカで実用化が始まったものだが、国内では東芝が1955年にオールグラスシールドビームの製造を開始した。少し遡るが、国産ということでは1936年、トヨダAA型には小糸製作所製の組み立て型が採用されていた。

1960年代に入るとヨーロッパでハロゲンバルブを用いるライトが登場する。シールドビームに対して高寿命、高輝度という優れた特性を持っていた。1970年代に入ると国内にもハロゲンライトが導入される。しかしメーカーの標準装備ではなく、ヨーロッパから輸入されたライトがラリーなどのモータースポーツで使用されたり、一部のマニアが換装して使用したものだった。ハロゲンの優位性が知られるとともに、国産メーカーも参入し、次第に製造ラインで装着される標準ライトへと変わっていった。

1990年代に入るとHIDが登場する。高い耐久性と、高い輝度を持つのが大きな特徴だった。次に登場したのがLED。LED自体は弱い光源で、遠くにも光が届きにくい。しかし光源を複数設け、高輝度化することによって、十分な光を遠くまで到達させられるようになる。このライトは小糸製作所が世界に先駆けて開発し、2007年、レクサスLS600hに搭載された。これ以後、世界の上級車のヘッドライトはLED化へと舵を切る。

LEDの進化のスピードは速いものだった。世界初のレクサスの光源の数は3個だったが、2013年に発表されたアウディA8は片側25個、その5年後に発売されたA8の最新型は片側で32個も備えている。

多数の光源がもたらすのは、明るさだけでなく、それを制御することによって、様々なパターンの照射が可能になるということだ。一部の照射を遮断することによって、ハイビームのままでも対向車や人に幻惑を与えないようできる。

1960年代、ヨーロッパでハロゲンバルブを用いたライトが実用化された。シールドビームとのすみ分けが続いたが、次第にハロゲンライトが標準で装備されるようになった。

1990年代に入るとキセノンバルブを用いたHIDが登場。高い照度と優れた耐久性を実現した。開発初期は上級車に用いられたが、軽自動車にも採用されるようになった。

2007年、世界初のLEDを用いたヘッドライトを小糸製作所が開発、レクサスLS600hに採用された。遠方を照射できないとされていたLEDだったが、リフレクターの構造などの革新によって実用化に導かれた。

レクサスLS600hに採用されたLEDヘッドライトの反射板の構造。複雑なリフレクター形状によって、遠方、左右、上下の照射を行った。

アウディA8の旧モデルに採用されていたLEDライト。多数の光源を持つことが大きな特徴で、10億パターンの照射が可能だった。新世代ライトのパイオニアの一台だった。

新しいライトの時代照射に加え情報提供へ

ADB(可変配光システム)といわれるこの手法は、最初は光を遮断するシェードを用いていたが、デジタル制御に変わり、縦型のマトリクスだけでなく、上下、左右の細かい照射制御が行われるようになった。

デジタル制御は前方照射だけでなく、表示装置としても機能する。雨や霧の時に仮想の走行ラインを照射したり、カメラで捉えた交通標識を道路の手前のドライバーの見やすい部分に照射することも可能になる。レーザーライトの登場ももう一つの進化だ。LEDよりも鮮明に光を遠くまで飛ばす。BMWi8とアウディR8が同時期に取り入れ、BMW7シリーズがそれに続いた。

石油ランプから始まった自動車用前照灯は、照らすだけでなく、様々な道路情報を示すビジュアルサポート機器へと変わっていくだろう。

複数の光源を持つことによって実用化されたのがマトリクスライト。照射が必要な部分と遮断する部分を分ける。最新のライトはより細かいデジタル処理が行われる。

次世代の光源として登場したのがレーザーライト。遠くまで鮮明な照射が可能となった。BMWi8が世界に先駆けて採用し、アウディR8も続いた。

最新のアウディA8は片側32個のLEDを持ち、さらにレーザースポットライトを備える。LEDハイビームの2倍の照射距離を持つという。

多くの光源を制御することによって縦方向だけでなく、左右、上下の細部など広範囲にわたって自由に照射エリアを設定できるようになった。図はダイムラーが示した未来予想。対向車や前走車の直前までも照らすことを追求している。

最新のライトはマトリクス機能だけでなく、路面へのビジュアル照射も可能になった。見えにくい車線を仮想表示したり、周辺の標識をカメラで捉え、それと同類のものを路面に表示させることも可能になった。

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