
日産の国内戦略を支える基幹SUVとして、ついに新型キックスが登場した。新型はこれまでのカジュアルな印象から、第3世代e-POWERやe-4ORCEの採用により「走りと質感のプレミアム性」へ大きく舵を切ったことを強みにしているようだ。ここではクルマの魅力やグレードの選び方などをお教えしよう。
●文:月刊自家用車編集部
4グレード、全8モデルのワイドレンジで構成
日産の国内戦略を支える最重要モデルとして登場した新型キックスは、これまでのカジュアルなシティ派SUVという印象から一転し、クラス上の装備機能を投入することで上級志向に舵を切ってきた。
見た目は独創的なスペシャリティ色を強めているが、新世代プラットフォームへの刷新や、日本初投入となる第3世代e-POWERの採用によって、走りの基本性能を劇的に底上げしている。実質的にノートやノートオーラの上位車種の役割も担うポジションであり、日常域から高速域まで動力性能の余裕と、静粛性が与えられたことも、このクラスのライバルたちに対してアドバンテージになるはずだ。
そんな新型キックスで悩みどころになるのは、グレード選びだろう。
従来型は実質1グレード構成に等しい展開だったが、新型は予算や好みに合わせて、4つのグレードが用意されている。すべてのグレードで2WDと新次元の電動4輪制御技術「e-4ORCE」が選べる全8モデルのワイドレンジな構成となり、乗り手のライフスタイルやクルマへの理解度がちょっと試されるようなバリエーションに進化しているのが面白いところだ。
新型キックスのグレード構成は、エントリーを担う「Xシンプルパッケージ」の299万9700円から、最上級となる「G e4OCE」の424万8200円まで、全8モデルをラインナップ。
グレード選びの本命は、新型キックスの魅力を引き出す「X+ e-4ORCE」
そんなラインナップにおいて、注目したいのは以下の2つのグレード。
まず1つ目は、新型キックスが掲げる本来のプレミアムなコンセプトを最もバランスよく体現しているX+ e-4ORCE(388万9500円)。
標準モデル相当のXではOP扱いとなる大画面インフォテインメントシステムなど、日々のドライブで実用度の高い先進装備が最初から標準装着される、内容充実のグレードアップ仕様という位置づけで、さらに新型最大の目玉であるe-4ORCEを組み合わせることで、オンロードでのしなやかで良質な走りと、格上のフラットな乗り心地を存分に味わうことができるのが最大の強みだ。
後述する最廉価仕様のXシンプルパッケージ(2WD)と比べると約89万円高となり、400万円という大台に近づく価格にはなるが、標準装備として追加される先進機能の多さとe-4ORCEの劇的な進化度合いを考慮すれば、ここは出して良い出費、十分に納得のいく価格設定といえる。普段は街乗りが中心のオンロード派であっても、走りの質感にこだわるならば、価格以上の価値をもたらしてくれる1台だ。
X+には、NissanConnectインフォテインメントシステム[シンプル]が標準装着されることも強みのひとつ。なお、Google搭載の上位システムはGも含めてメーカーOPとなっている。
新型キックスに搭載されるe-POWERは、エンジンも含めて従来型から一新された第3世代型に刷新。4WDシステムもより柔軟な動力制御を行うe-4ORCEにアップデートされるなど、新型は走りの質の面でも期待できそう。
割り切りは必要だが、「Xシンプルパッケージ」の300万切りは選ぶ価値あり
Xシンプルパッケージ(価格299万9700円)は、プレミアム志向を強めた新型の中で、コストパフォーマンスを最優先する合理主義なユーザーに知っておいて欲しい1台。
昨今はコンパクトSUVでも高価格化が進む一方だが、本格的なハイブリッドSUVが300万円を切る価格から狙えるのは、かなり頑張っているといっていい。
このグレードは、外装や内装の加飾パーツ、シートの素材といった見た目の仕立てこそ標準モデルのXと共通なものの、俯瞰全周表示モニターや後側方衝突防止支援システム(BSI)といった便利な安全運転支援装備が潔く省略されており、これらをメーカーオプションで後から追加することもできない実質本位の割り切った設定になっている。
注意したいのが、12.3インチの大画面を誇る日産純正のNissanConnectインフォテインメントシステムが装着できないため、後付けのディーラーオプションナビや社外系ナビを別途組み合わせる必要があることと、選べるボディカラーがグレーのみのモノトーン1色に制限されてしまうというベース車特有の厳しい制約があることだ。
しかし、プロパイロットなど走行性能の核心部分は標準装備されており、色やナビにこだわりがなく、新型の優れた基本性能を最も安く狙いたいなら割り切る価値は十分だ。
Xシンプルパッケージはボディカラーは1色のみの設定。選べるのは「ダークメタルグレー」になる。
運転席のスピードメーター画面とダッシュボード中央のナビ画面を1枚の繋がった巨大な液晶パネルのように見せる最新のデジタルコックピット「統合型インターフェースディスプレイ」はX+とGに標準装備、XではOPになる。XシンプルパッケージではOP設定も省略されている。
「4WD=雪国だけのもの」にあらず
また、キックスのグレード選びにおいて、グレード構成と同じくらい頭を悩ませるのが駆動方式の選択になる。
アウトドア趣味を持つ人や、降雪地域に住むユーザーを除けば、一般的にこのクラスでの4WDの選択は非経済的と捉えられがちだが、新型キックスに限っては、雪国のユーザーじゃなくても4WDを積極的に選んでいい理由がある。
キックスは、従来型でも4WD車はしっとりとした良質な乗り味で2WD車を明確に上回っていたが、新型ではその駆動システムがe-4ORCEへとグレードアップ。前後のモーターとブレーキを統合制御するこのシステムは、微妙な駆動トルクの増減や前後配分を緻密に行うことで、コーナリング時の操縦安定性だけでなく、揺れの少ない快適な乗り心地を劇的に向上させてくれる。
その効果の高さはすでにエクストレイルやアリアでも立証済みで、このアドバンテージは日産のクルマを選ぶ大きな理由のひとつにもなっている。2WDと4WDの価格差は従来型の26万円強から34万円弱へと拡大しているものの、ハードウェアの緻密な構成やe-4ORCEへの進化度合いを考慮すれば、オンロードでもその恩恵は絶大で、それを考えれば十分に納得できる価格設定といえる。
走りの質感やプレミアム性にこだわるユーザーであれば、たとえ普段の用途が街乗り中心のオンロード派であっても、この進化した4WD仕様は絶対に選ぶ価値があるだろう。
オススメから外した「X」と「G」には、潜む落とし穴があり
逆に、今回オススメから外したXとGには、購入をちょっと躊躇してしまう弱点がある。
まず標準グレードのX(325万9300円〜)は、オプションを何も選ばない吊るしの状態だと、実は最廉価のXシンプルパッケージと見た目も標準装備内容も大差ない状態にとどまっている。
それなのに、後から上級装備を追加できる設定枠が設けられたというだけで、車両価格が約26万円も上昇してしまっているのは正直もったいない。もし必要な装備をフルオプションで足していこうものなら、最初から充実装備が載っているX+を選んだ方が結果的に安上がりになるという、なんとも中途半端な立ち位置だ。Xシンプルパッケージよりもボディカラーの選択肢が広がる(全5色)とはいえ、積極的に選ぶ理由はかなり薄めだ。
そして最上級のG(389万8400円〜)は、パワーシートや先進の安全機能など上級装備がこれでもかと追加されるのはマルだけど、それ以上に価格の値上がり感が強まっているのが痛い。最高峰のG e-4ORCEになると価格は424万8200円にまで達してしまい、いくら上級志向を強めた新型とはいえ、コンパクトSUVという車格にここまでの金額を支払うのは心理的な抵抗が否めない。
もしここまで予算を出せる余力があるならば、ワンクラス上のミドルサイズSUVであり、日産の本格派であるエクストレイルの存在も確実に視野に入ってきてしまうのが、Gの最も悩ましい弱点になる。
こうして4つのグレードが持つ個性と盲点をそれぞれじっくりと吟味していくと、最終的にX+という選択肢が最もバランスに優れた、新型キックスの真の本命であることが見えてくる。
X+をベースにすると、 Xシンプルパッケージのようなカラー制限も少なくなり、ナビ後付けの手間といった煩わしさもない。GのようにコンパクトSUVとしての適正予算を大きくオーバーしてしまうような心配も薄くなる。
日々の実用シーンで本当に重宝する大画面ナビや各種通信機能、先進安全の拡張オプションといった「プレミアムSUV」を名乗る上で外せない装備が、最も無駄のない価格設定で最初からパッケージングされている。
実質本位に徹したベースグレードを割り切って安く狙うのも悪くはないが、日産がこの新型キックスに込めた本来の「走りと質感のプレミアム」という魅力を、最もストレスなく、かつ高いコストパフォーマンスで日常に引き出せるのは間違いなくX+だ。
新型キックスは納期2か月以上、リセール予想はB+。車両本体目標値引きは7万円だが、基本は3〜5万円とかなり渋い。攻略の秘訣はカローラクロスやヤリスクロスとの競合だ。経営の違う日産同士を争わせ、付属品値引きを含めて10万円前後をもぎ取れたら特上クラスといえる。
| ●新型キックス 主要諸元&価格 | |
| グレード | 価格 |
| X シンプルパッケージ | 299万9700円 |
| X | 325万9300円 |
| X+ | 354万9700円 |
| G | 389万8400円 |
| X e-4ORCE シンプルパッケージ | 334万9500円 |
| X e-4ORCE | 359万9200円 |
| X+ e-4ORCE | 388万9500円 |
| G e-4ORCE | 424万8200円 |
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(日産)
「e-4ORCE」をモデル初採用。日本市場初となる「第3世代e-POWER」も投入 日産自動車が国内戦略を支える新たな最重要モデルとして発表した新型キックスは、従来のカジュアルなシティ派SUVという印[…]
日常使いと車中泊を完璧に両立するジャストサイズ キャンピングカー選びにおいて、多くのファミリー層が直面するのがベース車両のサイズ問題だ。休日のレジャーには大型のキャブコンバージョンが魅力的だが、平日の[…]
「ダットサン・フェアレディ1600」がベースのスペシャリティクーペ 初代の「シルビア(CSP311型)」が誕生したのは、いまから60年も前の1965年です。型式名が表すように、ダットサン「フェアレディ[…]
新型「ナバラ プロ プラグインハイブリッド」と「プリメーラ EV」は、中国から輸出されるという。 フィリピン国際モーターショーで期待の新型を披露 6月4日から開催されているフィリピン国際モーターショー[…]
完成度は高いが、当時は「おじさんのイメージ」でウケが良くなかった… スカイラインシリーズとして5代目にあたる「C210系・スカイライン」は1977年に誕生しました。このモデルは「ジャパン」という愛称で[…]
最新の関連記事(ニュース)
左から初代クラウン RS型、トヨタ スポーツ800 UP15型、トヨタ 2000GT MF10L型、スープラ JZA80型、LEXUS LFAの計5台で参加。 初代クラウンからLEXUS LFAまで、[…]
今週末に富士スピードウェイで開催された、S耐24時間レースの会場内でお披露目されたスバル・アセント。日米貿易合意を受けて施行された国土交通省の認定制度の利用を前提に、国内導入の検討が進んでいることが公[…]
「食・癒・泊」の新商業施設 「富士モータースポーツフォレストテラス」は、富士スピードウェイ(西ゲート)そばに誕生した複合商業施設。 富士の美食をバラエティ豊かに楽しめるレストランの「食」、富士山を真正[…]
超電導液体水素ポンプを世界初採用 トヨタは、将来の市販化を見据えて液体水素燃料や燃焼技術などの開発を続けてきたが、今回の富士24時間レースでは、2025年の最終戦で技術公開された「超電導液体水素ポンプ[…]
新型「ナバラ プロ プラグインハイブリッド」と「プリメーラ EV」は、中国から輸出されるという。 フィリピン国際モーターショーで期待の新型を披露 6月4日から開催されているフィリピン国際モーターショー[…]
人気記事ランキング(全体)
日常使いと車中泊を完璧に両立するジャストサイズ キャンピングカー選びにおいて、多くのファミリー層が直面するのがベース車両のサイズ問題だ。休日のレジャーには大型のキャブコンバージョンが魅力的だが、平日の[…]
これまでのアイテムの不満を見事に解消するアイテムを発見! 少し古めのモデルに乗っていることもあり、最新の車両が当然のように装備している機能が搭載されていないということが多々ある。その1つが、アンビエン[…]
日本の自動車史に燦然と輝く「未来から来たスポーツカー」 1967年、国産初の量産ロータリーエンジン(RE)搭載車として産声を上げたコスモスポーツは、日本の自動車史にその名を刻む伝説のスポーツカーである[…]
車中泊を安心して、かつ快適に楽しみたい方におすすめのRVパーク 日本RV協会が推し進めている「RVパーク」とは「より安全・安心・快適なくるま旅」をキャンピングカーなどで自動車旅行を楽しんでいるユーザー[…]
ジムニーの収納不足を解決する専用バッグ ジムニー(JB64)、ジムニーシエラ(JB74)、ジムニーノマド(JC74)は、乗る楽しさを満喫できる一方で、ティッシュなどの日用品や車検証の置き場所に困ること[…]
最新の投稿記事(全体)
4グレード、全8モデルのワイドレンジで構成 日産の国内戦略を支える最重要モデルとして登場した新型キックスは、これまでのカジュアルなシティ派SUVという印象から一転し、クラス上の装備機能を投入することで[…]
「e-4ORCE」をモデル初採用。日本市場初となる「第3世代e-POWER」も投入 日産自動車が国内戦略を支える新たな最重要モデルとして発表した新型キックスは、従来のカジュアルなシティ派SUVという印[…]
市販国内初のDolby Atmos対応ディスプレイオーディオ「DMH-SF1000」 なんといっても見逃せないのはディスプレイオーディオの「DMH-SF1000」だ。市販国内初の「Dolby Atmo[…]
これまでのアイテムの不満を見事に解消するアイテムを発見! 少し古めのモデルに乗っていることもあり、最新の車両が当然のように装備している機能が搭載されていないということが多々ある。その1つが、アンビエン[…]
日常使いと車中泊を完璧に両立するジャストサイズ キャンピングカー選びにおいて、多くのファミリー層が直面するのがベース車両のサイズ問題だ。休日のレジャーには大型のキャブコンバージョンが魅力的だが、平日の[…]
- 1
- 2





















