
日産の新型キックスの販売が好調な滑り出しを見せている。上位グレードや4WDモデルに注文が集中する理由とは何なのか。最新データとライバル車との比較から、新型キックスが選ばれる魅力を考えてみた。
●文:月刊自家用車編集部(田中) ●写真:編集部
強力なライバルがひしめくカテゴリーで大健闘
国内で最も競争が激しいと言っても過言ではないコンパクトSUV市場において、日産の新型「キックス」(価格299万9700~424万8200円)が好調な売れ行きを見せている。6月17日の発表から1か月半ほど経った8月3日の時点で受注台数1万1000台突破を達成。
上位グレードを中心に注文が殺到し、これまで日産車に乗っていなかった他社ユーザーの取り込みも着実に進むなど、その勢いは本物だ。
ではなぜ新型キックスはこれほどまでにユーザーを引きつけるのだろうか?
ここでは、日産から公開された最新の販売データを中心に分析。さらに、ライバルと目されるトヨタ「ヤリスクロス」「カローラクロス」やホンダ「ヴェゼル」といった強力な競合モデルとの違いを確認しながら、そのヒットの背景と個性を探ってみよう。
7月27日の時点で受注10000台を突破したという。相当な人気っぷりだ。
ヒットの理由は「質感」と「走りの魅力」
販売データの中で最も目を見張るのは、上位グレード(GおよびXプラス)の選択率が実に86%を占めているという点だ。
エントリーグレードの価格設定にこだわった日産側の想定を上回り、ユーザーは自ら進んで高価格帯のモデルを選んでいる。そもそも初期受注はもともとのファンが多くを占め、上位グレードが人気になりがちではあるが、この数字はキックスが単なる「日常の足としてのコンパクトカー」ではなく、「こだわりを持って選ぶ愛車」として評価されていると言っていいだろう。
公開された資料から考えられるヒットのポイントは次の2点だ。
●上質なデザインと高い所有満足度
2トーンカラー比率が全体の44%にのぼる点や、最上級Gグレードで「BOSEパーソナルプラスサウンドシステム」の装着率が60%近くなっていることが象徴的だ。個性や上質さに妥協したくないユーザーの心に、新型キックスが響いていると言えるだろう。
●「e-4ORCE」がもたらす電動走行性能の魅力
また4WD(e-4ORCE)の装着率が35%に達している。先代では30%に留まっていた。従来、コンパクトSUVにおける4WDは「降雪地帯の必需品」としての性格が強かったため、降雪地帯などの地域性によるところが大きかったが、新型キックスではe-4ORCEの割合が積極的に選ばれている。滑らかな加速や圧倒的な静粛性、吸い付くような走破性といった「乗ってすぐ実感できる走りの良さ」が、口コミや試乗を通じて評価を高めているのだろう。
上位グレードかつe-4ORCE搭載モデルが人気なのがよくわかる。
キックスならではの際立つ個性!ライバルとの比較
冒頭でも述べたが、コンパクトSUV市場には各メーカーの実力派モデルがひしめき合っている。そうしたライバル車と比べたとき、新型キックスの立ち位置とアドバンテージはどこにあるのだろうか。「ヤリスクロス」「カローラクロス」「ヴェゼル」と比べてみた。
【主要ライバル車種のキャラクターまとめ】
・トヨタ ヤリスクロス :燃費性能と手頃な価格帯。実用重視だがグレード多様性も魅力
・トヨタ カローラクロス:広いな室内空間と優れた使い勝手が自慢。走りも燃費も優秀
・ホンダ ヴェゼル :クーペライクなデザインとシートアレンジに長けた万能型。RSグレードは立体駐車場にも対応
ヤリスクロスとの違いは「プレミアム感」
ヤリスクロス(価格212万6300~335万5000円)
ヤリスクロスは優れた燃費性能と手頃な価格帯が人気のポイント。走りを磨いたGRスポーツの設定も魅力的だ。その一方で、インテリアの質感や車内空間の広さにおいては、ある程度、割り切った面も見られる。
これに対し新型キックスは、車内空間の広さこそ大差ないものの、インテリアの質感においてはワンランク上を前面に打ち出している。ゼログラビティシートによる快適な座り心地や高精細なインフォテインメントシステムなど、日々のドライブを上質に彩る装備に違いを感じさせる。
ヴェゼルとの違いは「パワートレーンのキャラクター」
ヴェゼル(価格275万8800~396万8800円)
このクラスのベストセラーとも言えるヴェゼル。上質さとおしゃれなデザインで人気の高いモデルだ。
ホンダ独自のハイブリッドシステム「e:HEV」はシリーズ式を基本にしつつ、高速巡航時の燃費向上に効果的なエンジン直結モードを持っていることが特徴。そのためエンジンの存在を感じさせる場面も多少ある。
一方、新型キックスの第3世代e-POWERはモーター駆動のみ。もちろんシリーズ式のためエンジンはあるのだが、走行音などを利用してその存在感を上手に薄めているところが見どころ。そのため、走行フィールとしては、ほとんど電気自動車(EV)と言っていい。静粛性の高さとペダル操作に対する俊敏なレスポンスが大きな魅力となっている。
カローラクロスとの違いは「四輪制御技術の細やかさ」
カローラクロス(価格298万1000~407万7700円)
全幅・全長が近く、ライバルの最右翼と言えるのがカローラクロスだろう。カローラの名を冠するだけに、キャビン空間やラゲッジ容量など隙がない優等生タイプだが、こと4WD性能(e-4ORCE)の先進性においては最新のキックスに軍配が上がる。
前後モーターを緻密に電気制御するe-4ORCEは、コーナリング時の車体姿勢を水平に保ち、乗員の揺れを抑えるなど、走行安定性と乗り心地を極めて高いレベルで両立している。
新規ユーザーの拡大が明るいニュース!
新型キックスの発表初期こそ「待ち望んでいた日産オーナー」の注文が中心だったが、直近のデータでは未保有客(他社からの乗り換えなど)の割合が3割を超えて高まり続けているという。
「店頭で実車を目にして展示車を見に店内に入り、試乗してその走りに一発で惚れ込んだ」という購入ストーリーが各地で生まれているのはとても興味深いところだ。スペックやコストパフォーマンスの比較だけで選ばれるのではなく、見た目と走りのファーストインパクトで顧客の心をつかむ強い製品力を持っていると言えるだろう。
新型キックス好調の根底にあるのは、「コンパクトだから」という妥協を可能な限り排除し、先進技術や走行性能、そして質感を磨き込んだ製品づくりだ。
299万9700円という、300万円を切るエントリー価格でハードルをグンと下げつつも、主力として選ばれているのはこだわり満載の上級モデルやe-4ORCEを搭載したグレードたち。ライバルひしめく激戦区において、「EVライクな走りと上質な個性を楽しめる大人のコンパクトSUV」という、独自のポジションを築きつつある新型キックスの活躍がこれからも楽しみだ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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