
日産のコンパクトSUVである「キックス」がフルモデルチェンジした。6月17日の発表会で、実車に接した印象をレポートしよう。
●文:鈴木ケンイチ●写真:編集部
新世代「e-POWER」と「e-4ORCE」を採用しつつも値下げ
日産は、6月17日、東京・六本木のイベント会場にて、フルモデルチェンジした新型コンパクトSUV「キックス」を発表した。新型モデルのデザインそのものは、2024年に北米で発売となったモデルと同様であるが、日本仕様は、最新の第3世代ハイブリッド「e-POWER」と、電動4WD技術「e-4ORCE」を採用したことが特徴となる。
第3世代ハイブリッド「e-POWER」は、モーター/発電機/インバーター/減速機/増速機の5つを1つにまとめた5-in-1の電動ユニットを採用し、発電に特化した1.4リッターエンジン(HR14DDe)と組み合わせている。従来モデルよりもパワーと燃費、静粛性のすべてを高めている。また、電動4WD技術「e-4ORCE」は、後輪用のパワーを高めており、より気持ちの良い走りを実現。「キックス」初となるSNOWモードも追加されている。
そして、従来モデルはタイで生産されていたが、新型は日本生産に切り替わったこともポイントだ。追浜工場で生産が立ち上がり、その後、九州の工場に移管されることが予告されている。日本国内での生産ということで、注文から納車までの期間は短くなることだろう。
そんな新型「キックス」は価格も驚きのひとつだ。なんと、エントリーが299万9700円からとなる。これは従来モデルの最終仕様のエントリーとなる308万3300円よりも安くなる。主力グレードも事前の予想よりも低めの価格設定に思える。この値上げラッシュの世の中でのフルモデルチェンジでの値下げは、それだけ「売りたい」という日産の本気ぶりが伝わってくる。
| ●新型キックス 主要諸元&価格 | |
| グレード | 価格 |
| X シンプルパッケージ | 299万9700円 |
| X | 325万9300円 |
| X+ | 354万9700円 |
| G | 389万8400円 |
| X e-4ORCE シンプルパッケージ | 334万9500円 |
| X e-4ORCE | 359万9200円 |
| X+ e-4ORCE | 389万9500円 |
| G e-4ORCE | 424万8200円 |
日産自動車が国内戦略を支える新たな最重要モデルとして発表した新型キックス。海外では2024年に発売済みだが、それから2年遅れで投入されることになる。
海外ではガソリンモデルを中心に展開しているが、国内では第3世代e-POWERを搭載するハイブリッドモデルのみが導入される。
グラマラスで大きくモダンになったエクステリア
新型「キックス」を発表会場で間近に見た印象は「モダンでグラマラス、そして大きい」というものだ。アメリカン・フットボールのヘルメットからインスパイアされたというフロント周りのデザインは、最新の日産車の共通のイメージを残しつつも力強い。
そして、写真よりも実車はかなりグラマラスな印象だ。前後のフェンダーの膨らみがハッキリとあって、4輪が地面をしっかりと踏みしめている感がある。リヤハッチバックが、まるでクーペ風に斜めに傾いており、トランクがあるかのようにも見える。オーソドックスなフォルムの従来モデルと比べると、これまでになく新しさを感じさせる。
また、プラットフォームはCMF-Bに一新されたことで、クルマ全体がわずかに大きくなった。実際、上位グレードのGは19インチの大きなタイヤ&ホイールを違和感なく履きこなしている。
アメリカンフットボールのヘルメットから着想を得たデザイン。特徴的なシグニチャーランプと水平基調のワイドなグリルを組み合わせ、力強く大胆な存在感を表現している。
サイドビューは、力強く張り出したフェンダーがグラマラス。ルーフをブラックアウトした2トーンカラーが浮遊感を演出し、クーペ風に傾斜したリヤがモダンな塊感を際立たせている。
一文字風に繋がるシャープなブラックのガーニッシュがモダン。クーペライクに傾斜したゲートと立体的なテールランプ、右下のe-POWERバッジが先進感をアピール。
広さを増した室内空間により、実用性の向上も期待できる
室内の雰囲気は、従来モデルと比べるとモダンさが増していることも大いに魅力的。ドライバー用とメインのディスプレイを一体化した統合型インターフェイスディスプレイと、ボタン式のセレクトギア、大きなスマートフォン置き場など、最新モデルらしいキャビンレイアウトとなっている。また、ホイールベースが延長したことで、後席の足回りも拡大。従来モデルを超える余裕を手に入れたことも魅力だろう。
感心したのは、インテリアの質感の高さだ。インパネやドアトリムなどの雰囲気は実に良く、触った時に柔らかい素材が多く使われているのもクラス上の感がある。上位グレードのGには、パノラミックガラスルーフやリモコンオートバックドアが装備されているし、10スピーカーのBOSEサウンドシステムもOPで装着可能だ。合皮シートはもちろん、ファブリックシートの質感も高い。従来モデルとは別次元といえるほど質感が高まっている。
ただ、ひとつ残念だったのはADAS機能に関してだ。日産自慢のプロパイロットは全グレードに採用されているが、最新の2.0ではない。また、2027年から日産が市場導入予定の次世代プロパイロットに関しても、「まだ検討中」という段階だとか。これほどバランスよく良質感を追求したのだから、ぜひキックスにも最新ADAS機能が採用されることを期待したい。
インパネまわりは、2枚の12.3インチ画面を繋いだ統合型インターフェイスが目を惹く。撮影車のGグレードはゴールドトリムが用いられるなど、格上のプレミアム感が強まる印象だ。
Gグレードのフロントシートは、上質なレザー調素材(合皮)を採用。ヘッドレストにはOPとして用意されるBOSEスピーカーも装着されている。
リヤシート足回り空間の余裕も拡大。新型では後席左右にも日産自慢の「ゼログラビティシート」を採用するなど、快適性も強化されている。
どのグレードもハズレなしの、ちょうど良いグレードラインナップ
グレード構成は、エントリーの「Xシンプルパッケージ」と「X」、ミドルの「X+」、上位の「G」というもの。「Xシンプルパッケージ」は、300万円を切ることを狙いとした特別なグレードだ。他との大きな違いは、日産コネクトインフォテイメントシステムが、まったく使えないことだ。ディスプレイオーディオをディーラーオプションで装着して使用することが前提となる。
「X」と「X+」の違いは逆に、日産コネクトインフォテイメントシステムの有り無しが大きい。「X」ではオプションで、「X+」では標準装備となる。また、インパネの素材も「X+」が上質で、トリムのカラーが「X」はシルバー、「X+」はゴールドになる。シートも「X」はファブリックのトリコットだが「X+」は合皮だ。
「X」「X+」と上位の「G」との違いは、外観が中心になる。「G」はアダプティブLEDヘッドライトに、ピカピカのグロスの前後バンパーとサイドシル&モール、19インチアルミホイール、シルバーのルーフレールを装着する。「G」以外は、マットの樹脂のバンパーとモール、17インチのホイールとなっている。
見比べてみれば、さすがに上位の「G」は、抜きんでて豪華な仕様である。しかし、「X」や「X+」でも、残念感があるわけではない。ただ、コネクテッド機能などを有する日産コネクトインフォテイメントシステムの有り無しは大きい。多くのユーザーは「X」と「X+」で、日産コネクトインフォテイメントシステムなどのオプションを含めた価格でどれくらい違いができるのかに悩むのではないだろうか。
どちらにせよ、実車に触れた印象は、「モダンで大きくなり、質感がアップした」ということ。それでいて価格アップは最小に収めているという印象だ。ライバルは、トヨタ「カローラクロス」やホンダ「ヴェゼル」あたりだろう。
インパネまわりの主役とも言える「NissanConnect(日産コネクト)インフォテインメントシステム」は、12.3インチの大型高精細ディスプレイが組み合わされる。「X」ではメーカーオプション扱いとなるため、最初からこれが標準装備されている「X+」や最上級の「G」を選ぶユーザーが多そうだ。
運転席の正面に配置された12.3インチのフル液晶メーターディスプレイ。フードレス設計による圧倒的な開放感と見やすさをもたらしてくれる。
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