
Lサイズミニバンの最高峰として君臨するトヨタの「アルファード/ヴェルファイア」と、日産の技術を結集して反撃の狼煙を上げる「新型エルグランド」。ファミリーユースの枠を超え、ショーファーカーとしての需要も満たすプレミアムミニバン市場で、対極の魅力を放つ2台の真っ向勝負だ。
●文:川島茂夫/月刊自家用車編集部
新世代e-POWERとe-4ORCEを結集。走りを極めた新型エルグランド
長年の沈黙を破り全面刷新を遂げた新型エルグランド最大の武器は、日産の最新電動化技術が惜しみなく投入されたパワートレーンにある。
発電専用に設計された1.5リッターターボエンジンを用いた新世代e-POWERと、ツインモーター4WDシステム「e-4ORCE」を全車に標準採用。さらに電子制御サスペンションの導入により、ドライバーの意のままに操れる高い操縦安定性と、後席乗員を包み込むフラットで快適な乗り心地を高次元で融合させている。
インテリアもプライベートラウンジを彷彿とさせる上質な仕上がりだ。グレード構成は全車7人乗りのe-4ORCE車に絞り込むなど思い切った高級志向に絞り込まれており、最上位ミニバンとしてのキャラクターを明確に打ち出している。ドライバーズミニバンとしての走りの質感と上質な室内空間を兼ね備え、走りにもこだわりたいオーナーにとって非常に満足度の高い1台と言える。
新世代e-POWERとe-4ORCE、電子制御サスの制御が秀逸。2.4トン超の巨体を感じさせず、アクセル操作に対して揺れのないスムーズでフラットな走りを実現しているのは本当にお見事。ドライバーズカーとしての操縦性と、後席の極上の快適性を高次元で融合した稀有な1台になる。
アクティブ・ノイズ・コントロールが不快な音を遮断し、静寂な空間を維持。静粛性の高さも新型エルグランドの大きな武器になっている。
ハンドリングも高レベル。ピッチやロールを抑え、引き締まった足回りが印象的で、それでいてステアリングはリニア感のあるタイプ。電子制御サスペンションの出来の良さが際立つ。
主要諸元(G e-4ORCE)
●全長×全幅×全高:4995×1895×1975mm ●ホイールベース:3000mm ●車両重量:2440kg ●乗車定員:5名 ●パワーユニット:1498cc直列3気筒DOHC(140ps/23.2kg-m)+前後モーター(フロント:151kW/330Nm、リヤ:100kW/195Nm) ●駆動方式:電気式4WD ●WLTCモード総合燃費:16.8km/L ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)/ベンチレーテッドディスク(R) ●サスペンション:ストラット式(F)/マルチリンク式(R) ●タイヤ:235/60R18
ワイド感を強調する横一文字のLEDリヤコンビネーションランプを採用。「組子」モチーフのパターンを配したレンズ内部や「く」の字型の彫りの深い造形が、夜間でも圧倒的な存在感と洗練された印象を強めてくれる。
ダッシュボードから左右ドアトリムへとシームレスにつながる水平基調のデザインが特徴。2枚の画面が綺麗につながる一体型大型ディスプレイや、操作系を平面的に集約したセンターパネルスイッチなど、先進的で開放的な造形も魅力のひとつ。
身体を優しく包み込むゼログラビティシートを採用。上質な質感のシート地に加え、ヘッドレストスピーカーや電動調整機能、ヒーター機能などを完備し、長距離ドライブでも疲れにくい極上の運転空間を実現。助手席にもオットマン機能を備えていることも特徴としている。
2列目シートは、オットマンや電動デュアルリクライニング機能を備えた最上級キャプテンシート。ゼログラビティ構造と幅広設計により、大人がリラックスして快適に過ごせる「ファーストクラス」級の空間を楽しめる。
サードシートにもスライド&リクライニング機能を備えるなど、乗員ファーストの設計思想が宿る。足元や膝まわりに十分なゆとりも確保されている。
| グレード | 価格 |
| X e-4ORCE | 689万7000円 |
| G e-4ORCE | 757万9000円 |
圧倒的なバリエーションで市場を席巻する絶対王者アルヴェル
対するトヨタのアルファード/ヴェルファイアは、このカテゴリーにおける絶対王者として揺るぎないポジションを確立している。
最大の強みは、あらゆるユーザーニーズに対応できる車種展開の豊富さだ。パワートレーンはスプリット式ハイブリッド(HEV)を軸に、先進的なプラグインハイブリッド(PHEV)、さらにアルファードには2.5LのNAガソリン、ヴェルファイアには2.4Lターボガソリンと多様な選択肢を揃える。
さらにシート仕様も、ラグジュアリーな6人乗りや7人乗り、実用的な8人乗り(アルファード)まで用意され、駆動方式も2WDとE-Fourから選択可能だ。
圧倒的な室内の広さと豪華なキャプテンシート、優れた静粛性により、ファミリーカーとしてだけでなく役員送迎などのショーファーカー用途でもトップクラスの適性を誇る。予算や使い方に応じて最適な仕様を選べる自由度の高さは、王者ならではの大きな魅力だ。
アルファード(左)とヴェルファイア(右)は、販売チャンネルの統合後もエクステリアと一部のパワートレーンが異なる2系統をキープ。両モデルともにどんなシーンでもひときわ目立つ押し出しの強い迫力のある外観は与えられている。
最新改良で足回りも小変更。アルファードは周波数感応型ショックアブソーバーを全グレードに標準採用することで、乗り心地を向上させている。
アルファードは2025年6月の改良で、ハイブリッドのエントリーモデルとして「G」を新設定。リラックスキャプテンシート仕様の7人乗り仕様のほか、同価格でベンチシート仕様の8人乗り仕様も設定されている。
6月の一部改良ではヴェルファイアはグレード変更などはなく、変更点は商品強化が中心。具体的には新ボディカラーのニュートラルブラックの採用、エグゼクティブラウンジの内装加飾がブロンズスパッタリングに統一された。
| ●アルファード グレードバリエーション&価格【2026年6月モデル】 | ||
| パワートレーン | グレード | 価格【2WD/4WD】 |
| 2493cc直4DOHC 170ps/23.7kg-m | Z(ガソリン) | 559万9000円/579万7000円 |
| 2487cc直4DOHC 190ps/24.1kg-m + モーター 134kW/270Nm | G(ハイブリッド) | 559万9000円/− |
| Z(ハイブリッド) | 639万9800円/− | |
| エグゼクティブラウンジ(ハイブリッド) | 864万9300円/− | |
| 2487cc直4DOHC 190ps/24.1kg-m + ツインモーター 134kW/270Nm(フロント) 40kW/121Nm(リヤ) | G(ハイブリッド) | −/581万9000円 |
| Z(ハイブリッド) | −/661万9800円 | |
| エグゼクティブラウンジ(ハイブリッド) | −/886万9300円 | |
| 2487cc直4DOHC 177ps/22.3kg-m + ツインモーター 134kW/270Nm(フロント) 40kW/121Nm(リヤ) | Z(プラグインハイブリッド) | −/764万9400円 |
| エグゼクティブラウンジ(プラグインハイブリッド) | −/1069万9700円 | |
| ●ヴェルファイア グレードバリエーション&価格【2026年6月モデル】 | ||
| パワートレーン | グレード | 価格【2WD/4WD】 |
| 2393cc直4DOHCターボ 279PS/43.9kg・m | Z プレミア(ガソリンターボ) | 674万9600円/694万7600円 |
| 2487cc直4DOHC 190PS/24.1kg・m + モーター 134kW/270Nm | Z プレミア(ハイブリッド) | 709万9400円/− |
| エグゼクティブラウンジ(ハイブリッド) | 884万9500円/− | |
| 2487cc直4DOHC 190PS/24.1kg・m + ツインモーター 134kW/270Nm(フロント) 40kW/121Nm(リヤ) | Z プレミア(ハイブリッド) | −/731万9400円 |
| エグゼクティブラウンジ(ハイブリッド) | −/906万9500円 | |
| 2487cc直4DOHC 177ps/22.3kg-m + ツインモーター 134kW/270Nm(フロント) 40kW/121Nm(リヤ) | エグゼクティブラウンジ(プラグインハイブリッド) | −/1089万9900円 |
選択の決め手はパワートレーンと電動感の差
両モデルを比較する上で決定的な要因となるのが、電動化パワートレーンのアプローチの違いだ。
ハイブリッド同士の走りの質感や操舵レスポンスの滑らかさでは、ツインモーターで積極的に前後駆動トルクを制御するエルグランドのe-4ORCEが際立つ。一方で、EV走行の先進性や航続距離の利便性においては、アルヴェルのPHEVモデルが頭ひとつ抜け出ている。
価格面では、エントリーモデル(ハイブリッド)の乗り出し価格でアルファードが約560万円から設定されているのに対し、全車e-4ORCE採用のエルグランドは約690万円からと高めのスタートになる。ただし、同等装備の4WD車の最上級グレード同士で比較すると、その価格差は約20万円となり、実質的な競合ラインではほぼ互角の価格帯に収まる。
ドライバー視点の走りか、全方位の汎用性か
操縦安定性や走りのプレミアム感、上質なドライバーズミニバンとしての魅力を最優先するならば、e-4ORCEを備える新型エルグランドがリードする。一方で、豊富なパワートレーンやシート構成から自分にぴったりの仕様を選びたい場合や、PHEVの先進性を求めるのであれば、アルファード/ヴェルファイアが確実な満足をもたらすだろう。
これまでアルファード&ヴェルファイアの独壇場だったプレミアムミニバンだが、新型エルグランドが投入されたことで、ユーザーの選択肢が一気に広がった。最高峰のミニバンに何を求めるかによってベストチョイスが変わってくる、贅を尽くしたハイレベルの対決は、国産車全体にとってもいい刺激になるはずだ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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