「59年前の軽自動車とは思えない…」今見てもマジでカッコいい! 斬新なデザインと革新の技術を採用し、当時大きな話題となったスズキの名車[フロンテ360(LC10)]を紹介│月刊自家用車WEB - 厳選クルマ情報

「59年前の軽自動車とは思えない…」今見てもマジでカッコいい! 斬新なデザインと革新の技術を採用し、当時大きな話題となったスズキの名車[フロンテ360(LC10)]を紹介

「59年前の軽自動車とは思えない…」今見てもマジでカッコいい! 斬新なデザインと革新の技術を採用し、当時大きな話題となったスズキの名車[フロンテ360(LC10)]を紹介

「59年前の軽自動車」と聞けば、どんなクルマを想像するでしょうか。1967年に登場したスズキ フロンテ360(LC10)は、丸みを帯びた斬新なスタイルに加え、RRレイアウトと空冷2ストローク3気筒という、現在ではまず見られないメカニズムを採用していました。360cc時代の軽自動車を大きく進化させた、スズキの意欲作を振り返ります。

●文:月刊自家用車編集部

RR+2ストローク3気筒。59年前とは思えない意欲的なメカニズム

現在の軽自動車は、大人4人が乗れる室内空間と、高速道路を無理なく走れる性能を備えています。しかし、360cc規格が定着した1950年代半ばの軽自動車は、まだ発展途上にありました。

当時の規格は全長3.0m、全幅1.3m、排気量360cc以下。1955年に発売されたスズライトSSも、空冷2ストローク2気筒360ccエンジンで最高出力は15.1PSでした。価格は42万円からと、当時としては決して手軽な商品ではありませんでした。

スズキはその後、2ストロークエンジンの弱点だった潤滑性能の改善を進めます。1963年のスズライト フロンテFEAでは分離給油のセルミックス方式、1965年のFEAⅡでは必要な場所へ直接オイルを供給するCCISを採用。長時間の高速走行にも対応できる性能を手に入れていきました。

そして1967年5月に登場したのが、2代目にあたるフロンテ360(LC10)です。最大の特徴は、軽四輪車で初となる空冷2ストローク直列3気筒356ccエンジン。25PSを発生し、最高速度110km/hを実現しました。さらに先代までのFFから、エンジンを車体後部に搭載して後輪を駆動するRRへと大転換しています。

スズキの2代目フロンテ360(LC10型)。

デザインにも当時の流行だったコークボトルラインを取り入れ、丸みのあるボディとセミファストバックを組み合わせました。全長2995mmという小さな軽自動車ながら、居住性だけでなくスポーティーさまで追求したところに、このモデルの先進性があります。

スズキが長年培ってきた2ストローク技術と、大胆なRRレイアウト。それをひとつにまとめたフロンテ360は、マイカー時代を迎えつつあった日本で存在感を高めていきました。

スズキ フロンテ360(LC10)

発売時にはスタンダード、デラックス、スーパーデラックスの3グレードを設定。価格はスタンダードが31万8000円、デラックスが34万3000円、スーパーデラックスが37万3000円でした。引き上げ式のドアハンドルを採用するなど、細部にも当時としては新鮮な装備が盛り込まれています。

丸みのあるコークボトルラインとセミファストバックを採用したデザインが印象的。

インテリア

シンプルにまとめられたインパネには、120km/hまで刻まれた大型スピードメーターを配置。右側には燃料計や各種警告灯を備え、オイル残量低下もドライバーに知らせる仕組みです。助手席側にはグローブボックスがあり、インパネ下にも横長のトレイを設けるなど、限られた室内を有効に使っています。

スズキ フロンテ360(LC10)のインテリア。

前席には約12cmの前後スライド機構を備えます。全長3m未満という小さなボディながら、RR方式によってキャビンを有効に使い、後席にも実用的なレッグスペースを確保。後席側のサイドウインドウも開閉できるようになっていました。

ラゲッジスペース

エンジンを後部に搭載するため、荷室はフロント側に設けられています。ただしスペアタイヤも収納されるため、容量は決して大きくありません。現在の軽自動車と比べれば積載性には制約がありますが、RRならではのユニークなパッケージングがよく分かります。

スズキ フロンテ360(LC10)のラゲッジスペース。

LC10型エンジン

リヤに収められたエンジンへは、大きく開くエンジンフードからアクセスできます。現在の軽乗用車ではほぼ見られないRRレイアウトは、フロンテ360を象徴するメカニズムのひとつです。

フロンテ360(LC10型)のエンジンルーム。

356ccの空冷2ストローク直列3気筒LC10型を搭載。軽四輪車として初めて採用された2ストローク3気筒で、最高出力25PS/5000rpmを発生します。滑らかな回転と高い出力を狙って開発された、当時としては非常に意欲的なエンジンでした。

LC10型エンジン。

[主要諸元]スズキ フロンテ360(LC10)

ボディ・定員

  • 全 長:2995mm
  • 全 幅:1295mm
  • 全 高:1330mm
  • ホイールベース:1960mm
  • 車両重量:425kg
  • 乗車定員:4名

エンジン・性能

  • エンジン型式:LC10型
  • エンジン:空冷2ストローク直列3気筒
  • 総排気量:356cc
  • 最高出力:25PS/5000rpm
  • 最大トルク:3.7kg-m/4000rpm
  • 最高速度:110km/h
  • 0-400m加速:22.4秒
  • 燃料消費率:28.0km/L

駆動系・シャシー

  • 駆動方式:RR
  • トランスミッション:4速MT
  • サスペンション前:ダブルウィッシュボーン式独立
  • サスペンション後:セミトレーリングアーム式独立
  • タイヤ:4.80-10 2PR
  • 最小回転半径:3.9m
  • 燃料タンク容量:23L

新車当時価格

  • 34万3000円(東京地区)

356ccから36PS! 「太陽の道」で高速性能を実証したスポーツモデル

1960年代後半、軽自動車の性能競争は急激にヒートアップします。そのきっかけのひとつとなったのが、1967年3月に登場したホンダ N360でした。

N360は大人4人が乗れる広い室内と力強い走り、手の届きやすい価格を武器に大ヒット。発売後、軽乗用車販売で3年連続トップとなり、マイカーブームを象徴する存在になります。

同年5月に登場したフロンテ360も25PSという優れた性能を持っていましたが、スズキはさらに高性能なモデルを開発しました。

それが1968年のフロンテSS360です。

LC10型エンジンにさらなるチューニングを施し、356ccから36PS/7000rpmを発生。1L換算で100PSを超える出力を実現し、最高速度は125km/h、0-400m加速は4人乗車状態で19.95秒に達しました。当時の軽自動車としてトップクラスの性能です。

さらに発売前の1968年8月、スズキはイタリアの高速道路「アウトストラーダ・デル・ソーレ」で公開高速走行テストを実施しました。

ステアリングを握ったのは英国の名ドライバー、スターリング・モスと、マン島TTで日本人初優勝を果たしたスズキの伊藤光夫です。ミラノからローマを経てナポリへ向かい、全コースを平均122.4km/hで走破。わずか360cc級の軽自動車が、高速性能だけでなく耐久性まで備えていることを世界に示しました。

スズキ フロンテSS360(LC10/1968年型)

36PSまで高められたLC10型は、最高出力を7000rpmで発生する高回転型でした。タコメーターには高回転側だけでなく低回転域にも注意領域が設けられるほど、通常モデルとは性格の異なるスポーツエンジン。高性能と引き換えに扱いにもコツを求める、当時ならではの刺激的なモデルでした。

気難しさがあった、フロンテSS360。

[主要諸元]スズキ フロンテSS360(LC10/1968年型)

ボディ・定員

  • 全 長:2995mm
  • 全 幅:1295mm
  • 全 高:1330mm
  • ホイールベース:1960mm
  • 車両重量:440kg乗車定員:4名

エンジン・性能

  • エンジン型式:LC10型
  • エンジン:空冷2ストローク直列3気筒
  • 総排気量:356cc
  • 最高出力:36PS/7000rpm
  • 最大トルク:3.7kg-m/6500rpm
  • 最高速度:125km/h
  • 0-400m加速:19.95秒
  • 燃料消費率:24.0km/L

スズキ フロンテSS360(LC10)「太陽の道」テスト車

発売に先立つ1968年8月、イタリアのアウトストラーダ・デル・ソーレで高速走行テストを実施。スターリング・モスと伊藤光夫がドライブし、ミラノからローマを経てナポリまで走破しました。スズキの公式社史によれば、全コースの平均速度は122.4km/h。360cc級の軽自動車として驚異的な高速性能を実証しました。

レース本番で活躍したフロンテSS360

高性能と引き換えに扱い手を選んだ2ストロークスポーツ

フロンテSS360が登場した時代、軽自動車にとって高速走行はまだ大きな課題でした。

実際、高速自動車国道における軽自動車の法定最高速度は長く80km/hとされ、普通乗用車と同じ100km/hへ引き上げられたのは2000年です。

それだけに、1968年の時点で最高速度125km/hを掲げ、イタリアで平均122.4km/hの長距離高速走行を実証したフロンテSS360の性能は際立っていました。

もっとも、そのエンジン特性は万人向けではありません。36PSを7000rpmという高回転で発生するため、低回転では扱いに神経を使います。高回転を保ちながら走らせるという、現在の軽自動車とはまったく異なる楽しみ方を要求するモデルでした。

1970年11月には3代目のフロンテ71へモデルチェンジ。翌1971年5月には水冷2ストローク3気筒のLC10W型を搭載したフロンテ71Wが加わり、同年9月にはそのメカニズムを使ったフロンテクーペが登場します。

フロンテクーペでは最高出力が37PSへ高められ、軽乗用車初の2シータークーペという独自の世界を築きました。RR、2ストローク3気筒、そして高回転型エンジン。1960年代末から1970年代初頭のフロンテは、現在の軽自動車からは想像しにくいほど個性的なメカニズムを追求していたのです。

スズキ フロンテクーペ GX(LC10W/1971年式)

1971年9月に登場した軽乗用車初の2シータークーペです。デザインはジョルジェット・ジウジアーロの提案をベースにスズキが仕上げたもので、全高はわずか1200mm。丸型メーターを並べたインパネやセミバケットシートなど、室内もスポーツカーらしい雰囲気にまとめられています。1972年には4人乗りの「2+2」も追加されました。

1971年式、スズキ フロンテクーペ。

スズキ フロンテ360(LC10)と後継モデルの変遷

1967年

  • 5月 スズキ フロンテ360(LC10)発売。2代目フロンテとして、RRと空冷2ストローク3気筒を採用。

1968年

  • 8月 スズキ フロンテSS360がイタリアの「太陽の道」で高速走行テストを実施。
  • 11月 スズキ フロンテSS360発売。36PSのLC10型エンジンを搭載。

1969年

  • 3月 スズキ フロンテバン360発売。
  • 3月 スズキ フロンテSS360がアジア・ハイウェー走破を達成。
  • 7月 スズキ フロンテエステート発売。
  • 7月 スズキ フロンテ360にオートクラッチ車を追加。

1970年

  • 11月 3代目となるスズキ フロンテ71(LC10Ⅱ)発売。

1971年

  • 5月 水冷2ストローク3気筒LC10W型を搭載するスズキ フロンテ71W発売。
  • 9月 2シーターのスズキ フロンテクーペ発売。
  • 11月 改良を受け「72フロンテ」へ移行。

1972年

  • 2月 スズキ フロンテクーペに4シーターを追加。

1973年

  • 4月 スズキ フロンテハッチ発売。
  • 7月 4代目スズキ フロンテ(LC20)へフルモデルチェンジ。

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