「似て非なるもの…。59年前に登場した“コロナ”の皮を被った狼」レーシングスペック・ヤマハDOHCを搭載した【トヨタ1600GT】の凄さ│月刊自家用車WEB - 厳選クルマ情報

「似て非なるもの…。59年前に登場した“コロナ”の皮を被った狼」レーシングスペック・ヤマハDOHCを搭載した【トヨタ1600GT】の凄さ

「似て非なるもの…。59年前に登場した“コロナ”の皮を被った狼」レーシングスペック・ヤマハDOHCを搭載した【トヨタ1600GT】の凄さ

1967年に登場した「トヨタ・1600GT」。その外観は当時の3代目コロナ(RT40型)にそっくりですが、「コロナ」の名を冠さない独立したスポーツクーペとして発売されました。その理由は、ヤマハと共同開発されたトヨタ初の4気筒DOHCエンジン「9R型」を搭載する特別なモデルだったからです。当時のレースでライバルを圧倒するため、大衆車のボディにレース直系の高性能エンジンを詰め込んだ設計は、現代の「シビック タイプR」にも通じるロマンを秘めています。販売台数はわずか2200台強。今や伝説の「2000GT」よりも出会うことが難しいとされる、知る人ぞ知る希少な名車の魅力と歴史に迫ります。

●文:往機人(月刊自家用車編集部)

フロントグリルは、ブラックアウトされ精悍な顔つきとなった。グリル中央に奢られた専用エンブレムは、このクルマが特別なものであるということを物語っている。

特別なエンジンが搭載された「コロナ…」ではなく、まったく異次元のスペシャルクーペ「1600GT」として誕生

「トヨタ・1600GT」は、1967年に発売されたトヨタのスポーツクーペです。

もしこの段階で名称をWEBで検索してその画像を見たとしたら、「あれ、これコロナ(3代目RT40型)じゃないの?」と思う人は多いでしょう。筆者もその一人でした。

しかしこの車種は「トヨタ・コロナ 1600GT」ではなく「トヨタ・1600GT」となっていて、別のラインナップという扱いでした。その要因はズバリ、搭載されているエンジンがスペシャルなものだからです。そのエンジンは「9R」という型式名が与えられたツインカムエンジンです。

1960年代後期のこの時代、吸気と排気で専用のカムシャフトが与えられたツインカム(DOHC)方式はレース専用のイメージが強く、市販車に搭載されているのはごくごく一部の特別なものでした。そのツインカムエンジンを普及価格帯の乗用車であるコロナに搭載するというのは、トヨタとしては異例のことでした。

コロナの代名詞でもある、フロントマスクが前に向かって鋭く傾斜した「アローライン」を採用しつつ、ベースのコロナとは異なるブラックアウトされた精悍なフロントグリルが装着されている。

ベース車同様、Bピラーがないピラーレスハードトップ構造により、ルーフからトランクへと流れるCピラーのラインが非常に美しく、スタイリッシュな印象を与えている。

2000GTが豪華なウッドパネルを採用していたのに対し、1600GTは反射を抑えたブラックのダッシュボードを採用。

搭載されたフロントシートは、トヨタ2000GTのものと共通のバケットシートを採用した。

レースシーンで圧倒的な強さを誇ったベレット、ブルーバードに対抗するため投入

なぜその企画が実現されたかというと、それはその当時、人気の高まりを見せていた「クラブマンレース(市販車ベースでおこなわれるレース)」に勝って、消費者にトヨタの技術力をアピールするためです。

そのとき強さを見せて表彰台を独占していた「いすゞ・ベレット」や「日産・ブルーバード」に後れを取っていたトヨタが起死回生の一手として投入したのがこの「1600GT」というわけです。

市販に先駆けて1966年に「RTX」という名前でレースに参戦しました。「RT」はコロナの型式で、そこに実験車両を意味する「X」を加えたカタチです。

その成果は上々で、しっかりと表彰台のてっぺんを何度も奪うことに成功しました。レースによっては排気量が大きい上位クラスの車輌よりも上の順位になることもあり、技術力をアピールする狙いはしっかり達成されました。

レースシーンでは、いすゞベレットや日産ブルーバードの後塵を拝していたトヨタは、大衆車であるコロナにレーシングユニットであるDOHCエンジンを搭載して対抗することとなった。

ヤマハが手掛けた1.6L 直4DOHC「9R」は、トヨタ2000GTの3M型とほぼ同時期に開発がはじまった

この「1600GT」を特別な車種と位置付けているキーとなるエンジンは、1587ccの排気量を持つ直列4気筒DOHCの「9R型」ユニットです。

この「9R」は、ベース車のコロナに搭載されている1587cc直列4気筒OHVの「4R」をベースに、「ヤマハ」がDOHC化したものです。「2000GT」に搭載されている「3M型」ユニットとほぼ同時に開発がおこなわれ、4気筒ではトヨタで初めて発売されたDOHCユニットです。

元々カムシャフトがクランクシャフトの横に配されるOHVをベースにして、シリンダーヘッドに装着される2本のカムをカムチェーンで繋いだ構成です。ちなみにこの方式は、後の「カローラ・レビン/スプリンター・トレノ(TR27型)」に搭載の「2T-G型」ユニットにそのまま引き継がれます。

出力は「4R」の最高出力:90ps/5800rpm、最大トルク:12.8kg-m/4200rpmに対して、最高出力110ps/6200rpm、最大トルク:14.0kg-m/5000rpmと2割以上の向上を果たしています。レースではここからチューンナップが施されて、最高で150ps以上を発揮していたそうです。

搭載されるエンジンは、ベース車のコロナに搭載されていた1587cc直列4気筒OHVの「4R」をベースに、ヤマハがDOHC化した「9R」型。最高出力110ps/6200rpm、最大トルク:14.0kg-m/5000rpmを発揮した。

ベース車であるコロナと比べると、価格もスペシャルなものだった

「1600GT」の特別感の高さを理解するのに価格を見ると分かりやすいかもしれません。当時の新車価格は96〜100万円でした。今の感覚で見ればその数値は軽自動車の廉価版の価格でしかありませんが、貨幣価値の基準を当時に戻してみましょう。

まず、「1600GT」のベースモデルである「コロナ(RT40型)」の新車販売価格を見てみると、上位グレードの「DX」で約65万円です。現在のトヨタのラインナップにコロナに該当する車種はありませんが、少し前のモデルで同じコロナの系譜の子孫にあたる「マークX」の価格を見ると300〜450万円となっています。

仮に該当グレードを限定して350万円として計算してみると、「コロナ(RT40型)」の5.4倍になります。
それを元に「1600GT」の価格を計算してみると、100×5.4で540万円となります。

偶然ですが、大衆車クラスの車体に高性能エンジンを搭載した代表的な車種「ホンダ・シビックtypeR」に近い価格になりました。

今は経済格差が大きいので、この価格を高いと見るか低いと見るかは分かれると思いますが、当時の経済状況ではかなりの高額車でした。その結果、販売台数は2200台強とごく少数に留まっています。

現在、旧車のイベントなどで、ごくたまに展示されているのを見掛けることがありますが、肌感では「2000GT」よりも出会える機会は少ないのではないか? それくらい貴重で希少な旧車と感じています。

トヨタ2000GT譲りの本格的なスポーツカーとしてのDNAを引き継ぐモデルということで、トヨタ2000GTに装着されたバッジ(赤)に対して(青)のバッジが付けられた。ちなみに七宝焼きで高級感のあるものだった。

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