「57年前のクルマとは思えない…」完成された美しさを持ったマツダの名車。先進技術を満載しながらも短命に終わった悲運の[ルーチェロータリークーペ]を紹介│月刊自家用車WEB - 厳選クルマ情報

「57年前のクルマとは思えない…」完成された美しさを持ったマツダの名車。先進技術を満載しながらも短命に終わった悲運の[ルーチェロータリークーペ]を紹介

「57年前のクルマとは思えない…」完成された美しさを持ったマツダの名車。先進技術を満載しながらも短命に終わった悲運の[ルーチェロータリークーペ]を紹介

今見ても色褪せない、優雅で洗練されたボディデザイン。1969年に登場したマツダ「ルーチェロータリークーペ」は、美しいスタイリングに、独自開発のロータリーエンジンとFF方式を組み合わせた意欲作だった。しかし、その先進性とは裏腹に、短命に終わってしまった悲運のモデルでもある。わずか976台しか生産されなかった、幻の名車の魅力を振り返る。

●文:月刊自家用車編集部

57年前とは思えない美しいデザイン。セダンとは異なる設計を採用した高級クーペ

1967年5月、マツダは世界初の量産2ローターロータリーエンジン車「コスモスポーツ」を発売し、自動車業界にその技術力を知らしめた。同年の東京モーターショーでは、新たなロータリーエンジン搭載車として、優雅な2ドアハードトップボディを持つ試作車「RX87」を公開している。

RX87(1967年)
1967年の東京モーターショーで公開された試作車「RX87」。同時に展示された「RX85」は、翌年にファミリアロータリークーペとして市販化された。RX87もデザインの改良を経て、1969年にルーチェロータリークーペとして登場した。

このモデルを市販化したのが、1969年10月に登場した「ルーチェロータリークーペ」である。

そのデザインの原点となったのは、1966年に発売された初代ルーチェだ。イタリアの名門カロッツェリア、ベルトーネに在籍していたジョルジェット・ジウジアーロが関わった初代ルーチェのスタイリングを基に、マツダのデザイナーがクーペとして発展させた。

低く構えたフロントノーズに、丸型4灯ヘッドランプを組み合わせた精悍なフロントマスク。

しかし、両車の共通点は外観のイメージが中心だった。セダンが一般的な後輪駆動(FR)方式を採用していたのに対し、ロータリークーペは前輪駆動(FF)方式を採用。ボディや足まわりなども専用設計されており、実質的には別のクルマといえる存在だった。

マツダ初のFF方式を採用! 美しさと快適性を追求した先進的な設計

ルーチェロータリークーペの大きな特徴が、マツダの乗用車として初めてFF方式を採用したことだ。ロータリーエンジンの動力で直接前輪を駆動する方式は、その後のマツダの量産車にも引き継がれなかった。

当時、高級車といえばFR方式が一般的だった。しかし、エンジンから後輪へ動力を伝えるプロペラシャフトが必要となるため、室内空間の設計には制約が生じる。

初代ルーチェのデザインを発展させた、流麗で優雅なプロポーションは、57年を経た今も色褪せない。

そこでマツダが着目したのが、ロータリーエンジンならではのコンパクトな構造だった。

エンジンと駆動系を車体前部に集約することで、室内を前後に貫くプロペラシャフトが不要となり、後席の足元にも余裕を持たせることができる。

前席の背もたれを倒して後席へ乗り込む2ドアクーペながら、後席の快適性にも配慮した設計。グレードによってはセンターアームレストも備え、高級車にふさわしい居住空間を追求していた。

さらに、センターピラーや三角窓を省いた開放感のあるハードトップボディを採用。流麗なプロポーションを損なうことなく、居住性にも配慮した高級クーペを目指したのである。

単に速いクルマを作るのではなく、上質な室内で長距離を快適に移動できるモデルを実現する。そんなマツダのこだわりが、この独創的な設計に表れていた。

水平基調のシンプルなインストルメントパネルに、丸型メーターを3つ配置。木目調のステアリングなどと相まって、当時の高級クーペらしい上質な雰囲気を演出している。

最高速度は190km/h! このクルマのためだけに開発されたロータリーエンジン

ルーチェロータリークーペには、専用開発された「13A型」ロータリーエンジンが搭載された。

655cc×2ローターの総排気量を持ち、最高出力126PS、最大トルク17.5kg-mを発生。最高速度は190km/hに達するなど、当時の国産高級車としては際立った動力性能を誇っていた。

この13A型は、後にサバンナRX-7などに搭載された13B型とは、設計の考え方が大きく異なる。

マツダのロータリーエンジンは、10A型から12A型、13B型へと進化する過程で、基本的なローター径を維持しながら、その幅を広げることで排気量を拡大していった。

マツダ初のFF方式を実現するため、車体前部に縦置きされた13A型ロータリーエンジン。ローター径を拡大する独自設計により、エンジンの前後長を抑えながら126PSの高出力を実現した。

一方、13A型はローターの径を大きくすることで排気量を増加させている。これは、ロータリーエンジンを車体前部に縦置きし、前輪を駆動するFF方式を成立させるための工夫だった。

ローターの幅を広げれば、エンジン全体の前後長も増加する。しかし、ローター径を拡大する方法なら、エンジンの全長を抑えながら排気量を確保できる。

その結果、13A型はほかのロータリーエンジンとは異なる独自の構造を持つことになった。

パワフルで滑らかな回転特性を持つロータリーエンジンは、ルーチェロータリークーペが目指した、上質な高速巡航を楽しむ高級グランドツーリングカーという性格にも適したものだった。

先進技術を惜しみなく投入するも短命に。わずか976台しか作られなかった悲運の名車

マツダが技術の粋を集めて開発したルーチェロータリークーペだったが、その販売は決して順調とはいえなかった。

大きな障壁となったのが、当時としては非常に高額な販売価格だ。

新車価格は145万〜175万円。最上級グレードのスーパーデラックスは、当時のトヨタ・クラウンの高級グレードをも上回る価格設定だった。

FF方式を実現するために、エンジンから駆動系、足まわりまで専用設計したことは、製造コストの面でも大きな負担になったと考えられる。また、複雑な機構を車体前部に収めたことで、整備性などの課題も抱えていた。

マツダは全国の百貨店でも実車を展示するなど、その美しいデザインと先進性を積極的にアピールした。しかし、高級車市場における存在感を十分に確立できないまま、生産を終了することになる。

最終的な総生産台数は、わずか976台だった。

もっとも、この数字だけでクルマの価値を判断することはできない。

イタリアンデザインの流れをくむ美しいボディに、独自開発のロータリーエンジンとFF方式を組み合わせるという大胆な挑戦。そのどれもが、当時のマツダの技術に対する情熱を物語っている。

発売から半世紀以上を経た現在でも、その優雅な姿は決して古さを感じさせない。

短い生涯を終えたことが惜しまれる、まさに「幻の名車」と呼ぶにふさわしい1台である。

【主要諸元】

マツダ ルーチェロータリークーペ スーパーデラックス(1970年式)

  • 全長×全幅×全高:4585×1635×1385mm
  • ホイールベース:2580mm
  • 車両重量:1255kg
  • エンジン型式:13A型
  • エンジン種類:水冷2ローターロータリーエンジン
  • 総排気量:655cc×2
  • 最高出力:126PS/6000rpm
  • 最大トルク:17.5kg-m/3500rpm
  • 最高速度:190km/h
  • トランスミッション:4速MT
  • 駆動方式:FF(前輪駆動)
  • フロントサスペンション:独立懸架ウィッシュボーン式
  • リアサスペンション:独立懸架セミトレーリングアーム式
  • タイヤサイズ:165HR15
  • 乗車定員:5名
  • 新車当時価格:175万円

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