
マツダ株式会社は、独自のロータリーエンジンを発電機として使用する新電動車「MX-30 Rotary-EV(エムエックス サーティー ロータリー イーブイ)」を9月14日から予約販売することを発表した。発売は2023年11月を予定している。ロータリーエンジンの復活、「Return」の意味を込めた特別仕様車の「Edition R」も設定する。車両本体価格は423万5000円〜491万7000円。
●文:まるも亜希子/月刊自家用車WEB編集部 ●写真:マツダ株式会社
EVとしての航続距離は普段使いで安心の107kmを実現。長距離移動を行う時は走行中 にロータリーエンジンによる発電!
MX-30 Rotary-EV
世界で唯一、マツダだけが量産に成功しているロータリーエンジン。小さな排気量で高出力が得られ、軽量コンパクトで低振動・低騒音、走行性能のよさや効率のよさといった、さまざまなメリットが認められている技術だが、2012年にその搭載モデルであるRX-8の生産が終了してから、このまま過去のものとなってしまうのか、それとも復活の望みはあるのか。気を揉んでいた人も多いのではないだろうか。
MX-30 Rotary-EV Edition R(特別仕様車)。「Edition R」専用のボディカラーであるマローンルージュメタリック、専用フロアマット、MX-30 Rotary-EV専用バッジを模したマークと「Edition R」ロゴのエンボス加工入りのヘッドレスト、専用デザインのアドバンストキーを装備する。
それがついに、「ロータリーエンジンの火は消さない」という強いメッセージと共に、マツダの電動化モデルをリードするコンパクトSUV、「MX-30」とタッグを組んで復活する。新世代の“発電する”ロータリーエンジンである「e-SKYACTIV R-EV」として、新たな伝説が幕を開けることになったのだ。
その名は、「MX-30 Rotary-EV」。BEVとマイルドハイブリッドに続く、「MX-30」にとって第三のモデルはロータリーエンジンを搭載したプラグインハイブリッドだ。
新開発されたロータリーエンジン(8C型)は、発電専用ということで1ローターとなり、排気量が830ccにアップ、最高出力は53kW。ローター幅が従来の13B型の80mmから76mmになり、創成半径(レシプロエンジンのボア×ストロークに相当)は105mmから120mmになっている。
そして13B型からの大きな変更点は3つ。まず、より低燃費・低エミッション化するために燃料を直噴化したこと。微細化した燃料が低温でもしっかり気化して余分な燃料噴射を抑制しつつ、混合気をプラグ近辺に均一に分布することで、効率的な燃焼を実現している。おむすび型のローターが回る燃焼室の形状を何種類も試作して、とても狭いところで始まる点火から初期燃焼、二次燃焼以降の燃焼がスムーズに進むように苦心したとのこと。
そして2つ目が、航続距離を少しでも延ばすことに寄与する軽量化だ。これまでは鉄だったサイドハウジングをアルミ化し、エンジン単体で15kg以上の軽量化を達成。高速フレーム法と呼ばれるセラミック溶射によって、アルミシールとのなじみも向上しているとのこと。
さらに3つ目が、安心して乗り続けてもらうための信頼性を高めるため、ガスシールと摺動面を進化させて燃焼室の機密性確保、ハウジングの摩耗や摩擦を低減していることです。アペックスシールの厚みを2.0mmから2.5mmに拡大し、ハウジング表面のメッキを変更することで、潤滑油の保持性を向上している。
床下に搭載されるバッテリーユニット
この新開発ロータリーエンジンと組み合わせるのが、油冷構造を採用してコンパクトながら125kW(170PS)/9000rpmの高出力をかなえたモーター。床下には17.8kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、50Lの燃料タンクも搭載。EVとしての航続距離は107kmを実現しており、普段の買い物などは電気のみで十分に賄える実力を持ちながら、ハイブリッドとして長距離走行もしっかりとこなせる1台となっている。
走行モードはノーマル、EVのほかに、バッテリー残量を自由に設定できるチャージモードを設定。充電は普通充電だけでなく急速充電にも対応し、6kWの普通充電で約1時間50分、40kW以上の急速充電で約25分という目安とのこと。
ラゲージルームの電源コンセントを使えば、V2L(Vehicle to Load)で合計1500Wまでの外部給電が可能となっており、家庭への電力供給ができるV2H(Vehicle to Home)にも対応。目安としては、バッテリーのみで一般家庭(1日10kWh使用の場合)が約1.2日分、バッテリー+エンジンでは約9.1日分が賄えるという。
まだ走行性能は不明だが、これは「マツダが次世代にむけて存在価値を示す、飽くなき挑戦の証であり、この先の未来へ受け継いでいかなければならないアイデンティティである」という開発者の情熱的な言葉が印象的だった。公道を走れる日を楽しみに待とう!
■「MAZDA MX-30 Rotary-EV」バリエーション&価格
・Rotary-EV:423万5000円
・Industrial Classic:478万5000円
・Modern Confidence:478万5000円
・Natural Monotone:478万5000円
・Edition R(特別仕様車):491万7000円
■「MAZDA MX-30 Rotary-EV」主要諸元
・全長×全幅×全高:4395mm×1795mm×1595mm
・ホイールベース:2655mm
・トレッド前/後:1565mm/1565mm
・最小回転半径:5.3m
・乗車定員:5名
・車両重量:1780㎏
・発電用エンジン形式:8C-PH型
・発電用エンジン種類・排気量:水冷1ローター・830cc×1
・発電用エンジン最高出力:53kW(72PS)/4500rpm
・発電用エンジン最大トルク:112Nm(11.4㎏・m)/4500rpm
・使用燃料・タンク容量:無鉛レギュラーガソリン・50L
・モーター形式:MV型
・モーター種類:交流同期電動機
・モーター最高出力:125kW(170PS)/9000rpm
・モーター最大トルク:260Nm(26.5㎏・m)/0-4481rpm
・WLTCモードハイブリッド燃費:15.4km/L
・WLTCモード充電電力使用時走行距離:107km
・WLTCモードEV走行換算距離:107km
・サスペンション前/後:マクファーソンストラット式/トーションビーム式
・ブレーキ前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク
・タイヤサイズ:215/55R18
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(MX-30/ロータリーEV/EVモデル)
走行の全てをモーターで駆動 MX-30 e-SKYACTIV R-EVは、日常の幅広いシーンにおいてバッテリーEVとして使える85kmのEV走行距離を備え、ロータリーエンジンの発電によってさらなる長距[…]
マツダ787B ル・マン24時間レース29回の出場経験をもつ寺田 陽次郎氏のドライビングにより走行を行う 「マツダ787B」は、1991年の第59回 ルマン24時間レースにおいて日本車として初の総合優[…]
メーカーの枠を超えた試乗会 in 横浜! 横浜市役所に集うのは、各メーカーから販売されている9種類の次世代自動車。EV、PHV、FCVの試乗会・車両展示を行う。各メーカーの枠を超えて次世代自動車を一度[…]
人気色が追加!EVモデルは、万が一の際の電源にもなり安心! MX-30は「わたしらしく生きる」をコンセプトに、クルマとともに自然体で自分らしい時間を過ごすことを目指し、ユーザーのライフスタイルに寄り添[…]
最新の関連記事(マツダ)
東洋工業(マツダ)は、戦後復興に貢献した3輪トラックのトップメーカーだった プロ野球チーム広島東洋カープは、かつて野武士集団とも形容された個性的な市民球団だ。その歩みは長く、球団オーナーを務める松田家[…]
前期型 ロータリーエンジンの開発は、自動車メーカーとして生き残りをかけたマツダの賭けだった コスモスポーツの開発は、単なる新型車の開発ではなく、マツダの社運をかけた一大プロジェクトだった。当時の松田恒[…]
正式発表を前に、先行情報を順次公開予定 サーキットで磨き上げたマツダの技術と情熱が注ぎ込まれるスペシャルモデル「マツダスピリットレーシング」は、S耐で得た知見が注がれた特別なモデルとして注目を集めてい[…]
バブルの申し子“ABCトリオ”の中でも、飛び抜けて異端だった軽スポーツ 「AZ-1」が発売されたのは、日本国内でお金が有り余っていたと言われるバブル時代真っ只中の1992年です。 この時期は、その潤沢[…]
マツダ独自のハイパワーなPHEVシステムを搭載 美しく躍動感にあふれる魂動デザインと、心を浮き立たせる人馬一体の走りで、一定のファンを獲得したのが、近年のマツダだ。そのマツダが、北米向けに「よりステー[…]
人気記事ランキング(全体)
全方位型のツインタイプの小型ファン 先日、ヘッドレストに装着するタイプの扇風機を愛車に導入したのだが、ファンとしてはオーソドックスな丸型タイプの扇風機も使う機会があったので、便利そうな2種を紹介してい[…]
前席は快適でも、後席は意外と暑くて不快な場合も… まだまだ強い日差しが照りつけるこの季節、車内の冷房の稼働は必須と言える。クルマに乗り込んで、涼しい風に当たって「はぁ〜涼しい…」と、ひと息ついていると[…]
2人旅に特化したゆとりある空間 TR540S Joinの魅力は、まず「2人旅に特化」と割り切った設計にある。就寝人数を2名(乗車人数は5名)に絞ったことで、車内レイアウトに余裕を生み出し、広々としたダ[…]
普段はコンパクトに収納、車に常備しておくのもアリ! 乗り物に関するグッズを多数展開するブランド「CAMSOP(キャムショップ)」が、人気のジムニーをモチーフにした便利なアイテムをリリースしたので紹介し[…]
乗用ミニバンの優れた居住性と走行性に車中泊のための快適機能をプラス メティオのラクネルシリーズはバンコンから軽キャンパーまで様々なタイプの人気モデルがそろうが、今回紹介するラクネル ステイ•スイートは[…]
最新の投稿記事(全体)
スズキのBEV世界戦略車が国内導入 新型eビターラは、2024年11月にイタリア・ミラノで初公開された、スズキのBEV世界戦略車第一弾となるモデル。 「Emotional Versatile Crui[…]
剛性の積み重ねが生む一体感 2024年に実施されたゲームチェンジャーとまで言われた20式から24式への進化。その革新的な変化と比べると、24式から25式への進化は「ブラッシュアップ」と表現するのが妥当[…]
コンパクトに収まるベース仕様 RS1+のベースとなるのは、スズキ・エブリイワゴン。標準設定としてベッドマット、カロッツェリアの楽ナビ、そして諸費用を含む構成になっている。軽キャンピングカーを求める人に[…]
プロポーショニングバルブの開発で、ブレーキ液圧を適正に制御 クルマは様々な要因で荷重変化が起こり、それによってタイヤの接地性が変化し、制動力が左右される。これを防ぐために開発されたのが前後のブレーキ液[…]
日本車が手本とした、美を優先する伊デザイン。その代表が117クーペ 日本において、商品のデザインが売れ行きを大きく左右することに最初に気づいたのは、松下電器器具製作所(後の松下電器産業、現パナソニック[…]
- 1
- 2