「CX-80」VS「CX-5」VS「CX-60」 充実のラインナップを誇る、マツダ・ミドルSUV その選び方ポイントを解説 

10月10日に発売されたマツダのミドルSUV「CX-80」。このモデルが投入されたことで、マツダには「CX-60」「CX-5」を含めた3つのミドル級SUVが並ぶことになるが、選ぶ立場からすると分かりにくい面があるのは間違いない。ここではそんな3モデルの違いに注目、ベストな一台を見つける手助けになれば幸いだ。

●文:自家用車編集部

「走り」と「プレミアム」 マツダらしい魅力が詰まったSUVが揃う

日本国内での発売が始まった「CX-80」。マツダにおけるSUVラージ商品群の第2弾モデルであり、CX-3からはじまるマツダのSUVカテゴリーにおいて、トップモデルに君臨する一台だ。このモデルが投入されたことで、マツダのミドルSUVは「CX-5」「CX-60」「CX-80」という3つの選択肢から選べることになる。

開発時期が異なることもあって採用されるメカニズムや装備は異なっているが、いずれのモデルも走りの質とプレミアムの魅力を強く追求していることが特徴。グレード展開も基本的には同系統で、実用機能に徹したベーシック仕様から、ナッパレザーをシート&トリム類に用いたプレミアム仕様を選ぶことができる。

マツダのSUV「唯一の3列シート」を装備するCX-80

3モデルは、いずれもマツダらしい魅力を備えてるが、CX-80が他の2モデルに比べて決定的に異なるのが、コンパクト/ミドル級を含めて唯一、3列シートを備えている点だろう。

CX-80は、CX-60に対してホイールベースが250mm拡大。この設計の余裕分は主に後席キャビン&荷室のスペース拡大に当てられる。多くのユーザーが注目するであろうサードシート追加の利便性の向上は大きいが、それ以上に注目して欲しいのが、セカンドシートの寛ぎ感が大きく向上していることだ。

CX-60のセカンドシートは3人がけのベンチシート(5名定員)になるが、CX-80はベンチシート(7名定員)、キャプテンシート(6名定員)が選択可能。特にキャプテンシート+電動コンソール付きの最上級仕様ともなると、センスの良い上質な空間演出のおかげもあって、海外のプレミアム勢とも十分に張り合えるレベル。多人数乗車は必要だが、ミニバンには触手が動かないというユーザーにとって、気になる一台になるのは間違いないだろう。

CX-80のボディサイズは全長×全幅×全高=4990×1890×1710mm、ホイールベースは3120mm。価格は394万3500~712万2500円。

撮影車のXD-HYBRID プレミアムスポーツで価格は632万5000円。最上級グレードらしく装備機能の充実ぶりも光る。

撮影車のプレミアムスポーツはタン色のナッパレザー内装が特徴。2列目シートは中央にコンソールを備えるキャプテンシートになる。

XD Lパッケージ 4WD(価格:501万6000円)のシート表皮はレザー地が用いられている。上級グレードほどのゴージャス感はないが、プレミアムな雰囲気は変わらない。

FRプラットフォームならではの「SUVらしからぬスポーティな走りが味わえる」CX-60

2022年9月にデビューしたCX-60は、SUVラージ商品群の第1弾に当たるモデル。「自然と調和する日本人の感性を活かしたタフさと緻密さを、その骨格や空間構成から表現」とマツダが主張するだけあって、堂々としたフォルムが強く印象に残る。

パワートレーン展開は、3.3L直6ディーゼルターボ、これにモーターを組み合わせたマイルドハイブリッド仕様、2.5L直4ガソリンエンジン、これにモーターを組み合わせたPHEV仕様の全4タイプ。

エンジンを縦置きとしたFRプラットフォームを採用したことはCX-80と同じだが、少し小ぶりなサイズ感や短めのホイールベースにより、走り寄りのキャラを獲得。SUVながらマツダが育んできたスポーティな走り味が楽しめることを強みにしている。

キャビン周りの内装加飾は、シートの意匠などは異なるもののCX-80に近い仕立て。むしろここはCX-60をベースにCX-80の内装が生み出されたと解釈すべきだろう。

CX-80の実質的にひとつ下のモデルとなるCX-60。そのボディサイズは全長×全幅×全高=4740×1890×1685mm、ホイールベースは2870mm。価格は322万3000~646万2500円とCX-80よりも約70万円ほど安い設定になる。

左がCX-60、右がCX-80。この2台を真横から見てみるとCX-80の長さは数字以上に際立っている。ちなみにCX-80の先代相当となるCX-8と比べても、全長で65mm、全幅で50mmほど拡大されている。

撮影車は25S Sパッケージで価格は322万3000円。

2.5Lガソリン車のベーシック仕様になるが、この価格でFRレイアウトのミドルSUVを狙えるのは魅力。ワゴン的にSUVを使いたいユーザーならば一見の価値あり。

「たゆまぬ進化とアップデートで熟成の域に到達した」CX-5

現行CX-5がデビューしたのは2016年12月だが、ほぼ毎年のように改良を重ねており、2021年11月には大幅なマイナーチェンジを実施。輸入車で見られるような後期モデルになるほど熟成され完成度が高まる、を実践しているモデルといえる。マツダの世界販売のなかでもかなりのシェアを誇るモデルであり、2022年は同社の世界販売台数の約33%を記録するほどのヒット作となっている。

搭載されるパワートレーンは、2Lおよび2.5L、SKYACTIV-G直4ガソリンエンジンと、2.2L、SKYACTIV-D直4ディーゼルターボエンジンの計3タイプが用意。駆動方式はFFが基本で4WDも用意される。パワーユニット&トランスミッションは、CX-80&CX-60に比べると一世代前のユニットになるが、前述した頻繁に実施される改良進化の恩恵もあって、高い競争力を保っている。

CX-5のボディサイズは全長×全幅×全高=4545×1840×1690mm、ホイールベースは2700mmとなる。CX-80やCX-60と比較するとグッとコンパクトに感じられるが、都市部を含め、日本の道路事情を考慮するとこれくらいのサイズ感がちょうどいい。

撮影車はXD レトロスポーツエディションで価格は374万5500円。

マイナーチェンジ時に登場したレトロスポーツエディションは、洗練されたインテリア加飾が加えられた上級仕様の特別仕様車。コスパ良くプレミアムな魅力を楽しめる一台。

3列シートがマストであればCX-80、コスパに優れるCX-5という選択肢もアリ

家族構成上、3列シートが必要ではあるが、生活感のあるミニバンは選びたくない……。かといって、輸入車では維持費に不安がある。そんなユーザーにとって、CX-80のディーゼルターボ車はうってつけのモデルではないだろうか。

ベーシック仕様でも必要にして十分な装備機能は備わっているし、シートやトリム類の加飾まわりがアップグレードされていくグレード展開のバランス感も上手。さすがにモーターが組み合わされるハイブリッド系グレードは価格が大きく上がってしまうため万人向けとは言い難いが、価格アップに見合った動力性能の向上と国産車離れした洗練された雰囲気の内装を選べることは魅力的だ。

3列シートにこだわらないというならば、CX-5という選択肢もアリだ。毎年のように細かなアップデートを繰り返し、もはや熟成の域に達しているといっていいモデルで、2.2Lディーゼルターボ車の力強い走りはいまでも全く見劣りを感じない。バランスの良いパッケージもあってリアルワールドでの使い買っても良好。欠点らしき欠点が見当たらない、知られざる優等生モデルといってもいい。

ちなみにCX-60は前述の2モデルに比べると、走り寄りのキャラを強く感じてしまう。切れの良いハンドリング性能はならではの魅力だが、少しユーザーを選ぶタイプのクルマだ。

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