
2025年に25年ぶりの復活を果たしたホンダ「プレリュード」。その登場にともなって、“デートカー”と呼ばれた旧いモデルにも注目が集まっていますが、その“デートカー”として認知されたのは実は2代目で、その前に初代となるモデルが存在しているんです。ここでは、その初代「プレリュード」にスポットを当てて、少し掘り下げていきましょう。
●文:往機人(月刊自家用車編集部)
ライバル車に比べると「大人」のテイストを漂わせるスタイル。しかし、斬新なデザインで当時の若者を魅了したセリカやシルビアに比べると「地味」な印象は否めなかった。
初代プレリュードはことさらに高性能を謳わず、見るからに若者にウケそうなデザインも採用しなかった。開発陣が狙ったのは成熟した北米市場の大人、そして女性だったのだ。
誕生は排出ガス規制でがんじがらめの時代
初代の「プレリュード(SN型)」が発売されたのは1978年です。
1970年代は排出ガスの有害成分との熾烈な戦いと言っていいでしょう。1960年代に大きく発展を遂げていた北米の工業と、それに比例して大幅な販売台数の増加を果たした自動車の影響で、社会は深刻な健康被害の増加というリスクに直面しました。
その状況をシビアに受け止めた政府は、段階的に排出ガスの有害成分を減少させていく規制(通称:マスキー法)を1970年に設けます。少しずつ規制値を厳しくしていき、1976年までに有害物質を規制施行以前の1/10にするというものです。
それまでは大量消費こそが経済発展の証だという風潮でガソリンを撒くようなエンジンのクルマを作っていた北米の自動車メーカーは、1976年の直前までその対応策に目処が立たない状況でした。そこにいち早く打開の一石を投じたのがホンダです。本田宗一郎の指揮の下、バイクの精密なメカニズムをウリとした高性能車を続々とリリースしていたホンダは、その矛先を低公害エンジンに振り向けます。
そうして誕生したのが、日本のみならず世界的にもエンジンの歴史に殿堂入りを果たしている「CVCC」機構を搭載した「EB1型」の 1.2 L 直列4気筒 SOHCエンジンです。このエンジンは初代のシビックに搭載され、厳しいマスキー規制を初めてクリアしたとして北米を中心に大ヒットとなりました。
その「CVCC」採用車の第2弾が兄貴分の「アコード(SJ/SM型)」で、「プレリュード」はその「アコード」をベースに企画されたスペシャリティカーです。
初代プレリュードのベースとなった初代アコードは、シビックより一回り大きい「中型ハッチバック」として誕生した。シビックに採用された低公害エンジン「CVCC」を搭載した静粛性の高いモデルで、北米市場でも通用する質感と快適性を備えていた。
日本のスペシャリティカーの源流3車種のひとつ
1970年代の日本は“高度成長期”に入っていて、主要産業の自動車市場もおおいに活気が沸き立っていました。その背景を受けて、主要な乗用車メーカーは、贅沢を楽しむ“スペシャリティカー”というジャンルに注目します。当時の代表車種は「トヨタ・セリカ」と「日産・シルビア」です。
厳しい排出ガス規制(日本ではマスキー法に同調した“昭和51年排出ガス規制”を実施)にいち早く対応させたホンダは、その勢いに乗り、小型乗用車「アコード」をベースにしたスペシャリティカー「プレリュード」をリリースします。この時代のスペシャリティカーのジャンルは、「プレリュード」の登場で三つ巴の展開となしました。
各車種はそれぞれの路線で発展しますが、「プレリュード」はこの次の代の「AB/BA1型」で“デートカー”と呼ばれるひとつの地位を確立させますが、その基礎となったのがこの「初代・プレリュード」というわけです。
他の2車種とは異なった路線で勝負
先に販売されていた「セリカ」とそれに追随した「シルビア」は、北米で大ヒットを記録した「フォード・マスタング」をお手本とした、パワフルなエンジンをスポーティなシャーシに搭載するという路線だったのに対して、「プレリュード」は玄人好みのハンドリング重視な味付けの方向性で、どちらかというと欧州の伝統的なクーペを意識したパッケージとしていました。
そのため、ライバル車がパワフルなエンジンの性能を発揮させることに重きを置いた“男のロマン”を体現する楽しさを前面に出していましたが、「プレリュード」は軽快で確かなハンドリング特性を楽しんでもらうというマニアックな味付けがされていたようです。この味付けは、まだモータリゼーションが成熟していない日本国内ではあまり響かず、販売台数も伸びませんでしたが、北米仕様では「CVCC」なおの先進機構を盛り込んだ“インテリジェントなコンパクトクーペ”というジャンルの代表車種になるほどの地位を確立しました。実際の30万台超の生産台数のうち、約8割が北米を中心とした海外市場で販売されたようです。
全車に搭載された1.8LのCVCCエンジン。改良で90PS-95PS-97PSへとパワーアップしていった。
スペシャリティカーらしい先進装備が満載
「プレリュード」には、「CVCC」だけではない先進装備が多く採用されていて、スペシャリティカーとしての魅力を高めています。エンジンは「シビック」の「EB1型」をスープアップさせて1.8Lとした「EK型」を搭載。出力はライバル車に及びませんが、低排出ガス性能と優れた燃費を実現しながら、ホンダらしい軽快感のある吹け上がりの特性を持っています。
足まわりは「アコード」ゆずりの前後マクファーソンストラット式を採用。バンプステアを積極的に活用した軽快感の高い味付けとなっています。シャーシはアコードのものをベースにしつつ、フレームを一体化したモノコック構造や、2重のAピラーを採用するなど、高剛性を意識した設計となっていて、それが確かなハンドリング特性に表れています。
内装では、速度計と回転計を同軸に配置した“集中ターゲットメーター”や“クルーズコントロール”、“ナビゲーションコンピューター”などを用意。モデル中盤で国産初となる“電動サンルーフ”を標準装備するなど、目新しさも演出として強く打ち出していました。
初代プレリュードは軽快で確かなハンドリング特性を楽しんでもらうというマニアックな味付けがされていた。
全車に4本スポークのステアリングと集中ターゲットメーターを導入。またデフロスターやベンチレーター吹き出し口をインパネ一体成型としたため、レッグスペースが開放的になった。
フロントシートはプライベートカーらしいこだわりの設計。ヘッドレストは高さだけでなく前後方向の調整も可能。またシート表皮は4グレードで3種類を使い分け、XEとXRには輸入皮革を使ったレザーシートもオプション設定された。後席は2人掛けで、トランクスルー機能はなし。
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