「打倒カローラ&サニー!」 50年前、三菱が放った美しすぎる刺客【ランサーセレステ】とは?│月刊自家用車WEB - 厳選クルマ情報

「打倒カローラ&サニー!」 50年前、三菱が放った美しすぎる刺客【ランサーセレステ】とは?

「打倒カローラ&サニー!」 50年前、三菱が放った美しすぎる刺客【ランサーセレステ】とは?

1975年に三菱自動車から誕生した「ランサーセレステ」は、当時圧倒的な人気を誇ったカローラクーペやサニークーペに対抗するため、初代ランサーの優れた基本性能をベースに開発された流麗なファストバッククーペだった。車名の「青い空(セレステ)」には、オイルショックや厳しい排ガス規制という逆風の時代に、クリーンな環境性能で立ち向かう三菱の決意が込められていた。若者の心を掴むスポーティなエアロスタイルと、大型ハッチゲートによる高い実用性を両立。さらに、わずか900kg台の軽量ボディがもたらす軽快な走りに加え、「MCA-JET」や「サイレントシャフト」といった独自の先進技術により、スポーツカー不遇の時代にあっても痛快な走りと環境性能を見事に両立させた名車だった。

●文:月刊自家用車編集部

サファリラリーやサザンクロスラリーを制覇したランサーの直系ゆえに、そのメカニズムはセレステにも受け継がれている。

セレステ(青い空)に込められた、低公害時代に真っ向から立ち向かう決意

1970年代半ば、自動車業界にとってまさに「冬の時代」が訪れていた。オイルショックによる燃料価格の高騰で省燃費志向が急速に高まる一方、世界一厳しいと謳われた「昭和50年排出ガス規制」が施行された。これにより各メーカーのスポーツモデルは軒並み牙を抜かれ、パワーダウンを余儀なくされてしまった。

そんな逆風の中に登場したのがランサーセレステだ。ラテン語で「青い空」を意味するその車名には、深刻化する大気汚染問題に対して「クリーンな青空を取り戻す」という三菱自動車の強い切実な願いと、低公害時代に真っ向から立ち向かう決意が込められていた。

ランサーセレステ1400GL(1975年)

空気抵抗を徹底的に低減させた流麗な「クリーンエアロスタイル」を採用。

大型ハッチバックにより、スポーツクーペでありながら高い積載性と優れた実用性を実現していた。

ランサーセレステ1600GSR(1975年)

最上級グレードである1600GSR。1.6L直4SOHCを搭載したスポーツグレードであった。前期型は丸目ヘッドランプ。

1975年のデビュー当初(初期型)は上下逆さまの「L字型」テールランプを採用していた。

主要諸元(ランサーセレステ1600GSR・1975年)

●全長×全幅×全高:4115×1610×1330(㎜)●ホイールベース:2340(㎜)●車両重量:940(kg)●最小回転半径:4.8(m)●エンジン型式・種類:4G32型・直4SOHC●総排気量:1597(cc)●最高出力:100ps/6300rpm●最大トルク:13.5kg-m/4000rpm●サスペンション前/後:ストラット/半だ円板バネ●ブレーキ前/後:ディスク/ドラム●タイヤ:177/70HR-13

デビュー年の翌1976年にマイナーチェンジされ、リヤコンビランプは逆L字型から横一文字型に変更。また、クォーターピラーに設定されたシースルー ウインド ガーニッシュも若干形状変更されている。

機能美と実用性を兼ね備えた、流麗な「クリーンエアロスタイル」

当時の若者たちは「経済的でありながら、スタイリッシュでスポーティな車」を求めていた。セレステのパッケージングは、そのニーズへの完璧な回答だったのだ。 外観は、空気抵抗を徹底的に低減させた流麗な「クリーンエアロスタイル」を採用。スポーツカーらしい低く構えた美しいファストバッククーペのシルエットを持ちながら、リアには当時としては画期的な大型のハッチゲートを備えていた。

これにより、スポーツカー特有の「荷物が積めない」という弱点を克服し、レジャー用品をたっぷり積み込める高い積載性と優れた実用性を実現していた。 さらに、斜め後方の視界を確保しつつデザインのアクセントにもなった「シースルーウィンドウ」をリアクォーターピラーに配置。こうした斬新な意匠は、感度の高い若者たちの心を瞬く間に掴むこととなった。

フロントシートは、ホールド性の高いセミバケットタイプを採用。ファストバッククーペスタイルだが、リア席の居住空間も確保されていた。※画像は「システム80」を搭載した2000GT

ラリー譲りのシャシーと優れたパワーウェイトレシオから発揮する動力性能

排ガス規制によってスポーツカーが輝きを失いつつある中、セレステは走りの面でも確かな実力を誇っていた。その秘密は、世界過酷なラリーフィールドで大活躍していた「初代ランサー」の素性の良いシャシーをベースにしたことにある。 デビュー当初のトップグレードである1600GSRには、最高出力100馬力(ps)を発揮する1.6L直列4気筒SOHCエンジンが搭載されていた。

特筆すべきは、その圧倒的な軽さだ。車両重量はわずか940kgに抑えられており、この優れたパワーウェイトレシオによって、当時の同クラスの車の中では群を抜く、軽快で痛快な加速力を発揮した。重いボディにパワーのないエンジンという当時のトレンドとは一線を画す、本物のスポーツクーペの走りを提供したのだ。

時代を先取りした環境性能(MCA-JET)と快適性(サイレントシャフト)

三菱は単に車を軽くするだけでなく、持てる技術の粋を集めて環境性能と快適性の両立を図っていた。 その代表的なものが、独自の低公害エンジンシステム「MCA-JET(ジェットバルブ付き燃焼室)」の導入だった。これにより、走りの楽しさをスポイルすることなく、当時の極めて厳しい排出ガス規制を見事にクリアしていたのだ。 さらに、三菱の特許技術である「サイレントシャフト(2連バランスシャフト)」をエンジン内部に組み込んだことも画期的だった。

これは、直列4気筒エンジン特有の不快な振動を打ち消す画期的な機構で、結果として上級の6気筒エンジンやV型エンジンに匹敵するほどの滑らかな回転フィールと高い静粛性を実現した。その結果、スポーティなだけでなく、長距離ドライブでも疲れにくい快適な居住空間を生み出したのだ。

MCA-JET
吸気・排気バルブのほかに第3のバルブ=ジェットバルブが吸気バルブと同じタイミングで開き、燃焼室内に超希薄な混合気を送り込むというシステム。

サイレントシャフト
クランクシャフトの両側に設置され、エンジン回転の2倍の速度で回転。これにより上下振動やローリング振動も制御するというもの。これにより4気筒エンジンでありながら、上位エンジン並みの静粛性を実現した。

ライトウェイトクーペからグランドツーリングカーへと進化した「2000GT」

モデル末期となる1979年には、より豊かで余裕のある走りを求められ、最高峰グレード「2000GT」が追加ラインナップされる。 このモデルには、よりトルクフルな2.0Lエンジンが搭載されただけでなく、強力な動力を確実に受け止めるための「4輪ディスクブレーキ」が奢られていた。これにより、セレステは単なる若者向けのライトウェイトクーペから、大人が余裕を持って長距離を駆け抜けることができる本格的なグランドツーリングカーへと変貌していくことになった。

トヨタ・セリカや日産・シルビアといった強力なライバルがひしめくスペシャリティカー市場において、ランサーセレステは「ラリー譲りの確かな走行性能」「空気力学に基づく美しいスタイリング」「ハッチバックによる高い実用性」、そして「MCA-JETによる優れた環境性能」という、相反する要素を奇跡的なバランスで融合させた1台だったのだ。 その魅力は国内にとどまらず、北米市場でも「プリムス・アロー」の名称で輸出され、スポーティなコンパクトクーペとして大ヒットを記録した。スポーツカーにとって不遇の時代にあっても、決して走りの楽しさと美しさを諦めなかったランサーセレステは、まさに「青い空」という名にふさわしい希望の光を放った名車として、今も語り継がれている。

ランサーセレステ2000GT(1980年)

1979年に追加ラインナップされたG52B型2L直4SOHCエンジンを搭載した2000GT。排気量アップで走りに余裕が出たため、ライトウェイトクーペからグランドツーリングカーへと変貌していった。

主要諸元(ランサーセレステ2000GT・1980年)

●全長×全幅×全高:4155×1620×1345(㎜)●ホイールベース:2340(㎜)●車両重量:995(kg)●最小回転半径:4.8(m)●エンジン型式・種類:G52B型・直4SOHC●総排気量:1955(cc)●最高出力:105ps/5400rpm●最大トルク:16.5kg-m/3500rpm●サスペンション前/後:ストラット/半だ円板バネ●ブレーキ前/後:ディスク/ディスク●タイヤ:175/70HR13

G52B型2L直4SOHCエンジン

三菱テクノロジーが結集したMCA-JETシステムに加え、サイレントシャフトを採用したアストロン80エンジン。最高出力105ps/5400rpm、最大トルク16.5kg-m/3500rpmを発揮した。

ボディ同色のカラースポーツミラーは、2000GTの専用装備だった。

セレステのアイデンティティであるクォーターピラーに設定されたシースルー ウインド ガーニッシュ。

スポーツグレードは、6連の丸型メーターが並ぶレイアウトを採用した。ドライバー正面に大径のスピードメーターとタコメーターを配置し、油圧計、電流計、水温計、燃料計などの独立したサブメーターを配置した。センターコンソール下側に装備されているのは。システムオーディオ「システム80」。

セレステのためにラインナップされたカーオーディオ「システム80」とは

「システム80」は、1977年6月にランサーセレステの特別グレード「1600GT システム80」に設定された、当時の若者向け高級カーオーディオ・システムのこと。このシステムは、1980年に追加ラインナップされた2000GTにも標準設定された。

センターコンソールパネルにオーディオ操作系が集約され、中央にはFMチューニング用の特徴的な円形ダイアルを配置。当時の標準的なカーラジオとは一線を画し、低音補正、ノイズ防止機能、フェーダー調整(前後スピーカーの音量バランス調整)などの豊富な機能が搭載されていた。高音質なリア2ウェイ式スピーカーなどを採用し、三菱の音響ブランドである「DIATONE(ダイヤトーン)」のシステムコンポが組み込まれるなど、音にこだわった特別装備であった。

後期型2000GTと1600GTシステム80に標準装備されたオーディオシステム「システム80」。オーディオデッキはパイオニア製、スピーカーは三菱ダイヤトーンという音にこだわったコラボシステムであった。デッキ部分はFMマルチ+カセット、スピーカーは2ウェイ6スピーカー。

ランサーセレステ1600GTシステム80(1980年)

高品質オーディオシステム「システム80」を搭載した1600GTシステム80。角型ヘッドランプは、1977年のマイナーチェンジで変更。

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