
日産自動車は、7月22日にNISMOカラーをまとったフォーミュラーEマシンと同日発売された新型「リーフNISMO」を公開した。記者会見では、それぞれ3つの見どころが紹介されたので、どのような内容だったのかをレポートしよう。
●文/写真:鈴木ケンイチ
アスファルトに映える特注カラーを、特別なNISMOに採用
日産が7月22日に発表した2つのモデルは、電動化時代における「走りの美学」をアピールするものだった。
その2つのモデルとは、今週末7月25日と26日にかけて東京の市街地を走る「ABB FIAフォーミュラーE世界選手権シーズン12(東京E-Prix)」の参戦マシンと、同日発売された新型「リーフNISMO」なのだが、ともに最近のEVでよく耳にする「効率」や「環境性能」というアプローチとは異なる、電動化時代のクルマの楽しみ方が提示されていたのだ。
アスファルトの深いグレーと空の青が溶け合ったようなソリッドカラー「NISMO Stealth Gray」に、鮮烈な赤を配した特別な装いのNISMOカラーが施された東京E-Prix参戦マシン。NISMOドライバーのノーマン・ナトー選手も「日産のアイデンティティそのもの」と感嘆している。
同時にお披露目された「リーフNISMO」もまた、単なる雰囲気を楽しむドレスアップ仕様とは一線を画している一台。専用チューニングされたサスペンションとエアロパーツで走りの骨格を徹底的に研ぎ澄ましている。
コンマ一秒の死闘を深掘りする「3つの視点」
今週末、東京の市街地サーキットで激戦の火蓋が切られる「ABB FIAフォーミュラーE世界選手権シーズン12」。日産がこの東京E-Prixへ送り込むのは、特別なワンオフカラーを纏ったマシンだ。青空と路面の中間を射抜いたソリッドグレー「NISMO Stealth Gray」に鮮烈な赤を配したカラーリングは、まさに日産のアイデンティティそのもの。NISMOドライバーのノーマン・ナトー選手も「早く乗りたい」と決戦の舞台への抱負を熱心に語っていたのが印象的だ。
この最先端バトルを楽しむべく、チーム陣営から提示されたのが「3つの視点」だ。
まずトマソ・ヴォルペ監督が挙げた「チーム・プリンシパル・カメラ」は、中継に映し出される指揮官らの喜怒哀楽を追うもの。極限状態の判断が暗転と歓喜を分けるからこそ、そのリアルな表情にこそレースのドラマが宿ると語る。ヴォルペ監督は「良い成績を出して喜ぶ表情に注目してほしい」という。
続いてナトー選手が強調した「クオリファイング・スピード」とは予選スピードのこと。タイトで追い抜きが極めて困難な東京のコース特性を見越したもので、ここでは「グリッドのどこに並べるか」が勝敗の8割を決定づけるという。予選をよい位置で通過して、なるべく前で走ることが重要と話していた。
そしてエンジニアの岩瀬拓朗氏が明かしたのが、二人のNISMOドライバーによる「オーバーテイクの美学の違い」だ。ミリ単位の隙間をすり抜けるオリバー・ローランド選手の魔法のようなアタックと、高速エリアで力強く相手をねじ伏せるナトー選手の豪快な技。それぞれのドライバーに個性があり、その弾ける力強い走りこそ、観客の胸を焦がす最大の醍醐味になるはずと語る。
こんな熱い抱負を耳にすると、ガソリンの匂いとともに時代を駆け抜けたモータースポーツの熱量が、電動化時代でも何ひとつ失われることなく脈打っていることが再確認させられる。
「東京E-Prix」に参戦するマシンには、特別なワンオフカラーを採用。アスファルトの深いグレーと空の青が溶け合ったようなソリッドカラー「NISMO Stealth Gray」に、鮮烈な赤を配した特別な装いがプラスされる。
ノーマン・ナトー選手は、新採用の「NISMO Stealth Gray」基調のカラーリングを「日産のアイデンティティを象徴している。すごくいいですね!」と大絶賛。トークセッションでは、追い抜きが難しい東京コースでの予選スピードの重要性も語っていた。
サーキットの情熱を公道へ宿す「リーフNISMO」
そして、このサーキットで磨かれたNISMOの技術と思想は、公道を走る「リーフNISMO」へと地続きで注がれる。会場には正式発売されたばかりの新型も置かれ、日産の開発陣からその見どころが語られた。
フォーミュラーEと同じNISMOカラーリングをまとった新型「リーフNISMO」。レースの最前線で磨かれた知見は、そのまま市販スポーツEV「リーフNISMO」へと還元される。「B5 NISMO」の660万1100円から、最上級の「B7 NISMO RECARO装着車」の722万7000円までラインアップされる。
まずは、商品企画の饗庭氏が掲げた「駿足と滑空感」という相反する要素が注がれた走りの味だ。ワインディングでは路面を強烈に掴んで意のままに曲がるダイナミックな運動性を誇る一方で、高速巡航時にはまるでグライダーのように滑らかで静かな走りをもたらす。EV特有の加速力にNISMO独自のシャシー性能を掛け合わせることで、圧倒的な「走る歓喜」を実現したという。
次はデザイン部の森田氏が語った「性能のためのカタチ」を実現していることも見逃せない。一見して目を惹く力強いエアロパーツは、単なる装飾ではなく、空気抵抗(CD値)を極限まで削ぎ落としつつ、車体を地面へ押し付けるダウンフォースを確実に発生させる、サーキットの空力思想を反映した機能美そのものとのこと。
そして3つ目が、開発主査の成冨氏が述べた「人とマシンの神経の共有」というアプローチだ。サスペンションの剛性や減衰力の煮詰めはもちろんのこと、なんとオプションのレカロシートの固定角度にまでミリ単位で固執。ドライバーの身体をブレさせず、路面からのインフォメーションを直感的に伝えることで、マシンと身体がひとつになる濃密な一体感を創り上げている。
新型リーフNISMOの開発陣が提示した「オレの一押しポイント」。左から商品企画の饗庭氏(駿足と滑空感)、デザイン部の森田氏(性能のためのカタチ)、開発主査の成冨氏(一体感の追求)。
効率や静粛性の先にある、日産が提示した「走る歓喜」の正体
コース上で火花を散らすレーシングカーと、職人魂を注ぎ込まれた市販クロスオーバー。
主戦場は異なっていても、2つの開発現場の描写を重ね合わせたとき、日産が今この電動モンスターを世に解き放った真意が浮かび上がってくる。最前線で磨いた制御の知見と走る歓喜を、そのまま公道へと還元すること。それこそが、電動化の未来が退屈なものではないと世界へ高らかに宣言する、日産の回答として感じることができたのだ。
日産の「走りの美学」を体現する2台。東京E-Prix参戦マシンと新型リーフNISMOが「NISMO Stealth Gray」で競演。レースの知見が公道へ還元される、電動モンスターの誕生だ。
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