走れて、安くて、全部つき!ロードスターPS(ピュアスポーツ)は「300万円台」で手に入る「後悔しないスポーツカー」だった│月刊自家用車WEB - 厳選クルマ情報

走れて、安くて、全部つき!ロードスターPS(ピュアスポーツ)は「300万円台」で手に入る「後悔しないスポーツカー」だった

走れて、安くて、全部つき!ロードスターPS(ピュアスポーツ)は「300万円台」で手に入る「後悔しないスポーツカー」だった

マツダ・ロードスターの現行モデル(ND型)が登場してから12年目を迎える。1989年の初代(NA型)誕生以来、35年以上にわたり世界のライトウェイトスポーツカーを代表し続けてきた稀有な存在だ。

●文:川島茂夫

電動化の波に抗う「純粋スポーツ」

ロードスターの昨年度の国内販売台数は、1万台を超えている。純ガソリンエンジンの2シーターで、身の回りの小物を置くスペースにも困る非実用的なモデルであることを考えれば、この実績は目を見張るものがある。

この背景には、電動化が急速に進むなかで「純粋なライトウェイトスポーツカーを新車で愉しめる最後の機会かもしれない」というファンの危機感や強い思いがあるのだろう。将来BEV(電気自動車)のスポーツカーが登場したとしても、内燃機関がもたらす軽量でダイレクトな走りの感覚まで完全に再現できるかは不透明だからだ。

現行のソフトトップモデルは、原点回帰として1.5Lの自然吸気エンジンを搭載している。今回のマイナーチェンジでも基本コンセプトに変更はないが、主なトピックは2026年10月から適用される騒音規制への適合と、それに伴う走行性能の最適化だ。特に、規制対応のために新採用された静音タイヤとのマッチングが大きなテーマとなっている。

そしてもう一つ、今回の改良には明確なマーケティング上の狙いがあることも見逃せない。2015年のND登場から10年以上が経過するが、味付けの異なる新グレードをラインナップに加えることで、初期型のND型を乗り続けている既存オーナーに対して、最新モデルへの乗り換えを促したいというマツダの思惑もあるようだ。

12年目の改良では、環境対応と走り味の磨き上げを実施

サスペンションの変更が行われたのは、ビルシュタイン製ダンパーを備える「PS」と「RS」の2グレードのみ。従来のタイヤよりトレッドコンパウンドとケース剛性が柔らかい静音タイヤの特性に合わせ、足回りを再チューニングしている。

一方、標準サスペンションを備えるその他のグレード(Sなど)は足回りを踏襲しつつ、電動パワーステアリング(EPS)のアシスト特性を見直した。実際に標準サスの「S」に試乗してみると、切り始めの回頭感がスムーズになり、余計な挙動の収束性も向上。操舵量や操舵速度に応じた制御の最適化が静音タイヤと見事にマッチし、ロードスター本来の「軽快でクルマと対話するような一体感」を際立たせている。
こうした軽快感重視の標準グレード系に対して、今回の主役である「PS」は走りのベクトルが大きく異なる。

モータースポーツからの味を引き継ぐ、新グレード「PS」

「PS(ピュアスポーツ)」はその名の通り、マツダのモータースポーツ活動から得た知見をフィードバックしたパフォーマンス追求型モデルだ。専用チューニングのビルシュタイン製ダンパーに加え、ブレンボ製ベンチレーテッドディスク&対向4ピストンキャリパー、RAYS製16インチ鍛造アルミホイールなどを標準装備している。

モータースポーツの知見というと、ガチガチに固められたハードコアな走りを想像しがちだ。確かに軽量志向のグレードと比べればリヤの足回りが締まった印象を受けるが、限界性能だけを追う扱いづらいクルマではない。加減速やステアリング操作で荷重移動をコントロールし、サスペンションをストロークさせるロードスター特有の楽しさは健在で、日常での乗り心地も十分に快適だ。

ただしPSは、日常域の軽快感以上に、限界走行時における正確なコントロール性とトラクション性能を優先してセットアップされている。これはかつてRSが担っていた領域であり、PSはその正統な進化系と捉えてよい。

雨上がりの公道というシチュエーションではPSのポテンシャルをすべて引き出すことはできなかったが、スプリングを固めつつ減衰力を抑えることでリヤの不要な沈み込みを防ぐという狙いは明確に感じられた。コーナーで力強く路面を捉え、トラクションを活かしてスムーズに加速していく走りが非常に心地よい。

極限状態での扱いやすさと効率的なトラクション性能を突き詰め、サーキット走行まで見据えて仕立てられたのがPSの真価だ。標準系モデルに対するマニアックな変更点が魅力だが、購入時にはRSとの価格バランスも気になるだろう。

ロードスターPSの走りは標準系モデルとは別物。スプリングを硬めつつ減衰力を低く抑えた独特のサスチューンにより加減速や操舵に応じた荷重移動を素直に生み出している。これによりコーナーでの力強いトラクションを感じやすい美点を持つ。

ロードスターPSのフロントスタイル。 新塗装色「ジンクグリーンメタリック」の採用も最新改良の目玉のひとつ。

ドライバーを中心に配置された大型アナログメーターや手応えのあるMTシフトノブなど、走りに没頭するための機能美が凝縮されたインテリアの魅力も健在。

荷重移動の感覚をドライバーの腰へと正確に伝えるスポーティシート。ホールド性と快適な座り心地を両立しており、サーキットでのスポーツ走行から長距離のグランドツーリングまで幅広くカバーする。

300万円台で本格スポーツカーが楽しめる「神コスパ」

走行メカニズム面では、PS(366万3000円)にはブレンボ製ブレーキが標準装備されるが、RS(374万円)ではセットオプション(約33万円)になっている。PSとRSの車両価格差は約8万円だが、装備水準を同等とした場合の実質的な価格差は41万円ほどに広がる。RSはレカロシートが装着されるなど内装仕立てに違いはあるが、純粋な走行機能に絞って考えればこの差は小さくない。

サーキットでの本格的なスポーツ走行をカバーできる装備を備えつつ、日常のドライブでも走る歓びを深く味わえる。実用性のハードルさえクリアできれば、現実的な予算で手に入る本格スポーツカーとして、ロードスターPSは間違いなく最良の選択肢のひとつだと思う。

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