
2024年12月にクロストレックに追加された本格ハイブリッド「S:HEV」は、スバル車らしい走りが楽しいハイブリッドモデル。デビューしたばかりということもあって納期も少し長めと、どうやら好調なスタートを切ったのは間違いなさそうだ。ここではそんなクロストレックS:HEVの気になるポイントを4つピックアップ。検討する際の参考にしてもらえれば幸いだ。
●文:川島茂夫(月刊自家用車編集部)
S:HEVハイブリッドシステム:これまでのスバルハイブリッドとはまるで別物
余裕十分の走破性能に加えて、燃費改善にも期待大
これまでスバル車には、マイルドハイブリッドのe-BOXERが用意されていたが、このS:HEVは、システム内に動力分割機構を用いることで、エンジン(内燃機)とモーター(電動機)の両方の駆動力を効率的に使えることが強み。ざっくりいうとトヨタのハイブリッド車に近い構成で、長年スバル車の泣きどころのひとつになっていた、燃費の改善を狙えるシステムだ。
さらにドライバビリティの良さも見逃せないポイント。クロストレックはオンロードツアラーとしても高く評価されているモデルだが、S:HEVは運転のしやすさや長距離快適性の面でも大きく貢献している。実用走行でのほとんどのシーンを高効率にこなせるのは間違いなく、走りの質や走破性能を重視する向きが多いスバル好きとの相性は間違いなく良いだろう。
スバルには、ひとつ上のSUVとしてフォレスターが設定されているが、このクロストレックS:HEVモデルは、このあたりの車格差を感じさせないプレミアムグレードの役割も与えられている。価格は「Premium S:HEV」が383万3500円、その上の「Premium S:HEV EX」が405万3500円。
走り:幅広い速度域で豊かさを感じるパワーフィールが印象的
高性能スポーツというよりも、コンフォートモデルを意識させてくれる
搭載エンジンの最高出力は160ps、最大トルクは21.3kg-m。この数値は2.5LのNAユニットとしては、かなり控えめの数値といえる。排気量の割りに非力と勘繰りたくもなるが、実際の走行で得た印象はまるで逆。88kW/270Nmを発揮する駆動モーターのアシスト力が上手に作用している。
坂道などでのエンジン回転数の変化も緩やかで、内燃機車のような素直なコントロール性が際立つほか、出足も素直な盛り上がりで唐突な電動感みたいなものは皆無。高性能スポーツというよりも、コンフォートモデルを目指した特性で、幅広い速度域で豊かさを感じるパワーフィールが印象的だ。定評のあるオンロードはもちろんのこと、ラフロードでも走りのグレードアップ感を実感することができる。
中央部に11.6インチの縦型タッチディスプレイを配置し、最新世代の車載ITの導入も積極的。ブラックと明るいグレーのコントラストが際立つ内装に、ブレイズガンメタリックのアクセントを加え、洗練したスポーティーさを表現している。
雪道性能:S:HEVはシンメトリカルAWDとの相性も良好
滑る路面でも確実に駆動力を制御でき、冬のツーリング&レジャーの安心感を底上げしてくれる
体験した雪道は、ドライ&ウェットのシャーベット路から、雪が踏み固められた圧雪路まで、実生活でありがちな状況だった。ブラインドコーナーなどの見えない危機に神経を使うシチュエーションだったが、スバル自慢のシンメトリカルAWDの恩恵もあって、微妙な加減速もしやすく抜群の安心感を実感。
オンロードでの美点はスノーシーンでも健在で、神経質にならずとも済むドライバビリティの方向性は一緒と考えていい。この冬のシビアな路面に対して優れた資質を持つことは、クロストレックが持つツーリング&レジャーの魅力を確実に底上げしている。
クロストレックのベストバイになれるか?:走り&装備機能に価値を見出すユーザーにはオススメ
S:HEV車のベストは、上級のPremium S:HEV EXで決まり
S:HEV車は、最上級仕様のPremium S:HEV EXともなると400万円の大台を超えてくるだけに、コスパ視点ではe-BOXER車(マイルドハイブリッド)に軍配が挙がるが、動力性能の余裕やドライバビリティの洗練された上級モデルらしい走り&装備機能を重視したいというユーザーにとっては、S:HEV車は検討する価値はあるだろう。
その場合、選ぶべきグレードは、S:HEV車の上のグレードになるPremium S:HEV EXで決まり。理由としては、EXなしのPremium S:HEVは、走行性能に関わるハードや機能は共通しているのだが、独立タイプナビのOP設定がないことや、アイサイトXの安全&運転支援機能が備わっていない。両モデルの価格差は22万円ほどなので、この程度の差ならケチる必要はありえない。Premium S:HEV EXは、プレミアムなボクサーエンジンモデルとして、金額に見合った満足を得ることができるはずだ。
Premium S:HEVとPremium S:HEV EXの価格差は22万円。おもな機能と装備の差は部分的な自動運転機能を備えたアイサイトX、DAのナビ機能の追加などになる。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(クロストレック)
新色2カラーの追加に加えて、安全装備を大幅に引き上げ クロストレックは、コンパクトなボディに本格的なSUV性能を兼ね備え、都会からアウトドアまで幅広く使えるクロスオーバーSUV。 今回の改良では、ボデ[…]
インプで好評の「サンブレイズ・パール」を身に纏う期間限定モデル 今回導入される「Limited Sun Blaze Edition」は、インプレッサで好評のボディカラー「サンブレイズ・パール」がチョイ[…]
最上級グレードらしく、装備機能の充実ぶりも魅力 今回発表された、クロストレック・e-BOXER(ストロングハイブリッド)は、モデルシリーズの最上級に位置するグレード。初のストロングハイブリッドを搭載す[…]
クロストレック:モデル概要〈スバルの最新技術を惜しみなく注入したことで、先代以上の車格感を手に入れた〉 クロストレックは、コンパクトなボディ/本格的なSUV性能/ラギッドかつスポーティーなデザインを組[…]
走行性能と環境性能を両立 今回発表された「ストロングハイブリッド」は、走りの愉しさと環境性能を高い次元で両立された次世代のハイブリッドシステムだ。状況に応じて動力源であるエンジンとモーターを効率よく使[…]
最新の関連記事(SUV)
「ピュア ポジティブ」が体現する、新しいフォルクスワーゲン 「ID.クロス コンセプト」は、人気の「T-クロス」クラスに属する電動コンパクトSUVとして、その手頃な価格帯が注目を集める。デザイン責任者[…]
グロッシーブラックのアクセントで存在感をプラス 今回導入される「XC60 Ultra B5 AWD Dark Edition」は、今年6月に内外装がリフレッシュされた最新のXC60マイルドハイブリッド[…]
55年の歴史に敬意を表した特別なレンジローバー 1970年の誕生以来、レンジローバーは「ラグジュアリーSUV」という新しいカテゴリーを創造し、そのセグメントを常に牽引してきたモデル。 快適な乗り心地と[…]
ボディカラー:MANUFAKTURカラハリゴールドマグノ(マット) 通常モデルでも人気のマットカラーを4色展開 今回導入される「Mercedes-AMG G 63 Black Accent Editi[…]
艶やかなグロッシーブラックのエクステリアパーツを採用 特別仕様車「XC40 Dark Edition」は、フロントグリルをはじめとする各所にグロッシーブラックのエクステリアパーツを採用し、スポーティな[…]
人気記事ランキング(全体)
全方位型のツインタイプの小型ファン 先日、ヘッドレストに装着するタイプの扇風機を愛車に導入したのだが、ファンとしてはオーソドックスな丸型タイプの扇風機も使う機会があったので、便利そうな2種を紹介してい[…]
前席は快適でも、後席は意外と暑くて不快な場合も… まだまだ強い日差しが照りつけるこの季節、車内の冷房の稼働は必須と言える。クルマに乗り込んで、涼しい風に当たって「はぁ〜涼しい…」と、ひと息ついていると[…]
2人旅に特化したゆとりある空間 TR540S Joinの魅力は、まず「2人旅に特化」と割り切った設計にある。就寝人数を2名(乗車人数は5名)に絞ったことで、車内レイアウトに余裕を生み出し、広々としたダ[…]
標準ボディで実現する扱いやすさと快適性 レグラス プロの大きな特徴は、ハイエースの標準ボディ・標準ルーフを採用している点にある。全高が抑えられているため立体駐車場や一般的な駐車場にも収まり、街乗りや買[…]
乗用ミニバンの優れた居住性と走行性に車中泊のための快適機能をプラス メティオのラクネルシリーズはバンコンから軽キャンパーまで様々なタイプの人気モデルがそろうが、今回紹介するラクネル ステイ•スイートは[…]
最新の投稿記事(全体)
多目的次世代アリーナを10月3日に開業 開業記念式典には、小池百合子東京都知事やBリーグの島田慎二代表理事CEOなど多数の来賓が出席。トヨタ自動車の豊田章男会長は、アリーナへの思いを語るとともに、室伏[…]
多様なモビリティサービスに対応可能なバッテリーEV。価格は2900万円から 「e-Palette(イーパレット)」は、人々の生活と社会を豊かにする新たな移動体験を創出する、未来志向のプラットフォームと[…]
初期モデル 高嶺の花だったマイカーという夢を、現実のものにした立役者 今では日本人にとって欠かせない足となっている軽自動車の規格は、1955(昭和30)年に全長3m、全幅1.3m、排気量0.36L以内[…]
オートサロン2025で披露された注目バージョンが市販化 2020年に発売が始まったGRヤリスは、走りに直結するさまざまな改良を頻繁に行うことでも有名なモデル。それだけメーカーのこだわりが強いことをユー[…]
BYD初のステーションワゴン 世界初公開された、新型ハイブリッド車「BYD SEAL 6 DM-i TOURING」は、BYD初のステーションワゴンであり、同社が独自に開発したプラグインハイブリッド車[…]
- 1
- 2