
新生スズキが新中期経営計画(2025~2030年)を発表した。“新生”と呼ぶのは、これまで長年スズキを率いてきたカリスマ経営者・鈴木修氏が2024年暮れに亡くなり、没後初となる中期経営計画だからだ。修氏の後を継いだ現社長・鈴木俊宏氏による経営は「1+7」という、社長と7人の幹部による集団指導体制であり、俊宏社長は「チームスズキ」と呼んでいる。
●文/写真:鈴木ケンイチ(月刊自家用車編集部)
2023年1月発表の「2030年度に向けた成長戦略」
目標数値を上方修正。7兆円の売上目標を8兆円へ
そんなチームスズキによる説明は、「By Your Side」という新たなコーポレートスローガンから始まった。これは「お客様の立場になって価値ある製品を作ろう」などのスズキの社是を端的に表現したものだ。俊宏社長は、この新しいスローガンと「小少軽短美/中小企業型経営/現場・現物・現実」という行動理念をもとに、修氏亡き後のスズキを率いていくと宣言したのだ。
説明会では、鈴木俊宏社長が「2030年度に向けた成長戦略」について、最新情勢や考え方をプレゼンテーション。
そして、今回の新中期経営計画は、2023年1月に発表した「2030年度に向けた成長戦略」を、どのように達成してゆくかの具体的な取り組みをまとめたものだという。
ちなみに、「2030年度に向けた成長戦略」では、7兆円の売上が大きな目標として掲げられた。これは2021年度の売上3.5兆円の2倍にもなる数字だ。それに対して、今回の新中期経営計画では、修正が入り、売上としてプラス1兆円の8兆円が定められたのだ。
また、利益率10%での営業利益8000億円、四輪販売年間420万台、新事業収益500億円という数字も挙げられたのだ。そして、この数字を達成するための、部門別/地域別の取り組みも紹介されている。
日本市場は“成長市場”。軽自動車+登録車で国内シェア2位を目指す
「eVITARA」と「軽商用バンBEV」を皮切りに、2030年度までに6モデルの電気自動車(BEV)を導入
日本市場に対しては、成長市場と定め、登録車の販売を伸ばし、軽自動車+登録車で国内シェア2位を目指すという。2025年度中の「eVITARA」と「軽商用バンBEV」の2モデルを皮切りに、2030年度までに6モデルの電気自動車(BEV)を導入するという。また、スーパーエネチャージを投入し、ハイブリッドモデルを強化してゆくという。
2025年度中の日本国内導入を予定しているE-SUV「eVITARA」。スズキの世界戦略モデルとして大きな注目を集めている。
この計画で最初に驚いたのは、売り上げの目標が7兆円から8兆円に増えていたことだ。ただし、その理由は「物価高騰を加味している」という肩透かしな内容であった。それでも、日産がホンダとの経営統合を検討するほど、世界的に自動車業界の状況は厳しい。その中で、スズキが2年前の計画の通りに成長し続けているのは驚異的である。
トヨタ/ダイハツ/スズキの3社の共同開発モデルとなるBEV商用軽バン。こちらも2025年内の導入が予定されている。
中国と北米市場からの撤退が、好調な理由のひとつ
インド市場の安定的な成長は継続。総販売台数の半数以上はインド向け
そうした好調さの理由のひとつは、現在大いに停滞している中国と北米市場から、スズキが撤退して距離を置いていることだろう。そしてもうひとつの理由となるのが、インドだ。今回の説明会では「インドはスズキにとって最重要市場」という言葉が何度も出ていた。実際、インドの安定的な成長がスズキに大きな成功をもたらしている。現在(2024年)のスズキの新車販売316万台のうち、インドは半数を超える179万台を占めているのだ。
そうしたインド市場に向けたスズキの取り組みは、当然、幅広く力強いものとなっている。商品力/販売サービス/生産の強化は当然のこと、バイオガス事業を通じての社会課題解決への助力、スタートアップとの発掘支援など、インド社会全体の成長の支援も含まれていたのだ。
インドでは現在、クルマを買えるだけの所得のある人は4億人ほどしかおらず、それ以外にまだ10億人が存在する。スズキの俊宏社長は「モビリティに手が届かない10億人にもアプローチする」という。より安価なエントリーモデルの投入を考えているようだ。また、スズキの社会支援により、貧しい10億人が裕福になれば、それだけスズキの販売も伸びるというわけだ。
インドは“消費地”兼“生産拠点”へ
ジムニーノマドやフロンクスのように、インドで作って世界市場に輸出
ただし、ここに大きな不安もある。あまりにインドに偏重すれば、インドに問題が発生すれば、スズキも一緒に沈んでしまう可能性がある。中国やアメリカ市場の不調に足をひっぱられた日産という例もある。そういう意味でh、インド偏重がスズキの最大の弱点と言えるだろう。
もちろん、その問題はスズキ側も理解している。そのためインドは、消費地であるだけでなく、スズキの世界市場向け工場という役割が与えられるという。ジムニーノマドやフロンクスのように、インドで作って世界市場で売るのだ。そうした体制ならば、インド経済の停滞という問題があっても回避できるわけだ。
ちなみに、スズキの2030年の販売目標は420万台だが、インドの生産体制の目標は400万台だ。将来的に300万台がインド国内向けで、100万台を世界市場向けとしたいらしい。なんとも強気の計画と言えるだろう。
最後に、「前会長である故・鈴木修氏から受け継ぐ『オサムイズム/スズキイズム』とは何か?」との問いに対して、鈴木俊宏社長の「社是と3つの行動理念、これを中心に据えることが、スズキイズムを継承する力になると思っています」という返答をもって、説明会は閉会とされた。
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