
高速有鉛デラックス初のミーティングイベント「高速有鉛フェスティバル2026」が千葉県千葉市のフェスティバルウォークイベント駐車場にて開催された。480台もの旧車やはたらくくるまなどが集結したなかから、筆者の独断と偏見で目に止まったクルマをピックアップ。今回は、バブル期に国産市販車初のガルウイングドア車として脚光を浴びたトヨタの名(珍?)車「セラ」をベースに、ランチア・ストラトスのWRC仕様へと変貌を遂げた「アリタリア・セラ」を紹介しよう。
●文/写真:月刊自家用車編集部(竹野由志雄)
衝撃のグラストップは、現存個体の減少で価値が爆上がり中
セラは1990年、トヨタが世に送り出した小型3ドアクーペだ。その出自は1987年の東京モーターショーに出品されたコンセプトカー「AXV-Ⅱ」。カブトムシが羽を広げるような独特の「ガルウイングドア(バタフライドア)」と、キャビン上部を覆い尽くす広大なグラストップは、当時のクルマ好きに大きな衝撃を与えた。折しも日本はバブル経済の絶頂期。こうした強烈な個性が歓迎される時代背景もあり、1990年3月にほぼそのままの姿で市販化されたのだ。
ベースはEP82型スターレットだが、エンジンはセラで初採用となった1.5L直4DOHCの5E-FHE型(110ps/13.5kgm)を搭載。
ルーフまで回り込むドア一体型グラストップは開放感抜群だが、外から車内が「丸見え」になるため、近未来的でおしゃれなインテリアにもこだわっていた。しかしその開放感ゆえ、夏場はエアコンをフル稼働しても厳しい暑さに見舞われるなど、実用面での苦労も多かった。
1996年の生産終了までに国内で約1.6万台、海外で約1000台が生産されたが、現存する個体の多くはAT。希少なMT車は今やマニア垂涎の激レア車となっている。
アリタリアカラーのストラトスをオマージュ
この車両のオーナー氏は、これまで3台のセラを乗り継いできたという、筋金入りの「セラ・フリーク」。驚くべきことに「生まれてこの方、愛車はセラしか買ったことがない」という徹底ぶりだ。
1990年式のトヨタセラをベースに、1976年WRC参戦のアリタリア航空カラーのランチアストラトス仕様にモディファイした「Alitalia SERA」。フロントバンパーはスピードガレージG5のエアロを装着している。ホイールはRSワタナベの8スポーク15×6JJ。
現在の愛車は、2003年に「物心ついた頃から憧れていたアリタリアカラーのランチア・ストラトスをセラで再現したい」という情熱から製作した個体になる。1976年のWRCを席巻した伝説のカラーリングを纏ったカスタムモデルだ。
外装は、当時セラのエアロを展開していた「スピードガレージG5」のフロントバンパーとリヤスポイラーをセレクト。ボンネットをFRP製に変更した上で、先端にはGC8インプレッサ用のライトポッドを装着し、ラリーマシンのようなスパルタンな佇まいを強調している。
リヤスポイラーもスピードガレージG5製をチョイス。オーナー氏の手によりハイマウントストップランプを埋め込み加工している。マフラーはフジツボにオーダーしたワンオフだ。
フロントグリル部分にはA.P.Rally製のGC8インプレッサ用メーターフードを装着してラリーマシンらしさをさらに高めている。なおこちらのメーターフードは着脱式になっている。
AE111ミッション流用&内装レカロで挑む本格ラリー仕様へ
メカニズム面も抜かりはない。オーナー氏曰く「これからの20年に備えて」と、2012年にエンジンとミッションのオーバーホールを実施。純正5速MTからAE111用の6速MTへと換装されている。
マフラーはフジツボへのワンオフオーダー、エキマニにはサイノスβ用のレガリスExを流用するなど、既製品の少ないセラに対し、他車パーツの加工やワンオフ製作を駆使して理想の1台を造り上げている。
1.5リッター直4DOHCの5E-FHEエンジンは、2012年にオーバーホール。その際にヴィッツ用バルブリフターを流用してインナーシム化を施し、バルブシートのすり合わせやピストン&コンロッドの重量合わせなどのチューンも行っている。またミッションは純正の5MTからAE111用の6MTに換装している。
そんな凝った外観&メカニズムからも想像できるように、内装まわりも相当な造り込み。コクピットに目を向けると、シートは左右ともレカロSR-7(助手席はSR-7F)に換装され、ステアリングはMOMOを装着。Defiの追加メーターや、EP71スターレット用を加工流用した5点式ロールケージなど、ランチアを彷彿とさせるレーシーな仕上がりとしている。
運転席のシートはレカロのSR-7、助手席はSR-7Fに交換。ステアリングはMOMO。さらにEP71用の5点式ロールケージを加工して組み込み、インパネにはDefiの各種メーターを加えるなど、ラリーマシンらしいインテリアを演出している。
2013年には、沖縄を除く46都道府県を走破したというこの個体。「次の目標は月へ行くこと(つまり38万km達成)です!」とオーナー氏は笑顔で語る。
20年以上の歳月をかけて、憧れのスタイルを具現化し、走り続ける。オーナー氏にとってこのセラは、まさに「一生モノ」の相棒なのだ。
助手席にさりげなく置かれていたセラのミニカーは、オーナー氏のアリタリア・セラを完全コピーしたもの。愛車への深く、そして重い愛情をひしひしと感じさせてくれた。
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