
ホンダの軽EV「N-ONE e:」をベースに、開発が進められている「スーパーワン」は、単なるパワーアップに留まらず、疑似変速やエンジン音の演出など、最新の電動スポーツにふさわしい内容が与えられている一台。従来の軽規格を超えた信頼と安心感のある大人な走りを実現するなど、電動車の常識を完全に破壊するクルマだったのだ。
●文:川島茂夫
軽の常識を破壊!「ブルドッグ」がEVで復活
「Super-ONE(スーパーワン)」を年配のクルマ好きが見たなら、「おっ!ブルドッグだ!」と盛り上がるはずだ。
ブルドッグとは、ハイトパッケージング採用のコンパクトカーとして誕生した、初代シティのターボⅡの愛称のことで、このモデルはインタークーラーやスクランブルブーストなどによる性能向上に加えて、パワーバルジの大型化、張り出したシルエットレーサーを思わせるダイナミックフェンダーなど、一目で識別できる個性的な外観も売りにしていた。
初代シティターボⅡ。1980年代に人気を博したボーイズレーサーの代表モデルになる。
1980年代の国産ボーイズレーサーとして、非常に人気を博したモデルだけに、オジサン世代なら軽EVの「N-ONE e:」をベースに、シティからシティターボⅡのようにパワーアップさせたスーパーワンは、盛り上がらない訳がない。
ドッカンターボで人気があったシティターボⅡのようなやんちゃな走りではないが、スーパーワンもパワフルな走りを楽しませてくれる。
注目は専用開発の「ブーストモード」の存在だ。この機能は、パワーユニット(電動モーター)の性能を最大限に引き出すとともに、7速ステップ変速を模した駆動力(加速度)制御を実現するもので、これと連動して、車内にはアクティブサウンドシステムが疑似エンジンサウンドが響いてくるなど、電動駆動のEVなのに、まるで内燃機スポーツを操っているような感覚を満喫することができる。
車内には疑似エンジン音が響くほか、メーターパネルには、タコメーター様のメーターまで配され、変速と車速に応じて針が動くという凝りよう。
英国石畳で鍛えたアシは、思いのほかジェントルな味付け
もちろん、標準の走行モードではBEVらしい静粛性があり、加速も連続的。加減速からの巡航への移行なども洗練されたBEVらしいドライバビリティ。あくまでもブーストモードはお楽しみのひとつ、という位置づけだが、リズミカルなファントゥドライブを残したいという思いが伝わってくる粋なアプローチと思える。
フットワークも、あの時代のボーイズレーサーとは違う。予想外に乗り心地がいいのだ。
試乗前は、ボーイズレーサーらしく、ハイグリップタイヤを硬いサスで押さえ付けるゴーカート感覚の乗り心地を想像していたのだが、スーパーワンは、サスストロークをしなやかに使うことで路面からの衝撃を上手にいなし、挙動を安定させてくれるタイプだ。
実際の開発では、英国の石畳路でテストを繰り返し、乗り心地を煮詰めたとのこと。ワイドトレッド化しているとはいえ、フットプリントは軽乗用車と大差ないのに、良質な乗り心地ぶりが際立つ。まるでクラス上のモデルのようだ。
バッテリー重量と低重心化の恩恵により、N-ONE e:も乗り心地に優れているが、スーパーワンは路面当たりも、挙動の落ち着きも明らかにランクアップ。単なるワイドトレッド化だけではなく、シャシー性能全体がグレードアップしていると考えるのが妥当だろう。
ハンドリングは、幅広い速度域や旋回半径において特性変化が少なく、神経質な補正が不要なラインコントロール性を重視するタイプ。
キビキビとした回頭性やキレのいいラインコントロール性などをアピールする、軽量小型のスポーツモデルとは異質の味付けだが、これもまた信頼と安心感を備えたクラス上のモデルであることを実感させてくれる。
キャビンスペースなどはN-ONE e:と同じなので、実用面の適応用途は変わらないのだが、クルマとしての魅力は明らかに格上。走りのみならず、スペシャリティという視点でも、この新しい提案はこれまでの常識を軽々と超えてくる。
筆者世代には「ブルドッグ」がEVで復活するのが兎にも角にも面白い。そもそもホンダと言えば、こういったヤンチャな企画が面白く、ファンをトリコにしてきたメーカーだったことを今更ながらに思い出す。EVはちょっと……と敬遠していた従来のクルマ好き層にも響く可能性があるだけに、2026年の市販化がとても楽しみなモデルだ。
ワイドトレッド化に伴う張り出したダイナミックフェンダーや、フロントの力強い表情、ローダウンされたフォルムと大径ホイール、エアロパーツが相まって、一目で識別できる個性的なシルエットを楽しませてくれる。
キャビンは軽モデル相応の広さ。内装色はブルーを基調とし、走りの楽しさをアピール。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(ホンダ)
ホンダ ヴェゼル価格:275万8800〜396万8800円登場年月:2021年4月(最新改良:2025年10月) 値引きを引き締めを装うが、しっかりと手順を踏めば25万円オーバーは狙える 一部改良後の[…]
空力と軽量化を貪欲に追求した、リアルチューナーの本気パーツ 今回発売されたパーツ群のコンセプトは「Extreme “R”」。 徹底した解析、素材選び、品質評価を行うことで、パーツ群全体で約38kgの軽[…]
新型プレリュードでのドライブがもっと快適に! TV-KITのメリットは、走行中でも純正ナビのテレビ視聴ができるようになり、長時間のドライブや渋滞中でも同乗者を飽きさせないこと。付属スイッチでテレビ視聴[…]
先代から何もかもを一新させた“ワンダー”なシビック “ワンダー”こと3代目の「シビック」が誕生したのは1983年のことです。初代の面影を多く引き継いだ2代目から、世界市場戦略車としてプラットフォームか[…]
形状やレッドステッチなどは、標準装着のレザーステアリングと同じ。 ユーザーの要望に応えて企画開発されたスペシャルアイテム 今回の追加設定するステアリングホイールは、多くのユーザーからスムースレザーのス[…]
最新の関連記事(ニュース)
実績のある三菱アウトランダーPHEVのOEMモデル 発表された「ローグ プラグインハイブリッド」は、Re: Nissan再建計画の一環として、米国での電動化モデルの製品ラインアップ拡充を期待して投入さ[…]
アストンマーティンとeggがタッグした究極のベビーカー 英国のゲイドンから、自動車産業と育児用品業界に新たな潮流を告げるニュースが届いた。英国が誇るラグジュアリーブランドであるアストンマーティンと、同[…]
AOGとは? 湘南の意味は? どんな特徴があるの? ちなみにAOGとは「オーテック・オーナーズ・グループ」の略だ。そしてオーテックとは、日産のカスタマイズ・ブランドであり、それを実施する湘南に本拠を構[…]
SUBARUとSTIが共同開発した、走る愉しさを追求したコンプリートカー 今回導入される特別仕様車「STI Sport TYPE RA」は、水平対向エンジンを搭載したFRレイアウトのピュアスポーツカー[…]
キャブオーバー から決別することで、ハイエースの運転席はどう変わる? まず、注目して欲しいのがプラットフォームの変化ぶり。お披露目されたハイエースコンセプトは、前輪の位置が運転席よりも前にある、新規開[…]
人気記事ランキング(全体)
ネクストキャンパーが「エブリイ Jリミテッド」に対応 2025年8月にスズキより販売された軽商用車「エブリイ Jリミテッド」は、商用車の実用性をそのままに、外観にこだわりを持たせたモデルとして人気を集[…]
運転中のちょっとした不満やストレス…。解消する方法は? 普段、クルマを運転している際に感じるちょっとした不満やストレス。それを解消できるアイテムがあれば、もっと快適にドライブが楽しめるのに…。例えば、[…]
ハイエースをベースにした特別モデル「ネクストアーク」 ダイレクトカーズが展開する「ネクストアーク」は、ハイエースをベースにしたシンプルかつ実用性の高いキャンピングカーである。これまで大規模イベントで高[…]
家庭用エアコンで、夏バテも心配いらず 今回紹介するレクヴィのハイエースキャンパーは、取り回しの良いナローボディ・ハイルーフ車をベースに仕立てた車両で、「ペットと旅するキャンピングカー」というコンセプト[…]
多様なパワートレーンとプラットフォーム戦略 TMS2025で公開されたトヨタ カローラ コンセプトは、従来の「生活に溶け込んだクルマ」というカローラのイメージを刷新する、低く伸びやかなボンネットと鋭利[…]
最新の投稿記事(全体)
実績のある三菱アウトランダーPHEVのOEMモデル 発表された「ローグ プラグインハイブリッド」は、Re: Nissan再建計画の一環として、米国での電動化モデルの製品ラインアップ拡充を期待して投入さ[…]
夏にたまったシートの汚れ…。解消する方法は? クルマの隅々まできれいにする洗車好きでも、なかなか手入れのしにくい部分、それがシートではないだろうか? ファブリックシートは、布が汚れや汗、ホコリなどを蓄[…]
高級クーペとは一線を画す若者にも手が届く価格で夢を提供したセリカ その地位を完全に定着させたのが、大衆セダンのフォードファルコンのシャシーにスポーティな専用ボディを載せ、特別仕立てのクルマ=スペシャリ[…]
「贅沢」を極めた新世代のスーパーハイト軽ワゴン デリカが持つ「悪路に強い」というタフなイメージを、日常使いで便利な軽自動車に注ぎこんだことで、記録的なヒットを遂げたデリカミニ。この秋に発売された新型は[…]
Mercedes-AMG GT 53 4MATIC+ (ISG) Final Edition 特別装備で走りのポテンシャルを向上したメモリアルモデル メルセデスAMG GT 4ドアクーペは、メルセデス[…]
- 1
- 2





























