
トヨタ自動車は、愛知県豊田市と岡崎市にまたがる研究開発拠点「トヨタテクニカルセンター 下山(Toyota Technical Center Shimoyama)」において、同社の提唱する「もっといいクルマづくり」の根幹を成す開発現場を公開した。
●文:月刊自家用車編集部
壁をなくし「一気通貫」を加速、3000名がワンフロアで共鳴する巨大拠点
約30年の構想期間を経て2024年3月に全面運用を開始した「トヨタテクニカルセンター 下山(以下TTC-S)」は、ニュルブルクリンクのような厳しい路面環境を日本に再現したいという豊田章男会長の強い思いから誕生した、トヨタのクルマの開発拠点。
「トヨタテクニカルセンター 下山(以下TTC-S)」は、構想開始から約30年、2018年4月からの建設着工を経て、2024年3月に全面運用を開始している。
かつてテストドライバーの故・成瀬弘氏が残した「道がクルマをつくる」という哲学を具現化する場として、車両を限界まで追い込み、不具合を炙り出し、即座に修復して再び走り出すという、泥臭くも真摯なプロセスが日々繰り返されている。
TTC-Sの大きな特徴としては、職種の垣根を完全に取り払った「一気通貫」の組織体制を採用していることが挙げられる。これは、デザイン・設計・評価・整備といった一連の開発サイクルを一つの拠点内で完結することで、より速やかにいいクルマを世に送り出せる環境を整える、という取り組みになる。
具体的には、TTC-Sでは、1階の整備フロア、2階の企画・設計部門、3階のデザイン部門が垂直方向に密接に連携する、壁のない巨大なワンフロア設計が採用されていて、TTC-S内に設けられたテストコースで得られた走行データやドライバーの感覚は、階上のエンジニアやデザイナーへ即座に共有され、その後、速やかに改善案が練られるという。
ニュルブルクリンクでの経験から抱いた「道がクルマをつくる」という哲学を日本で具現化するために建設されたTTC-Sでは、クルマを鍛える過酷な環境が整えられている。そこで得た知見などは、速やかにエンジニアやデザイナーにも共有されることになる。
約3000名のスタッフが同じ空間でクルマを囲み、対話しながら造形や性能を磨き上げる環境を整えることで、従来の縦割り組織では成し得なかったスピード感と一体感が生み出されるとのことだ。
「走る・壊す・直す」を貫く現場主義で、いいクルマを世に送り出す
TTC-Sの広大な敷地内には、ニュルブルクリンクを参考に設計された、全長5.3km、高低差75mにおよぶカントリー路のほか、TTC-S開発の過程で追加された過酷なダートコースなどが設置されているが、これらの道は単なる試験路ではなく、クルマと人を同時に鍛え上げるための道場としての役割を担う、ということも特徴のひとつ。
具体的には、テストドライバーが実走で感じた微細な違和感を、その場に立ち会う設計者やメカニックへ即座に伝達し、ガレージで即座に車両を分解・調整する。ダートコースでは、徹底的に走り込み、その極限状態での損傷データがGRパーツの耐久性向上へ直結されるなど、このように実車を囲んで「走る・壊す・直す」を繰り返す現場主義を貫くことで、理論値だけでは到達できない走りの味を生んでいる。
上質さを追求するレクサスカンパニーと、走りの歓びを追求するGRカンパニーという異なる個性を持つ2つのブランドが切磋琢磨することで、トヨタ全体の開発能力も底上げされる格好だ。
厳しい道を走り、壊れた箇所を見つけ、その場で直し、また走る。この開発哲学を実戦できる、クルマにとって過酷なコースが用意されている。
下山生まれのレクサス「TZ」を、世界初公開
今回の公開では、TTC-Sの開発環境から生まれたレクサス・新型「TZ」が発表された。「道がクルマをつくる」という思いから生まれたレクサス初となる3列シートのe-SUVは、すべての乗員が笑顔になれる上質な移動空間「Driving Lounge」をコンセプトに開発。快適に過ごせる空間と、レクサスらしい走りを高次元で融合しているという。
レクサス初のBEV3列シートSUVとして誕生した新型「TZ」は、「Driving Lounge」というコンセプトのもと、最新の電動化技術とラグジュアリーな移動体験を融合させた1台。今年冬頃の国内導入を予定している。
空のモビリティと地域共生への挑戦も実施
また、空のモビリティを見据えたヘリコプターの移動実証や、地域と連携した防災訓練も実施。
これは、トヨタの創業者・豊田喜一郎氏が、1923年の関東大震災の際に感じた「道がなくても人を運べるモビリティ」が必要、という志を受け継ぐものであり、今回の移動実証は、山間部の孤立リスクを抱える地元自治体への貢献も視野に入れたものになるとのこと。
トヨタは現在、「陸・海・空」の領域で、すべての人に移動の自由と楽しみを届けるという思想を掲げており、今後もその取り組みを推進していく、としている。
TTC-Sが位置する豊田市内の山村地域は、南海トラフ地震などが発生すると、集落が孤立するリスクが高いエリアになる。TTS-Cは、災害時に頼りにしてもらえる拠点機能も兼ね揃えているとのこと。今回は豊田市と連携し、災害時の孤立集落対策としてヘリコプターを活用した物資運搬訓練が実施された。
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