
「アリーン(Arene)」は、トヨタが長年培ってきたモノづくりの知見と、最先端のソフトウェア技術を融合させた次世代基盤(プラットフォーム)。新型RAV4には、そこから導かれた最新機能が数多く投入されている。ここではアリーンが果たしている役割と目的、その狙いを解説してみたい。
●文:まるも亜希子
ソフトウェアの開発スピードが劇的進化
新型RAV4が目指す「買った後も進化するクルマ」という新しい価値観を支えているのが、トヨタが開発した次世代プラットフォーム「アリーン(Arene)」になる。
これは、長年培われたモノづくりの知見と最先端のソフトウェア技術を融合させた基盤(プラットフォーム)であり、これまで一般的だった「機能ごとに個別に開発する」という手法に変わる手法となっている。
このアリーンが初採用された新型RAV4では、「先進運転支援」や「コクピット」といったドメインごとに開発が統合され、共通のプラットフォームと標準化されたプロセスを用いることで、サプライヤーとの連携強化やテストの簡素化を実現しているという。
アリーンは、「SDK(開発キット)」「Tools(検証ツール)」「Data(データ収集ツール)」という3つの要素から構成される。
まず「SDK」では、ソフトウェア開発キットによって開発スピードが加速することで、ユーザーに、より早く、より多くの「もっといいクルマ」が届けられるというメリットが生まれる。もし何らかの不具合が生じたとしても、いち早く修復・改善策の提供が期待できるというわけだ。
「Tools」は、仮想環境でソフトウェアを徹底検証するもの。オンデマンドテストのフローを完全に自動化することも可能で、物理的なテストを仮想的なテストで補完していくことで、ソフトウェアの各機能を個々に、あらゆるモデルやトリムで分析できることになる。具体的なメリットとしては、ユーザーにとってさらに高品質で信頼性の高い新機能が提供できるようになる。
そして「Data」では、走行データを収集・蓄積しアップデートされていくことで、継続的な改善が図られていく。トヨタならではの「カイゼン」のコンセプトに基づいて構築されており、従来の一気通貫型の開発ではなく、最新の反復的な開発手法を活用する設計となっている。
この3つの要素を持つアリーンが導入されることで、クルマを購入した後でも、市場での洞察に基づいた改善を行なってクルマが進化し、機能が古くならない。価値が下がらないことは、ユーザーサイドからも大きなメリットとなるはずだ。
アリーン(Arene)は、最先端技術を統合し開発スピードを加速させる「SDK」、仮想環境でのシミュレーションにより効率的かつ高度な検証を行う「Tools」、そして市場の走行データを収集・分析し継続的な改善(カイゼン)へ繋げる「Data」で構成される。
従来の開発工程では機能ごとに指令を下す「ECU」が分散していたが、新型RAV4ではアリーンを基盤にドメインコンピューター(統合ECU)へと集約。
対話型インターフェースで、音声認識がスピードアップ
新型RAV4の場合では、マルチメディア領域の進化が実感できるだろう。
最近のクルマは、より自然でレスポンスのよい音声認識開発や、個人に合わせた機能適合の強化が進んでいるが、そのパーソナライズの進化を、アリーン上で大きく推進させている。
センターディスプレイは、豊かなグラフィックと高い視認性を備え、個々の好みに合わせたカスタマイズも容易になったほか、音声認識も大きく進化。認識結果が表示されるまでの時間は、従来の3.6秒からわずか1秒へと大幅に短縮されている。
システムとテンポの良い対話が可能になったことで、機械を操作しているというよりも、人と会話しているような感覚で、クルマへの愛着を深めることができるようにもなっている。
新型RAV4では、ディスプレイのグラフィック表現がお好みにカスタマイズできたり、音声認識の応答速度が速くなるなど、直感的に繋がる快適空間を実現した。
トヨタ「匠」の技もデジタル化
さらにトヨタセーフティセンスを核とする安全運転支援システムも、アリーンの活用によって「知能化」が図られた。
従来は各機能ごとに分散していたECU(車載コンピューター)を統合して、ドメインコンピューターへ(統合ECU)と進化させたことで、より複雑で高度な制御を一本化することが可能になったとのこと。
具体的には、センサー検知角度の拡大により、車陰からの飛び出し車両の検知が可能となるほか、出会い頭や右左折といった交差点でのプリクラッシュセーフティの事故対応力が向上。先行車の減速をより早く検知したり、より広範囲での「ぶつからない」をサポートすることもできるようになっている。
さらにトヨタの「匠」と呼ばれるテストドライバーの運転データを解析し、そのデータを活かすことで、プロアクティブドライビングアシスト(PDA)の減速支援などが、よりドライバーの感覚に寄り添った自然な制御へと磨き上げられている。
トヨタセーフティセンスを含めた安全運転支援機能は、ソフトウェア主導で迅速にアップデートすることが可能に。
世界中で販売され、多くの台数が確保できるRAV4だからこそ、この次世代基盤を初採用する意義があるとのこと。
アリーンは単なる新技術の導入に留まらず、交通事故ゼロの実現や将来の完全自動運転社会に向けた強力な武器であり、新型RAV4を「常に最新であり続けるモビリティ」へと引き上げた原動力にもなっているわけだ。
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