
日本の自動車産業は世界に通用する競争力をつけつつあった1970年代、名車とも迷車とも言えるクルマが数多く登場した。そのひとつが、ホンダから登場したホンダ・バモスだ。軽トラックをベースにルーフやドアなどすべて取り去ったフルオープンモデル。当時、北米で人気の高かったバギーをモチーフに、ホンダ流にカスタマイズさせたマルチパーパスカーであった。
●文:月刊自家用車編集部
むき出しのメタルパネルに計器を埋め込んだ運転席。キー付きグローブボックスやハンドルロック機能もあり。
軽トラックTN360のボディを取り去ったフルオープンマルチパーパスカーだった
ホンダZの誕生と時を同じくして鮮烈なデビューを飾ったのが、個性の塊とも言えるバモスホンダである。ベースとなっているのは、主力の商業車である軽トラックのTN360。キャブオーバースタイルのボディを取り去り、これに代えて割り切りの強いフルオープンのスクエアなボディを被せた、日本の自動車史において「異端」かつ「自由」な存在であった。
北米で人気の高かったバギーをホンダ流に味付けした、「乗る人にその使い方を任せる」という新しい発想のマルチパーパスカーで、リヤはもちろん、フロント側にもドアはない。サイドパネルをまたいで乗り降りを行い、走行するときはバーを下げて落ちないようにする。頭を保護するのは、コの字型の細いロールバーだけだった。
シート地には防水性に優れた厚手のビニールを採用。ドアがないため、雨が降っても、あるいは泥だらけになっても、ホースで水をかけて、そのまま車内を洗えるほどのタフさを持っていた
小さいながらも、さまざまなアイデアが満載されたクルマだったのだ
バンパーと荷台にはガード用のバーが付き、丸形ヘッドライトの間にスペアタイヤを組み込みんだ爽快なフルオープン構造だが、キャビンをカバーするソフトトップを装備している。フロントシートだけの2人乗りとリヤシートを装備した4人乗りの2種類が用意されていた。
フルオープンということでメーター、スイッチ、シートは防塵・防水処理され、キーを抜けば自動的に作動するステアリングロックなど独特の装置を採用し、盗難防止が図られた。シート地には防水性に優れた厚手のビニールを採用。ドアがないため、雨が降っても、あるいは泥だらけになっても、ホースで水をかけて、そのまま車内を洗えるほどのタフさを持っていたのだ。
メカニズムのほとんどはTN360のもので、もちろん搭載されたのは空冷2気筒SOHCで、ホンダの四輪車として最後に新規開発された空冷エンジン搭載モデルであった。最高出力は30馬力だったが、車体が非常に軽かったため(520kg)、現代の軽自動車とは全く異なる「ダイレクトな加速感」を味わえた。
フロント部分に設置されたスペアタイヤは、単なるデザインではなく、ミッドシップレイアウトのため軽くなったフロントに荷重をかけてハンドリングを安定させる役割と、万が一の衝突時に衝撃を吸収する「天然のエアバッグ(クッション)」としての機能を持たせていて、この車の独特のアイコンとなった。
この奇抜なデザインに対して、ユーザーからの期待度は高かったが、悪路走破に強い4WDモデルがなかったこともあり、生産台数はわずか2,500台程度と販売は低調に終わった。
大胆にも軽トラックのボディを取り去ったフルオープンモデルのバモス。もちろんドアパネルも装備していない。2人仕様と4人仕様が用意されていた(写真は、リヤシートを畳んだ状態の4人乗りバモス4)
【主要諸元】 バモス2(1970年型)
●全長×全幅×全高:2995㎜ ×1295㎜ ×1655㎜ ●ホイールベース:1780㎜●車両重量:520㎏ ●駆動方式:ミッドシップエンジン・リヤドライブ●乗車定員:2名●エンジン:強制空冷4サイクル2気筒SOHC 354㏄ ●最高出力:30PS/8000rpm●最大トルク:3.0kg-m/5500rpm●最小回転半径:3.8m ●燃料タンク容量:26L●変速機:前進4段後進1段●サスペンション(前/後):マクファーソン・ストラット式独立懸架/半楕円板バネ●タイヤ(前・後):5.00-10-4PR ○価格:31万5000円(バモス2)/34万5000円(バモス4)
バモス4(1970年)
4人乗り「バモス4」は、後部座席の背もたれ部分までホロが設定されている。リアシート使用時は、奥行き1m程度の荷室だが、荷室床は、タイヤハウスの張り出しもなく、完全フラットとなっている。
バモス フルホロ(1970年)
居住空間はもちろん荷室全体に幌で覆ったバモスフルホロ。
フロントバンパー上部にガード用バーを装備するほか、フロントに設置された予備タイヤは、衝突時に乗員を保護する緩衝材の役割を担っていた。
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