
●文:川島茂夫 ●写真:トヨタ自動車
レースの現場からの知見&ノウハウが注がれることで、熟成進化が止まらない
全長4mに満たないコンパクトな専用3ドアボディに、304PS/400Nmを叩き出す1.6Lターボを凝縮することで、パワーウェイトレシオ4.3kg/psという驚異的な数値を誇るGRヤリス。モータースポーツへの参加を前提とした設計思想には、雰囲気を楽しむスポーツカーにはない凄みやストイックな面が宿っている。
2020年にデビューしたモデルだが、積極的な改良も特徴のひとつ。
2024年(24式)には新開発の8速AT「GR-DAT」を導入したほか、インパネまわりの操作パネルとディスプレイをドライバー側へ15度傾けて設置した新コクピットや、エンジン出力の向上、縦引きパーキングブレーキを採用することで、戦闘力を大幅に強化。
2025年(25式)でも、GR-DATの改良や締結ボルトのタイプ変更、足まわりセッティングの刷新を実施。4WDシステム「GR-FOUR」も、前後等配分型とし最適化されることで、より洗練された駆動コントロール性能を手に入れている。
最新26式では、新設計「GRステアリング」を採用
最新仕様となる2026年の26式では、新設計ステアリングの採用やパワステ特性の最適化、限界域でのコントロール性を追求した専用タイヤの設定など、ドライバーとの一体感をさらに高める工夫が加えられている。
26式では、モータースポーツ参戦のフィードバックを活かした、電動パワーステアリングの設定変更も実施。
プロドライバーとともに作り込んだGRステアリング。ステアリングが微妙に楕円形になっているのは、ラリーのように激しくハンドルを回す際に、どの角度で握っても手に馴染み、瞬時にしっかり保持できるようにするため。
さらにGRカローラと同様に、走行シーンに合わせて制御を最適化できる「パフォーマンス・ソフトウェア・シリーズ」が用意されたこともトピックスのひとつで、自分好みの走りを、ソフトウェアの力で引き出すことが可能にもなっている。
勝利を目指せば「速さ」の追求が第一となるのは当然だが、GRヤリスに加えられてきた改良を見ると、ドライバーの扱いやすさや、ストレス減を求めた変更が少なくないことにも気付く。
ミスを未然に防ぎ、リカバリーを容易にする設計は、極限状態で戦う競技者だけでなく、あらゆるドライバーに大きな恩恵をもたらすもので、GRヤリスはそのセオリーに沿っているわけだ。
昨年秋に追加された「Aero performance package」装着車はGRヤリスの最上級仕様という位置づけ。可変式リヤウイングなど空力を武器に変える専用エクステリアなどが奢られる。
カローラより尖った弟
同じパワートレーンを持つGRカローラが「滑らかで余裕のある走り」を意識しているに対して、GRヤリスは「電光石火のレスポンス」を武器とする。
GRカローラは挙動の繋ぎや収束に間を取って滑らかに繋ぐ感じだが、同じ状況でGRヤリスは次の体勢への移行が早い。挙動に唐突な変化はなく連続的なのだが、すべてのリズムがアップテンポで、次々とコーナーを攻略していく感覚は、まさにハードコアなスポーツ走行を愛する者のためのものだ。手に汗握るダイナミズムこそ、このマシンの真骨頂といえる。
GRヤリスの進化は、すべて「人と車の可能性」を広げるためにある。
そのスペックや存在感は特別だが、そこで培われた技術と思想は、真摯に走りを追求するすべてのドライバーに届くはず。とてつもなくマニアックだが、練り込まれた思想と技術は真っ当にして正論なのだ。
ファン垂涎の100台限定モデル「モリゾーRR」も、低速から強力なダウンフォースを生む空力デバイスと、ニュル24時間レースの知見を注いだサスペンションを装備した見逃せない1台。これにより、日常域での滑らかな乗り心地と、長距離走行での抜群の安定感を両立させている。こちらは大人のための高性能仕様という位置づけだ。
WRC王者への敬意を込めた「セバスチャン・オジエ 9x ワールドチャンピオンエディション」も26式の目玉のひとつ。専用モード「SEB.」を搭載し、後輪駆動を積極的に活かしたダイナミックなハンドリングが体感できる。モリゾーRRがバランスを重視するのに対し、こちらはWRCの興奮をダイレクトに呼び覚ます仕上がりとなっている。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(トヨタ)
内燃機モデルもまだまだ進化する! 1972年、セリカ用に開発された1.6L DOHCエンジンを、ひと回り小型軽量なカローラクーペに搭載して誕生したTE27型レビン 。モータースポーツで勝つことを宿命づ[…]
BEV王者の系譜に「野生」の個性をプラス 2025年下半期のBEV販売台数で首位に輝いたbZ4Xに、新たな選択肢としてがbZ4Xツーリングが加わった。洗練された都市型のbZ4Xに対し、bZ4Xツーリン[…]
トヨタ最高峰の安全性能を家族のために イベント会場に入り、まず目に飛び込んできたのは、2代目モデルにあたるGZG50型のみが5台も整然と並んだエリアだ。 1997年から2017年にかけて生産されたこの[…]
「TEEMO」は、他社ユーザーも月額基本料0円で利用可能 一部改良されたbZ4Xに続いてbZ4Xツーリングが登場し、マルチパスウェイの一端を担うBEVが着実にユーザーの選択肢の一つとなるよう、販売店と[…]
前輪ディスクブレーキ装備やトレッド拡大で、高速走行に対応 オーナーカー時代に向けて提案したスタイリングが時代を先取りしすぎたのか、世間の無理解と保守性に翻弄されてしまった4代目クラウン(MS60系)。[…]
最新の関連記事(ニュース)
ウィンカー点灯パターンを簡単に変更可能。流れるウインカーも、硬派な通常点滅も思いのまま。本体裏の接続を変えるだけの簡単設定で、愛車の表情を自由自在にコントロールできる。 内部造形にまでこだわったステル[…]
多様なライセンス商品を、一つのプラットフォームに集約 これまでホンダが認定するライセンス商品は、おのおののライセンシー企業が独自のECサイトなどを通じて販売するケースが大半を占めていたこともあって、顧[…]
Cayenne Turbo Coupé Electric 最上級の「ターボクーペ」は最大出力850kw、0-100km/h加速は2.5秒 新型カイエンエレクトリックシリーズは、SUVボディの高い実用性[…]
「TEEMO」は、他社ユーザーも月額基本料0円で利用可能 一部改良されたbZ4Xに続いてbZ4Xツーリングが登場し、マルチパスウェイの一端を担うBEVが着実にユーザーの選択肢の一つとなるよう、販売店と[…]
往年の名モデル「テラノ」が復活 日産自動車は、中国を日本・米国と並ぶ最重要のリード市場と位置づけ、新エネルギー車(NEV)への転換を急いでいる。 北京モーターショー2026では「アーバンSUV PHE[…]
人気記事ランキング(全体)
大手カー用品店オートバックスの専売タイヤ。驚きのロープライスを実現 本格的な春を迎え、ゴールデンウィークに突入。クルマを利用して出かける計画を立てている人も多いだろう。そうなると気になるのが愛車の足元[…]
「全く見えない…」サイドミラーの水滴は、安全運転の大敵 雨の日の運転は、晴天時に比べて視界が悪くなったり、路面状況が悪くなったりと、何かと気を使うことが多い。また、雨天時の夜ともなると、光が乱反射して[…]
初代レパードは、日本国内向けの高級GTとして誕生 1986年に発売された「F31系」のレパードは、「レパード」としては2代目のモデルになります。 初代の「レパード」は、北米市場向けモデルの「マキシマ」[…]
現行CX-5とCX-8の間を射抜く絶妙なサイズパッケージ まもなく登場する新型CX-5は、マツダ車らしい走りの質の高さや、スタイリッシュな外観を維持しながらも、居住性と実用性を劇的に向上させたパッケー[…]
RX87(1967年) 先に販売されたルーチェセダンのクーペモデルとして登場したが、実はそのほとんどが専用設計で別物のクルマだった 世界初の量産ロータリーエンジン車、コスモスポーツが発売された1967[…]
最新の投稿記事(全体)
レースの現場からの知見&ノウハウが注がれることで、熟成進化が止まらない 全長4mに満たないコンパクトな専用3ドアボディに、304PS/400Nmを叩き出す1.6Lターボを凝縮することで、パワーウェイト[…]
欧州市場の拡大を目指した901活動で生まれ変わった、日産伝統のFRクーペ 日産のCMに使われている「技術の日産」というキャッチフレーズは、けっして伊達ではない。経営環境の変化の波に揉まれることもあった[…]
大手カー用品店オートバックスの専売タイヤ。驚きのロープライスを実現 本格的な春を迎え、ゴールデンウィークに突入。クルマを利用して出かける計画を立てている人も多いだろう。そうなると気になるのが愛車の足元[…]
現行CX-5とCX-8の間を射抜く絶妙なサイズパッケージ まもなく登場する新型CX-5は、マツダ車らしい走りの質の高さや、スタイリッシュな外観を維持しながらも、居住性と実用性を劇的に向上させたパッケー[…]
ウィンカー点灯パターンを簡単に変更可能。流れるウインカーも、硬派な通常点滅も思いのまま。本体裏の接続を変えるだけの簡単設定で、愛車の表情を自由自在にコントロールできる。 内部造形にまでこだわったステル[…]
- 1
- 2























