
トヨタが日本の救急医療に果たしてきた役割は、我々が想像する以上に深く、そして長い歴史を持っている。1956年の初代クラウン・バンに始まるその歩みは、現場の声を反映した試行錯誤の連続だった。象徴的な「側面の赤帯」という伝統を守りつつ、1992年には救急救命士法の施行に合わせ、上位モデル「ハイメディック」を投入。医療の高度化と共に、車両もまた劇的な進化を遂げてきた。半世紀以上にわたる技術革新の系譜と、最前線を支える医療の生命線に焦点を当ててみた。
(この記事は、オートメカニック2021年5月号にて掲載されたものです)
●文:鈴木ケンイチ(自家用車編集部)/取材協力:トヨタ自動車、トヨタカスタマイジング&ディベロップメント
トヨタ救急車 ハイメディック
寸法:全長5600×全幅1895×全高2510mm(架装オプション等非装着時)、定員:8名、搭載エンジン:2.7リッター・ガソリン(2TR-FE)、トランスミッション:6AT、最高出力:118kW(160ps)、最大トルク:243Nm
車体側面の窓の下にある赤い帯は、日本赤十字社救急車を区別するためのもの
トヨタと救急車の関わりは古い。すでに1956年(昭和31年)ごろに初代クラウン・バンをベースにした救急車がセントラル自動車(現在のトヨタ自動車東日本)にて艤装されていたのだ。ちなみに1960~62年(昭和35~37年)ごろには、車体側面の窓の下に赤い帯が塗装されていた。これは消防救急車と日本赤十字社救急車を区別するためのもの。この赤帯は、現在の最新モデルにも継承されている。
その後もクラウンをベースにした救急車が製作されていたが、1970年(昭和45年)ごろからベース車をハイエースに交代。現在に続く、ハイエースの救急車の歴史がスタートする。
救急救命士法の施行により、登場した「ハイメディック」
1992年(平成4年)の東京モーターショーにおいて、トヨタは「未来の救急車」を出品した。これは、新たに施行された救急救命士法に対応して、移動中に医療行為を可能とする高規格救急車というもの。その後、この高規格救急車は、高度の“ハイ”と、医療の“メディカル”を組み合わせた「ハイメディック」と命名される。これがスタンダードの救急車に対する上位モデルのハイメディックのルーツとなる。
1997年(平成9年)にハイメディックは第2世代となる。ロングホイールベースのセミボンネット型となり、4WS機能を装備。乗り心地の良さと小回り性の両立を実現している。
2006年(平成18年)に現在の第3世代へ交代。ハイメディックは患者室の長さを450㎜・幅50㎜、スライドドアの開口部も幅180㎜・高さ220㎜ほど拡大している。2020年6月には、衝突被害軽減自動ブレーキを含む先進運転支援システム「トヨタ・セーフティ・センス」の標準装備や6速ATの採用などの一部改良を実施。今も第一級の性能を維持しているのだ。
ハイパーモードでの点灯。交差点内への進入などに使用する。ソフトモードは、夜間での住宅街での活動時などで利用する。パーキングブレーキを作動するとソフトモードになる。
赤色灯は「ノーマル」「ハイパー」「ソフト」の3モードで点灯可能。ハイパーがノーマルに比べてLEDの発光が20%アップ、ソフトがノーマル比60%ダウンとなっている。
2020年6月の一部改良にて「トヨタ・セーフティ・センス」が標準装備となった。ミリ波レーダー+単眼カメラでの歩行者や車両に対する衝突被害軽減自動ブレーキ機能が備わる。
ストレッチャーを収納したハイメディックの車内。右側に医療用機器を備えつつも、天井が高く、通路も広々としている。走行中に救急救命士が救急救命処置をしやすいレイアウトだ。
新採用のストレッチャー取付式簡易アイソレーター「e capsule(イーカプセル)」。患者を乗せるストレッチャーに追加する、使い捨てビニールカバーと排気フィルターなどのセット。
匂いや汚れの清掃など、衛生管理に手間のかかるのが布カーテン。そうした手間を省いてくれるのが、調光スクリーン「QQ Screen(キューキュースクリーン)」。スイッチひとつで、窓を「透明」から「不透明」に切り替えることが可能。
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