「見た目は驚くほどフツーだった…」34年前に誕生した初代から、進化を遂げたⅢまで。ファミリーセダンにとんでもない心臓をブチ込んだ[三菱・ランサーエボリューション]│月刊自家用車WEB - 厳選クルマ情報

「見た目は驚くほどフツーだった…」34年前に誕生した初代から、進化を遂げたⅢまで。ファミリーセダンにとんでもない心臓をブチ込んだ[三菱・ランサーエボリューション]

「見た目は驚くほどフツーだった…」34年前に誕生した初代から、進化を遂げたⅢまで。ファミリーセダンにとんでもない心臓をブチ込んだ[三菱・ランサーエボリューション]

三菱を代表するスポーツモデルを挙げるなら、「ランサーエボリューション」は外せない存在である。ラリー活動に力を注いできた三菱にとって、その技術力を世界に示す最高の舞台となったのがWRC(世界ラリー選手権)だった。そこで数々の勝利を重ね、三菱の高い走行技術を広く印象づけたのがランサーエボリューションである。初代の「Ⅰ」から最終型「Ⅹ」まで約24年間にわたり進化を続けたシリーズのなかから、今回はその原点となる「Ⅰ〜Ⅲ」、いわゆる第一世代にスポットを当てて紹介する。

●文:月刊自家用車編集部

軽量+ハイパワー+4WDという最強クラスの組み合わせが誕生

三菱「ランサーエボリューション」が誕生したのは1992年である。

三菱は1967年に初めて国際ラリーへ参戦して以来、モータースポーツを単なる競技の場ではなく、“走る・曲がる・止まる”というクルマの基本性能を鍛える絶好の機会と捉え、積極的にラリー活動を続けてきた。

1973年にはラリー競技の最高峰としてWRC(世界ラリー選手権)がスタート。三菱は「ランサー 1600GSR」を投入し、ラリーで1〜4位を独占するなど、高い戦闘力を世界に示している。

そして1987年、WRCのトップカテゴリーは専用設計に近いマシンが主役だった“グループB”から、市販車をベースとする“グループA”へと移行した。

市販車そのものが持つ素性やポテンシャルを重視していた三菱にとって、このレギュレーション変更は大きなチャンスだった。同年に登場した「ギャラン VR-4」をWRCへ投入し、世界の頂点を狙ったのである。

ギャラン VR-4は1989〜1992年にかけてWRCで好成績を残し、三菱はその実戦経験からさまざまな4WD技術やシャシー技術を蓄積していった。

そのノウハウを、より小さく軽量な4代目ランサーのボディへ投入したモデルこそ、初代「ランサーエボリューション」である。

【ランサーエボリューションⅠ】(1992年)
フロントバンパー中央の大きな開口部から、インタークーラーがのぞく。GSRにはキーレスエントリーをはじめとする快適装備も用意され、日常的なファミリーカーとして使用できる居住性も確保されていた。GSRエボリューションには、ミシュランXGT-Vタイヤと専用アルミホイールを標準装備していた。

ギャラン VR-4譲りの高出力ターボエンジンとフルタイム4WDを、ひと回りコンパクトで軽量な車体に搭載することで、戦闘力を一気に高めるという発想だった。

その登場は、自動車市場だけでなくラリー界にも大きな衝撃を与えた。当初、ホモロゲーション取得を目的として用意された2500台は、わずか3日で完売。人気の高さを受け、急きょ2500台が追加生産されたという逸話も残されている。

こうした反響を受け、三菱はランサーエボリューションを継続して進化させることを決定。同じ4代目ランサーをベースに「エボⅡ」、さらに「エボⅢ」を投入していく。

この「エボⅠ」から「エボⅢ」までの3モデルが、一般にランサーエボリューションの“第一世代”と呼ばれている。

ランサーエボリューションⅠの特徴と戦績

初代「ランサーエボリューションⅠ」は、「ギャラン VR-4(E39A型)」が持っていた強力な動力性能と、フルタイム4WDによる走行性能を受け継いだモデルである。

搭載されるエンジンは、インタークーラーターボ付きの「4G63型」2.0L直列4気筒。ギャラン VR-4用をベースに各部へ手が加えられ、最高出力は250psまで引き上げられていた。

ギャラン VR-4用をベースに大幅な改良が施された4G63型インタークーラーターボエンジン。最高出力250psを発揮した。

フロントサスペンションにはマクファーソンストラット式を採用。一方、駆動力の伝達やトラクション性能に大きく影響するリアには、ギャラン VR-4のダブルウイッシュボーン式を発展させたマルチリンク式が与えられている。

最大の武器は、やはりその軽さだった。競技ベース車となる「RS」の車両重量は1170kgで、250psという出力と組み合わせたパワーウエイトレシオは4.68kg/ps。当時の市販車としてトップクラスの数値を誇った。

一方で、その性能から想像するほど外観は派手ではない。

快適装備を大幅に省いた競技ベースのRSに対し、GSRはオートエアコン、カセットデッキ+6スピーカーオーディオ、パワーウインドウなどを装備。さらにオプションで、オーディオ下部に油圧・電圧・ブースト圧を表示する3連メーターを装着できた。ステアリングにはMOMO製本革巻き3本スポークを採用する。また、フロントシートには人工皮革「ソアベール」を使用したRECARO製シートを採用。高いホールド性能とスポーティな雰囲気を両立していた。

ベースとなった「ランサー 1800GSR」との違いは一見すると少なく、遠目から分かりやすい特徴は大型リアスポイラー程度だった。

しかし細部を見ると、冷却性能を高めるためのボンネットダクトや、大型インタークーラーへ走行風を導くフロントバンパーの開口部、大径ラリータイヤの装着を想定して拡大されたホイールアーチなど、競技を前提とした変更が数多く盛り込まれている。

WRCには翌1993年から本格参戦。当初はフロント寄りの重量配分に起因するハンドリング特性に苦しんだものの、リアサスペンションや前後スタビライザー、4WDシステムなどを徹底的に煮詰めることで、着実に競争力を高めていった。

エボⅠによるWRCでの最高位は2位である。

ランサーエボリューションⅡの特徴と戦績

1994年には、初代の進化版となる「ランサーエボリューションⅡ」が登場した。

その位置づけは、エボⅠを実戦へ投入したことで見えてきた課題を解消するための正常進化モデルである。

外観上の変更は比較的小さい。フロントバンパー下部にリップスポイラーが追加され、リアスポイラー下部には空気の流れを整える「リアウィッカー」が装着された程度で、一見しただけではエボⅠとの違いが分かりにくいほどだった。

【ランサーエボリューションⅡ】(1994年)
外観はエボⅠとよく似ているものの、シャシーや足まわりを中心に大幅な進化を遂げている。外観上では、フロントバンパー下部に追加された小型リップスポイラーが分かりやすい識別点である。象徴的なリアウイングにはウィッカーを追加。高速域での空力性能と安定性の向上が図られている。

しかし、見えない部分では大きな改良が施されている。

とくに重点的に手が入ったのが足まわりである。サスペンションの土台となるメンバーから見直され、サスペンションアームのジオメトリー最適化や剛性向上を実施。

さらにホイールベースを10mm延長し、トレッドもフロント15mm、リア10mm拡大することで、旋回性能と安定性の向上を図っている。

ホイール径は15インチのままだが、タイヤサイズは195/55R15から205/60R15へ変更。タイヤ幅と外径の双方が拡大された。

エンジンは引き続き「4G63型」インタークーラーターボを搭載するが、吸排気系や過給圧などを見直すことで最高出力を10ps向上。260psへと引き上げられている。

競技車両では、それまで研究開発が続けられていた電子制御式のアクティブディファレンシャルシステムなども投入され、ハンドリング性能の向上が進められた。

その進化はAPRC(アジア・パシフィック・ラリー選手権)でも成果を挙げ、最終戦のタイラリーで優勝を達成した。

一方、WRCでは惜しくも総合優勝には届かず、最高位はエボⅠと同じ2位となった。

運転席まわりに大きな変更はないものの、メーターパネルの表示などが見直され、視認性が高められている。また、エボⅠに続いてRECARO製シートを採用するが、エボⅡではヘッドレスト一体型の形状となり、より高い身体のサポート性能を実現している。

ランサーエボリューションⅢの特徴と戦績

1995年には、4代目ランサーをベースとする第一世代最後のモデル「ランサーエボリューションⅢ」が登場した。

エボⅢでは、それまで以上に競技での戦闘力向上が強く意識され、エンジン、空力、冷却性能など幅広い部分に改良が加えられている。

最も分かりやすいのが外観の変化である。

フロントバンパーは中央だけでなく左右の開口部も大幅に拡大され、下部にはブレーキ冷却用のエアダクトを装備。リアには、後方から見ると逆台形となる大型スポイラーが採用され、水平翼部分の面積も大きく拡大された。

インタークーラーやラジエーターへより多くの走行風を導くため、フロントバンパー中央と左右の開口部を大幅に拡大。さらにバンパー下部を前方へ張り出させ、空力性能も追求している。エボⅡまでの比較的ほっそりした表情から、一気に迫力あるフロントマスクへ変貌した。

エボⅠ、Ⅱが比較的おとなしい印象だったのに対し、エボⅢでは一気に攻撃的なスタイリングへ変化したのである。

エンジンにもさらなる改良が施された。大径タービンの採用や圧縮比の見直しに加え、インタークーラーも大型化。最高出力はさらに10ps高められ、270psに達した。

また競技を強く意識した装備として、“アンチラグシステム”も盛り込まれている。

これはアクセルオフ時などに排気系へ二次空気を供給し、ターボチャージャーの回転低下を抑えることで、再加速時のターボラグを軽減するための仕組みである。

大型化されたリアウイングは、高速ステージでの安定性やジャンプ後の着地姿勢を考慮して設計され、強力なダウンフォースを生み出すことを狙ったものだ。

大径化したターボのレスポンスを補い、細かなアクセル操作を繰り返すラリーでの戦闘力を高めることが目的だった。

ただし一般公道では必要性が低く、市販状態では本来のアンチラグ機能が積極的に作動しない仕様とされていた。このあたりにも、WRC参戦車両を成立させるための市販モデルという、当時ならではの特殊な成り立ちが感じられる。

こうした徹底的なブラッシュアップの成果は、ついにWRCでも結果となって表れる。

エボⅢはWRCでランサーエボリューションとして初の総合優勝を達成。三菱のWRC黄金期へとつながる、大きな転換点となった。

それまでのシンプルな3本スポークタイプから、エボⅢではグリップ部を太くし、センターパッドのデザインも刷新したMOMO製本革巻きステアリングへ変更された。また、フロントシートには、エボⅡに続いてRECARO製のヘッドレスト一体型スポーツシートを採用。激しい走行時にも身体をしっかり支える高いホールド性を備えていた。

ストリートでも圧倒的な速さを発揮

ランサーエボリューションは、本来WRCで勝利することを目的に開発されたモデルである。

しかし、その高い戦闘力は競技の世界だけにとどまらなかった。市販車としても圧倒的なパフォーマンスを発揮し、登場と同時に国産スポーツカーのトップグループへ食い込む存在となった。

1996年、トミ・マキネンが駆るランサーエボリューションⅢはWRCで圧倒的な速さを見せ、ドライバーズタイトルを獲得。三菱にとって初となるWRCドライバーズチャンピオン誕生へとつながった。

250psを超える高出力エンジンを軽量なボディに搭載し、さらに4WDによる強力なトラクション性能を備える。

この組み合わせは、排気量で上回る2.0L超のターボスポーツにとっても無視できない存在だった。

絶対的な最高出力では大排気量車に譲る場合があったものの、ランサーエボリューションは圧倒的に軽い。

車両重量まで含めて考えれば、当時最強クラスの国産スポーツとして知られた「スカイラインGT-R(BNR32型)」に迫る、あるいは条件によっては上回るほどのパワーウエイトレシオを備えていた。

そのため、4WDのトラクションを活かした停止状態からの加速性能は当時トップクラス。

さらに小型・軽量な車体を武器に、コーナーが連続するワインディングロードでは上りでも下りでも高い速さを発揮した。

フロントには2ポットキャリパーと15インチ対応のベンチレーテッドディスクを採用し、制動力を高めていた。しかしホイールサイズによる制約もあり、エンジン性能に対してブレーキ性能に余裕が少なかったことは第一世代の弱点のひとつであった。

直線、コーナー、悪天候など、さまざまな状況で速さを発揮できるオールラウンダーであったことが、ランサーエボリューション最大の魅力だったと言える。

一方、第一世代の弱点として挙げられるのがブレーキ性能である。

15インチホイールを前提とした設計では装着できるブレーキサイズにも限界があり、エンジン性能やシャシー性能の向上に対して制動力には余裕が少なかった。

このブレーキ性能の課題はその後も続き、本格的な大型ブレーキが採用される第二世代以降で改善が進められていくことになる。

ランサーエボリューションの第一世代のスペック比較表。

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