38.5万円でこの走りと楽しさはズルいレベル。トヨタのレースカート「GR KART」に乗って確信!「最高のオモチャだ」│月刊自家用車WEB - 厳選クルマ情報

38.5万円でこの走りと楽しさはズルいレベル。トヨタのレースカート「GR KART」に乗って確信!「最高のオモチャだ」

38.5万円でこの走りと楽しさはズルいレベル。トヨタのレースカート「GR KART」に乗って確信!「最高のオモチャだ」
走行開始を待つピットエリア。前後に連なる車両を見ても、全幅1160mmというナロー設計のコンパクトさが際立つ。小回りの利く車体寸法は取り回しやすさだけでなく、軽快なフットワークを生み出す重要な要素となっている。

トヨタが9月に発売した入門用レーシングカート「GR KART(ジーアール・カート)」の体験試乗会が幸田サーキットで開催された。「GR KART」の走りや特徴、導入メリットをレポートする。

●文/写真:鈴木ケンイチ

モータースポーツ拡大とクルマ好きを増やすという、野心的なアプローチが宿る

トヨタは9月10日、入門用レーシングカート「GR KART」を発売した。自動車メーカーがカートを独自に開発・生産するのは異例のことだろう。

その開発の主目的は、モータースポーツ人口の裾野拡大とクルマ好きの開拓による業界活性化とされている。

このGR KARTの一番の売りは、車両価格の引き下げがされたことだ。車体とエンジンを一括パッケージ化し、38万5000円(税込)という従来のレーシングカートの約半額に設定されている。

このあたりの判断は、レースで勝利する性能ではなく、趣味として楽しむ割り切りへと舵を切り、量産車の生産ノウハウを転用して徹底した低コスト化を図った結果という。

GRらしい白・赤・黒のレーシーなカラーリングと、車体全体を大きく覆うカウル類が目を引く。フロントからサイドにかけて配置された大型カウルは「GR KART」の大きな特徴になる。生産は今年6月に開設された「蒲郡GR KART工房」が担当する。

右側に配置される駆動系は、チェーンではなくベルトドライブを採用。注油の飛び散りやテンション調整の手間を大幅に低減している。購入後の維持や手入れのハードルを下げる工夫が外観からも確認できる。

ちょっとナローで大きなカウルで囲われている、独自パッケージを採用

では、実車はどんな構造なのか。

幸田サーキットで実車を確認すると、第一印象は数値以上に小ぶりに見える。

寸法は全長1820×全幅1160×全高670mmで、一般的なカートと比べ全長は同程度だが車幅が約20cm狭い。この細身の設計によって、タイヤを外さずにノア/ヴォクシーなどの一般的なミニバンの車内へ積み込める点は実用的だ。

ポジション調整もよく練られている。ペダル類のスライド機構とステアリングのチルト機構を備えることで、身長135cmから185cmまで手作業ですぐに体格へ合わせられる。ボルトを外してシート位置を組み替える一般的なカートのような手間がなく、複数人での交代も手早く済む。

さらに左側には最大15kg積めるバラスト用ボックスが設けられ、体重差を相殺して対等に走れるよう設計されていることも、しっかりと考えられている点には関心させられた。

大型カウルの採用も実利的なアプローチに思える。走行中に腕を動かしても高温のエンジンやマフラーに接触せず、他車とぶつかった際にも相手の後輪が乗り上げて車体が横転するのを防ぐ形状になっている。

カートには珍しいバックミラーの装備も特徴のひとつで、これは「一般車にあってカートにないのは不自然。若年層のうちから後方視界を確認する癖をつけてほしい」というのが開発側の意図から採用されたそうだ。

計器類にはスマートフォンも活用。専用ロガーを省いてアプリで情報を補う設計で、固定具には市販の二輪用ホルダーが流用できる。ソフトはAndroid向けから順次提供される見込みだ。

幸田サーキットの本コースで「GR KART」を走らせる筆者。ナローな車体ならではの素早いノーズの入りと、ダイレクトな操舵感を堪能することができた。コンパクトながら大人が乗り込んでも窮屈さはなく、自然なドライビングポジションが取れることも印象に残っている。

「GR KART」の計器盤として機能するスマートフォン画面。車速やエンジン回転数、ラップタイムなどがリアルタイムに表示される。高額な専用ロガーを省き、誰もが持つスマホを活用することで大幅なコストダウンを実現。

シート左サイドに設けられたウエイト積載用ボックス。専用の重りを差し込むことで最大15kgまで重量を調整できる。体格差のある大人と子ども、あるいは体重の異なるドライバー同士でも、手軽にイコールコンディションを作り出せる。

レスポンスの良いエンジンとコントロールしやすいブレーキ

搭載エンジンは空冷4ストローク215cc単気筒の専用品「GR200S」だ。最高出力は5.1kW(7PS)で、始動は自己充電式バッテリー付きのセル/リコイル併用となる。

シート横のスイッチを回すだけで容易に始動し、遠心クラッチのため停止状態でもエンジンが止まらずアイドリングを保ってくれる。排気音は乾いた音質で、音量も適度なレベルに収まっている。アクセルへの応答性も良好で、一般的なレンタルカートよりも明らかに吹け上がりが軽く、テンポよく加速していくことも印象に残る。

試乗したショートコースでは、最高速度は約75km/h、アプリ表示のエンジン回転数は上限の5500rpm付近を示していた。ブレーキタッチはやや独特。ペダルのストロークが短く、踏み込む深さではなく踏力で制動力を微調整する味付けになっている。慣れるまでに少し時間を要するものの、特性さえ掴めば狙い通りの減速姿勢を安定して作り出せるだろう。

クイックだけれど、コントローラブルなハンドリング

ハンドル操作に対する反応は実にシャープだ。車幅が狭くコンパクトなため、一般的なカートよりも車体が小気味よく向きを変える。そのぶん後輪は滑り出しやすいが、唐突にスピンするような怖さはなく、滑り出しの手応えが掴みやすい。

アクセルを踏めば即座にパワーが立ち上がり、ブレーキも微調整が利くため、お尻が滑っても落ち着いてハンドルで立て直せる。テールを滑らせながら走るのも、タイヤを滑らせずに小さく回るのも思いのままで、短時間の試乗でも運転本来の楽しさをしっかり味わえた。

なお開発陣によると、速さの基準は「レンタルカートよりは速いが、本格的な競技用カート(ヤマハKTなど)ほど過激ではない」という扱いやすい領域を狙ったという。

購入後の手間と費用を抑える工夫が満載

走行性能だけでなく、購入後の維持管理に関する合理的な設計も見どころだ。 特にランニングコストの低さは際立っていて、タイヤは前3500円/後4500円、ホイールも前8000円/後9000円に抑えられ、レンタル並みの耐摩耗性を持つという。

また駆動方式にはベルトドライブを採用し、チェーンオイルの飛び散りやテンション調整の手間を解消していることも、実際にカートを楽しむユーザーにとっては嬉しいポイント。

パーツ規格を1種類に限定したのも合理的な判断で、セッティング箇所を削ぎ落とすことで公平性を保ち、高額部品の投入競争を防ぐ意図がある。「高価な部品を使えば速くなる」という底なし沼のような出費を抑えることができることは、モータースポーツを楽しみたい向きにとっては朗報だろう。なお消耗品は専用サイトから通販で購入可能だ。

燃料タンクとダイヤフラム式キャブの構造により、ガソリンを抜かずにそのまま立てて保管できる点も、保管場所やトランスポーターの制約を受ける一般ユーザーには利便性が高いと思う。

安く、楽しく、簡単に楽しめるモータースポーツ

GR KARTは、低価格でありながら、走る面白さがきっちり詰まったマシンだ。そのうえ、これまでのカートにつきものだった維持の手間や置き場所の悩みまで、実に現実的なアイデアで解消することで、モータースポーツをもっと気楽に遊べるものへと引き下げてくれる存在になれると感じる。

正直、本格的なレースに挑戦したい子供に独占させるのは、もったいない内容だ。ステップアップを目指さないジェントルマンレーサーのマシンにもぴったりだろう。専用レースに挑戦するもよし、地域の草レースで競うもよし、仲間と共同で買ってシェアしながら遊ぶのも面白い。手軽に走りの世界へ飛び込んでみたいなら、世代を問わず注目しておきたい1台だと思う。

GR KARTは、「安く、楽しく、簡単」というコンセプト通り、サーキットを身近な遊び場へと変えてくれるポテンシャルを持つ。1台を仲間同士でシェアしてワイワイ楽しむのも、ワンメイクレースで腕を競い合うのもいい。趣味としてサーキット走行を楽しみたい大人にとっても、これほど手軽で心躍る新たな相棒は他にないだろう。

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